エピローグージェーン
散々、悩んだのですが、後日談をエピローグとして追加で投稿します。
第2部の主人公視点になります。
今日は、養女のオリヴィアの結婚式だった。
養母の私も当然出席することになる。
あれから、10年近くが経つのか、私は思わず物思いに耽った。
それにしても、養女とはいえ、場合によっては20代半ばで、私がお祖母ちゃんと呼ばれる可能性があるとは思わなかった。
やっぱり、夫の実の娘とはいえ、養女と10歳も年が違わないというのは問題ね。
この点については、フローレンス姉様が、私の夫、エドマンド皇帝陛下と結婚していた方がマシだったのかも。
でも、フローレンス姉様が、大人しく家庭の母になれるのか?
無理ね、私は自分の問いかけに自分で即答した。
うん、あんなバリバリ仕事優先の姉様が、大人しい良き家庭の母になれるわけがない。
フローレンス姉様については、次期の教皇猊下との呼び声が高く、既に枢機卿の地位についている。
教理問答等についても優秀な学識を持っているが、フローレンス姉様の才能は、むしろ教会と帝国政府との関係構築や教会経営にある。
経営難に陥っている幾つかの修道会の再編を行い、それぞれの修道会の財政基盤を確立した上で、免税特権を持っていた各修道会が保有している荘園に対して、教会は、帝国政府が課税するのを認めた。
もちろん、軽減税率は予め確保している。
幾ら何でも、そのまま帝国政府が、各修道会の保有する荘園に対して課税するという態度に出ていては、各修道会の不満が噴出していたろう。
軽減税率の代わりに、福祉事業に各修道会が努めることを誓約させ、その内容を教皇庁が取りまとめて、帝国政府に報告することにした。
現地の州知事と修道会の保有する荘園のなれ合いを防ぐためだ。
この教会と帝国政府との折衝に際して、主に教会側の窓口になったのが、フローレンス姉様だ。
こんなことをしているから、フローレンス姉様は、ますます忙しい日々を送ることになる。
オリヴィアは、フローレンス姉様にとっても大事な人なので、自分が結婚式を執り行うとフローレンス姉様は主張し、実際にその通りになったのだが。
この間、自分が結婚式の打ち合わせに、フローレンス姉様に久しぶりに逢ったら、いろいろと忙しくて、ここ1月、1日に5時間ほどしか眠れないと、フローレンス姉様は自分にぼやいていた。
疲労困憊しているせいか、ぼーっとしているみたいで、私の前世に比べればマシ、前世だと1月の間、1日に4時間眠れたら、贅沢と言う日々もあったのだから、と半ば独り言まで言われていた。
私には意味が分からなかった。
うん、こんなに仕事に打ち込んでしまう女性、絶対に結婚生活は無理だ。
私は、あらためて断言したくなった。
そんなことを想っている内に、オリヴィアの結婚式の時間が来た。
オリヴィアの結婚相手は、というと。
「幼馴染みの恋を実らせての結婚は、庶民にはよくあるが、皇女では中々ないな」
夫のエドマンドは、自分の事を棚に上げて、娘婿になる義子のコナンに声を掛けていた。
「オリヴィアを必ず幸せにします」
コナンは、芝居がかった堅い口調で、私とエドマンドに頭を思わず下げた。
バーフ大公家当主に正式に相続したコナンは、私達の女婿にふさわしい存在だ。
サムエルも一時、オリヴィアに求婚していたが、エドマンドが真実を明かしたことから、身を引いて、義兄になるコナンの恋の応援者になっていた。
それに、サムエルは、他の大貴族と姻戚関係を結ばないと、他の大貴族との関係が微妙になってしまう。
バーフ大公家は皇室に近い、と不満を持つ大貴族は、今や少なくない。
後、10年ほどしない内に、コナンは大宰相になり、フローレンス姉様は教皇になるだろう。
うん、フローレンス姉様は、皇后になるよりも、教皇になり、エドマンド皇帝陛下と共に、国の為の仕事を頑張る方が幸せになれるタイプだ。
そして、コナンはそれを支えてくれるだろう。
女性にとって、結婚して家庭に入るだけが幸せではない。
好きな人と結婚して、夫と共に社会で頑張るという幸せを掴める社会もあっていいではないか。
私達の社会では、それが無理だから、フローレンス姉様は教会に入り、教皇への道を歩むことにしたのではないだろうか。
私は、フローレンス姉様が、オリヴィアの結婚式を執り行ってくれるのを眺めながら、そんなことを考えてしまった。




