第2部ー19
オリヴィア1人を引き取るだけだから、と私は実際にオリヴィアに逢うまでは簡単に考えていたが、そう簡単な話では無かった。
仮にもエドマンド様の実の娘にして、表向きは唯一の実子なのだ。
何故なら、サムエル殿下が、エドマンド様の実子なのを知っていて、まともに生きている人物は、私を含めても片手で収まるからだ。
エドマンド様、フローレンス姉様、ドミニク義父様、アーサー皇帝陛下、それに私だけだ。
ヘレナ母様やタバサ大公妃殿下は、薄々察しておられるらしいが、直接は知らないはずだ。
ちなみにサムエル殿下の実母イザベラ様は、長い修道院での幽閉生活の為に、精神を病まれたらしい。
今では、介護者無しでは生活できないお気の毒な身の上だとか。
私でさえ、直接、逢えないので、フローレンス姉様からの又聞きなのだが、幻覚に取りつかれていて、現実と夢の狭間の世界に生きているような状態らしい。
当然、サムエルを私の実子だとイザベラ様が、自分の介護に当たっている周囲の修道尼に話しても、誰も真実だとは想ってくれない。
精神を病まれて、本当にお気の毒に、と周囲の修道尼からの同情をイザベラ様は買っているとのことだ。
話を戻すと、オリヴィアには、当然、上流貴族の一員として、皇族の血を承けた者として、それなりの身の回りを世話をする侍女達が必要になってくる。
エドマンド様は、急きょ、いろいろと手配りをして侍女達を集めた。
また、オリヴィアをずっと育ててきたローラの侍女カミラは、引き続きオリヴィアの侍女頭的な立場に横滑りして、オリヴィアに仕えることになった。
これまでのローラとオリヴィアへのカミラの忠誠を考えれば、当然の処遇だろうと私も思う。
それから、オリヴィアを育ててきた騎士のアールは、老齢なことや所属する騎士団とバーフ大公家のしがらみから、オリヴィアの近くに引き続き仕えることはしないことになった。
そして、秘かにこれまでの功労に報いるために、アールに対しては、フローレンス姉様を介して、大金が贈られたらしい。
本人曰く、
「今更、帝都に住もうと思いませんし、郷里を離れて長くなり、郷里に戻るのもどうか、と思います」
とのことで、オリヴィアを育ててきた家の近くの田畑を買収し、悠々自適の晴耕雨読の生活をこれからは送るとのことだった。
私は私で、ドミニク義父様やヘレナ母様と話をして、オリヴィアやそれに仕える者達の住まい等の確保に奔走した。
ドミニク義父様は、この話を聞いた時、何とも微妙な顔をした。
オリヴィアは、公言できる自分の初孫ではある。
だが、アーサー皇帝陛下に子どもが出来ず、更にアーサー皇帝陛下がやつれつつある中で、自分の息子が愛人との間の娘オリヴィアを引き取ることにし、更にアーサー皇帝陛下の皇后候補者になっている義理の娘が、その母代として名乗りを上げて面倒を見るというのである。
アーサー皇帝陛下の機嫌を損ねるのが目に見えている。
とはいえ、自分の立場上、オリヴィアの面倒を全く見ないという選択肢はない。
内心ではかなり渋い顔をしていたらしいが、それなりには協力してドミニク義父様は、このことについて手配りをしてくれた。
ちなみに、タバサ大公妃殿下に対して、エドマンド様は、オリヴィアを自分の手許に引き取ることを事前に話はしたのだが。
私達の予想通り、タバサ大公妃殿下は、オリヴィアに対し無関心という冷たい態度だったらしい。
こういった時こそ、ご夫婦としてタバサ大公妃殿下は、エドマンド様に協力すべきで、それによって御夫婦仲を直そうと努めるべきだと、私は思うのだけど。
一度、卵が割れたらダメになるように、夫婦関係が壊れたら、元に戻ることはできないのだろう。
イザベラが精神を病んだのは、誰かが闇で動いたためですが、誰が動いたかは秘密で、小説内で明かす予定はありません。




