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野原苺香の日常  作者: 一条ひかり


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ショートケーキ

「異世界のむつ市(最北端)へようこそ!」 68話のサイドストーリーになります。

苺香は久々に実家へと帰省していた。


実家に帰ると、幼い頃の記憶がふと蘇る。当時、母親がよくおやつに手作りしてくれたショートケーキの味だ。


懐かしさに背中を押され、苺香はひさしぶりに自分でショートケーキを作ってみることにした。


実家はイチゴ農家だ。


幼少期から出荷前の熟したイチゴや傷物のイチゴを惜しげもなく与えられて育った苺香は、文字通り「人の一生分」のイチゴをすでに食べ尽くしている。


そのため、そのまま食べるだけでは飽きてしまうイチゴをどう美味しく変化させるか


――そのための「味変用レシピ」は、すでに苺香の頭の中に完全に叩き込まれていた。


酸味と甘みのバランスを見極め、自家製のイチゴソースや独自の隠し味を加えた特製生クリームを素早く泡立てていく。


手慣れた手つきでスポンジを切り、甘酸っぱいイチゴを贅沢に挟み込んで仕上げた。


その日の夕食後。


家族全員で、苺香の手作りショートケーキを囲んだ。


「やっぱり苺香が作るとひと味違うねえ」


「なに言ってるの、お母さんのレシピがベースなんだからね」


そんな他愛もない会話を交わしながら、家族みんなでケーキを味わう。


口いっぱいに広がる甘酸っぱいイチゴと優しい生クリームの風味に、誰もが自然と笑顔になった。


特別な事件は何もないけれど、心とお腹が優しく満たされる時間。


苺香は甘い余韻とともに、温かな帰省のひとときをゆったりと楽しんだのだった。

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