第2部ー20
オリヴィアが無事に私の手許に来て、義理の母子2人の新生活が始まった。
私とオリヴィアが住む場所として、私が最終的に決めたのは、私が産まれた邸宅だ。
私の実父、ネヴィル父様が、ヘレナ母様と結婚した際に、時の皇帝だった実父(私から言えば祖父)からお前達がずっと幸せに暮らすようにと勅語を賜った上で、下賜されたという由来のある邸宅だ。
フローレンス姉様が本来なら相続すべき邸宅なのだが、成人前にフローレンス姉様が修道尼になられたために、皇室と教会が話し合い、私が相続することになって、更に私が成人前なので、ドミニク義父様が事実上の管理に当たられていたという邸宅になる。
ヘレナ母様がドミニク義父様の第一夫人になって、ドミニク義父様の私邸にヘレナ母様と共に私やフローレンス姉さまが引っ越してからは、ずっと空き家になっていた。
私とエドマンド様は、この邸宅に目を付けて、ドミニク義父様と話し合い、私とオリヴィアが一緒に住むことにした。
ただ、ずっと空き家だったので、所々痛んでおり、取りあえず応急処置を施して住めるところに住むという状況になったのだが、実際には多くの侍女等、使用人もいるとはいえ、母子2人の邸宅としてはそれでも必要以上の広さだった。
これまで山間の小さな家に住んでいたオリヴィアにしてみれば、目を見張るような大邸宅だったらしく、数日の間、探検ごっこに年相応にオリヴィアは勤しんでしまった。
使用人も両手では済まない人数で、これまで事実上3人暮らしだったオリヴィアにしてみれば、その点でも驚きの日々だったらしく、私に対して、
「こんなところに、皇帝の血を承けたエドマンド父様の実の娘とはいえ、私が住んでもいいの?」
と何度も尋ねて来られた。
私は
「本当にいいのよ」
と繰り返し教えながら思った。
本当に、普通と逆ね。
結婚前に6歳の義理の娘と同居する羽目になるなんて。
そして、エドマンド様は、私達母子の邸宅に来て、夜、泊まるようにもなり、当然、私とエドマンド様はそれなりの関係も結んだのだが。
このことは、当然、周囲に大波紋を呼んだ。
このことが、アーサー皇帝陛下の耳に入るや否や、従弟のエドマンド様をアーサー皇帝陛下は直々にすぐに呼び出して、御前で半ば詰問した。
以下、私はその場に居なかったので、エドマンド様やドミニク義父様からの又聞きになる。
「エドマンド、ジェーンに対して、私が皇后として迎えたいと公言しているのは知っておろう」
「存じております」
エドマンド様は、アーサー皇帝陛下の問いかけに平然と答えた。
「そのジェーンが、お前が愛人に産ませた娘を引き取り、事実上、母子2人で暮らしているような状況になり、そこに夜、お前が泊まるとは何事だ」
アーサー皇帝陛下は、激怒の余り、皇帝らしからぬ口調で、エドマンド様を問いただしたらしい。
「ジェーンは、私の娘からすれば義理の叔母です。叔母が姪を引き取るというのは、おかしくないと思いますが。それに娘の下に父が泊まるのに、何の支障があるのでしょうか」
エドマンド様は平然とそう答えた。
「だからといって、人が怪しむような行動は厳に慎むべきであろう」
アーサー皇帝陛下の御怒りは更に激しくなったが、エドマンド様は平然と流して言った。
「家の主でもあるジェーンが構わないと言っていますし、私もずっと離れて暮らしていた娘の側に、父として添い寝をしてやりたいのです。皇帝陛下は父子の仲を裂かれたいのでしょうか。人倫の道に反しておられませんか」
小気味のいい程の正論だ。
父と娘が一つ屋根の下で夜を過ごしたいというのを裂く権利等、皇帝と言えどもあるわけがない。
アーサー皇帝陛下は、沈黙せざるを得なかった。




