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第二十八話 パレーラ大公失脚

王城、大謁見の間。


重厚な扉が開かれると、諸侯や大臣たちの視線が一斉に玉座へ向けられた。

中央には国王シャルル陛下。

その右にはジュール王太子殿下。


そして左には、堂々とした姿で立つパレーラ大公がいた。


「兄上」


陛下が静かに口を開く。


「王族会議を招集した理由を聞こう」


パレーラ大公は一歩前へ出た。

「簡単なことだ、王は弱くなった。王太子は経験が浅い。この国を正しく導けるのは、私しかおらぬ」


ざわめきが広がる。

堂々と王位を求める発言だった。


殿下が口を開く

「叔父上、それだけですか」


「それだけとは?」


「王位を望む理由です」


パレーラ大公は笑った。


「民は強い王を望む。私はそれに応えるだけだ」


殿下は陛下へ一礼すると、ゆっくり前へ進み出た。

「では私から、叔父上に一つお尋ねします」


「何なりと、若い其方に指導してやろう」


「フォンデラ侯爵家嫡男、ルイ・フォンデラを陥れた件について」


大公の笑みが、ほんのわずかに消えた。

「何の話だ。存じぜぬ」


「ほう、ご存知ないと」


殿下が近衛騎士へ目配せする。

扉が開き、お父様が入ってきた。


その手には、お兄様が残した書類が抱えられている。

続いてクラウス警備隊長が姿を現した。

会場がどよめく。


クラウスは玉座へ膝をついた。

「陛下。私は、すべてを申し上げます」


そして一つ一つ、事件の経緯を語り始めた。

ボデッチェ伯爵からの命令。

灰色の司祭。

偽造された証拠。

お兄様への罪のすり替え。そして、自らがその実行役となったこと。


話し終えると、殿下がお兄様の残した資料を示した。


「これは資金の流れ。そしてこちらは、ルイが残した人の動きの記録です」


私は革袋を手に、前へ出た。

「陛下」


中から羊皮紙を取り出し、差し出す。

「お兄様が命を懸けて守った証人から預かったものです」


陛下は目を通し、静かに目を閉じた。

「……間違いないこの署名は兄上のものだ」


パレーラ大公が初めて声を荒らげた。

「偽物だ!そんなもの、いくらでも作れる!」


殿下は静かに答えた。

「だからこそ、証人にも来ていただきました」


再び扉が開く。


白髪の老人、エミールが入ってきた。

その胸には、銀の百合の紋章がある。


謁見の間の空気が変わった。

エミールは玉座の前で膝をつく。


「王家直属監察官、エミール。陛下の御前にて証言いたします」


そして、あの日の北港で見たものを語った。

灰色の司祭。

ボデッチェ伯爵。

そして、パレーラ大公。

「私はこの目で、パレーラ大公が彼らと会うところを確認いたしました。さらに、大公がルイ・フォンデラ殿を排除し、王太子殿下のお命脅かし、王家とフォンデラ侯爵家を弱体化させるよう命じる言葉も聞いております」


静寂が落ちた。

パレーラ大公は周囲を見回した。

誰も言葉を発しない。

陛下が静かに立ち上がった。


「兄上」


「……まだ申し開きはあるか」


大公はゆっくり顔を上げた。

その目には、もはや余裕はなかった。


「私は……私が王になてば国はもっと良くなる,兄である私が先に生まれたのだ、権利は私が先だ!」


陛下は大公を見据えた。

「兄上、この国の王位は生まれた順ではありませんぞ」


「私の王位だ、私は王になるために生まれてきたものを、どいつもこいつも弟と比べては劣っていると,そんなはずはない!」



「近衛騎士、パレーラ大公を取り押さえよ。これより、王族としてのすべての権限を停止し、国家反逆の嫌疑により身柄を拘束し、正式な審理を命じる」


近衛騎士たちが静かに歩み寄る。

大公は抵抗しなかった。

連行される直前、彼は私へ目を向けた。


「……復讐は終わったか」


「いいえ、これからですわ」


パレーラ大公は何も言わず、そのまま謁見の間を去っていった。

重い扉が閉まる音が響く。


殿下は陛下へ向き直った。

「陛下、まだ終わっておりません。ルイ・フォンデラの名誉を、正式に取り戻さなければなりません」


私は、お兄様が残した革袋を胸に抱いた。


ようやく。

ようやく、お兄様の無実を王国に示すことができる。

お読みいただきありがとうございます。

もうすぐ完結です。よろしくお願いします。

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