幕間ーフローレンス3
幕間として、フローレンス視点の話を投稿します。
フローレンスの今の想いと、ローラの兄マルコムが帝都に出頭した
裏事情が明かされます。
私は、エドマンド義兄様とジェーンが、マルコムさんと一緒に出立するのを見送りつつ、内心でほっとしていた。
とりあえず、オリヴィアはジェーンが手許に引き取ることになりそうだ。
これは事実上、ジェーンがエドマンド義兄様の妻として名乗りを上げるようなものだ。
ある意味、醜聞と取られても仕方がない。
だが、一応は誤解である、と弁明の余地がある。
何故なら、ジェーンはエドマンド義兄様の義妹でもあるからだ。
義理の叔母として、オリヴィアを引き取っただけだという言い訳が立つ。
母代になるわけだから、母と呼ばせている、とも弁明できる。
とはいえ、アーサー皇帝陛下にとってはおもしろくない事態だろう。
将来の皇后候補者が、義理の姪とはいえ、他人の娘の母代になったのだ。
その他人の妻となるのでは、と(真実なのだけど)邪推されることは間違いない。
そんなことを私が想っていると、先輩の修道尼が声を掛けてきた。
「本当にいいのですか。ジェーン殿下を、エドマンド殿下の第二夫人にして。このまま行くと本当に身分違いの結婚になりますが」
「そんなに心配しなくても大丈夫」
私はそれとなく周囲に目を配り、誰も傍にいないことを念のために確認した上で、先輩にささやいた。
「アーサー皇帝陛下に皇子はできない筈。そして、そう先は長くない」
先輩は息を呑んだ。
私が、近々アーサー皇帝陛下が崩御し、エドマンド殿下が皇帝に即位すると暗に言ったからだ。
これは、私の前世の漫画の記憶から言っても間違いないのだが、そんなことは先輩に言えない。
だから、この世界でもある程度知られている情報から、私が推測したように話していくしかない。
「そもそも、アーサー皇帝陛下に子どもがおできになるのなら、もう1人か2人、どなたかが少なくとも妊娠されるはずよ。でも、そんな噂すら流れてこない」
私は更にささやいた。
「そして、アーサー皇帝陛下は、女色が過ぎて、やつれているらしいわ。自業自得だけど。おそらく、後、数年の命ではないかしら」
私は冷たく笑いながら言った。
前世の漫画の中とはいえ、私を皇后としながら冷遇したあの男め、この世界でも同じようなことをやらかすとは。
性格があそこまで、漫画の通りとは思わなかった。
本当に私は修道尼になって、まだ正解だった。
そして、あの男は、この世界の私の可愛い妹まで、毒牙に掛けようとは。
私の元婚約者で、私は向こうから婚約破棄された身の上だが、絶対にあの男を私は赦すものか。
修道尼として想ってはならないことかもしれないが、私は冷酷にあの男を心の中で突き放した。
私の背中から立ち上る冷気までも感じたのだろう。
先輩は、背中を震わせながら言った。
「フローレンス、あなた、まさか」
幾ら周囲に誰もいないとはいえ、庶民出身の先輩としては、想像を絶する話を聞かされ、先輩は半ば恐慌状態になり、うまく話せなくなっていた。
私は表向きは暖かみのある笑みに切り替えながら言った。
「先輩、これ以上は、私の口からは言えませんわ。それよりも、マルコムさんの所属する修道会への融資を早くしてあげないと」
「そうね。そのとおりね」
先輩も、これ以上、この話を続けることには、身の危険を覚えたのだろう。
私に合わせて、マルコムさんの所属する修道会への融資に話を切り替えた。
私は、マルコムさんの所属する修道会の経営状態を考えた。
私達の所属する修道会からの緊急融資で経営を持ち直せればいいけど、あの経営陣ではどうにもならないでしょうね。
どなたかを名目上の修道会の長に立てて、私達の修道会が事実上買収するしかないかも。
私は経営者としての視点から、マルコムさんの所属する修道会に冷たい判断を下すしかなかった。
マルコムが所属する修道会の財政的窮状を活用して、
フローレンスは、マルコムを帝都に出頭させています。
聖職者としては、財政等、度外視しろ、と言われそうですが、
組織として存続するためには、きちんとした財政が必要不可欠なのです。




