第二十九話 ルイ冤罪の真実
王城の大広間には、王族、諸侯、騎士団、官僚、そしてフォンデラ侯爵家ゆかりの者たちが集められていた。
法衣まとった法政大臣が長々と罪を述べている。
「………よって、判決は次の通り。すでに執行済みである。
その一、国家反逆の首謀、パレーラ公,および嫡子バルガックは王族位剥奪の上、北塔に幽閉。
その二、謀叛実行役ボデッチェ伯爵は伯爵位剥奪の上、北の収容施設で強制労働についた。オデット・ボデッチェは謀叛加担ゆえ、西の修道院へすでに護送。
その三、謀叛に加担した貴族、血判状が見つかったことより、全て爵位剥奪の上、国外追放とした。
また関与していた者の中で酌量の余地のある者は……」
やっと終わった。全ても罪が暴かれた。
法政大臣が周りを見渡す。
そしてここからはお兄様の名誉を取り戻すための時間だった。
国王陛下がゆっくりと立ち上がる。
「本日、この場を設けた理由はもう一つで」
静まり返った広間に、陛下の声が響く。
「フォンデラ侯爵家嫡男、ルイ・フォンデラに対する判決を見直すためだ」
私は胸の前で手を握った。
お兄様の名が、公の場で再び呼ばれた。
陛下は続ける。
「新たな証拠、関係者の証言、そして王家直属監察官の記録。すべてを照合した結果――」
一度、言葉を切る。
「ルイ・フォンデラは、無実である」
その瞬間、広間は静まり返った。
誰一人、声を上げない。
ただ、その言葉だけが、人々の胸に深く落ちていく。
「さらに」
陛下は玉座を降りた。
「ルイ・フォンデラは、王家と王国、そしてフォンデラ侯爵家を守るため、自ら犠牲となった」
王太子殿下が静かに前へ出る。
「私も証言いたします。ルイは最後まで、自分の潔白を訴えず、黒幕が残っていることを知っていたからです」
「自分一人が罪を受け入れれば、家族と王家に手が及ぶことを防げる。ルイはそう考えました」
私は目を閉じた。
お兄様らしい。
誰よりも不器用で、誰よりも優しかった。
お父様が前へ進み出る。
その手には、お兄様の手紙があった。
「陛下。息子からの手紙を、一部だけ読ませていただけますか」
陛下は静かにうなずいた。
お父様は手紙を開いた。
『父上。
私は後悔しておりません。
ですが、一つだけ心残りがあります。
ソフィーには笑って生きてほしい。
復讐ではなく、未来を選んでほしい。
それだけが兄としての願いです』
読み終えたお父様は、静かに手紙を閉じた。
陛下は深くうなずく。
「ルイ・フォンデラ、その忠誠は、王国の歴史に残るものである」
近衛騎士が、白い布に包まれた小箱を運んできた。
陛下はその中から勲章を取り出す。
王国最高位の栄誉章だった。
「本来なら、生前に授けるべきであった。それができなかったことを、国王として詫びる」
陛下はゆっくりとお父様へ勲章を手渡した。
「遺族に受け取ってもらいたい」
お父様は膝をついた。
「ありがたき幸せにございます」
私の頬を、一筋の涙が伝った。
お兄様は帰ってこない。
それでもお兄様の生き方だけは、誰にも奪われなかった。
式典が終わり、人々が静かに退席していく。
殿下が私の隣へ歩み寄った。
「終わったな」
私は小さく首を振った。
「まだです」
「え?」
「お兄様のお墓へ行きたいんです」
殿下は静かにうなずいた「私も行こう」
王城の窓から差し込む午後の光は、これまでより少しだけ柔らかく見えた。
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