第2部ー17
「それで、オリヴィアを、この後、どうなされるおつもりでしょうか。あの娘の伯父として、心配なのですが」
マルコムさんは、本当に心配なのだろう、言葉少なに私達に問いかけた。
「オリヴィアを私の娘として認知し、手許に引き取りたいと考えていますが」
エドマンド様がそこまで言ったところで、私はその言葉を遮って言った。
「エドマンド様、オリヴィアは私の手許に引き取ります」
「それは」
エドマンド様が困った顔になって、口ごもってしまった。
男性が他の女性に産ませた子どもを、別の女性が引き取る。
それは、その女性が男性の妻の場合に、基本的に限られる話だ。
つまり、エドマンド様の娘オリヴィアを、私が引き取るというのは、エドマンド様が私を事実上の妻と認めたと言われても仕方ない。
しかし、だからといって、オリヴィアを今のエドマンド様の妻、タバサ様が引き取るというのは、この場に居る皆が考えても、余りにもよくない事なのは自明の事柄だった。
ただでさえ、冷え切った夫婦関係を更に冷やす事態なのが分かりきっている。
オリヴィアが育っていくのに、余りにもよくない環境になってしまう。
かといって、このまま、オリヴィアを帝都の近くの山間に住ませておくというのは、余りにも相当では無かった。
アーサー皇帝陛下が女色に耽られた結果、体調を崩しがちになっているということを、私はフローレンス姉様等から教えられた。
ということは、アーサー皇帝陛下に言うべからざること、崩御されるような事態が起きた暁には、エドマンド様が急きょ、皇族に復帰し、皇帝に即位することになる。
そうなると、オリヴィアはれっきとした皇帝の長女と言うことになる。
エドマンド様が、オリヴィアの存在を知ってしまった以上、きちんとした処遇を当然、エドマンド様は父としてしなければならない立場にあるのだ。
それなのに、オリヴィアを、エドマンド様はそのままにしておいて、オリヴィアは、皇帝の長女にもかかわらず、帝都にも住めないというのは余りにも不憫すぎる話になる。
全くドミニク義父様やヘレナ母様がしっかりしていれば、私達も二人に相談するのだが、二人ともこういうことについて、当てにならないと子ども3人の意見は一致している。
フローレンス姉様曰く、
「私達が自分でしでかしたことだから仕方ないけど、21歳と18歳、15歳の3人組で、6歳の女の子の面倒を見る会話をするしかないわね」
エドマンド様曰く、
「自分の娘の事だから、きちんと責任は取る」
うん、どう考えてもフローレンス姉様とエドマンド様の方を頼みにすべきだ。
そう、私も判断していた。
フローレンス姉様が、口を挟んだ。
「エドマンド義兄様、ジェーンがオリヴィアを引き取ることに何か問題があるのですか」
「ジェーンがオリヴィアを手許で引き取って育てるということは、ジェーンが事実上、私の妻になるということだ。私にはタバサがいる以上」
エドマンド様は、そこで言葉を切ったが、何を言いたいのか、私には分かった。
「私は、エドマンド様の第二夫人でもよい、と考えております」
私は頭を下げながら言った。
エドマンド様はしばらく沈黙した後で言った。
「しかし、皇族が貴族の第二夫人として降嫁するというのは前例がない。アーサー皇帝陛下が、君の降嫁を認めてくれるかどうか」
フローレンス姉様が言葉をつないだ。
「既成事実を積み重ねて、反対できない状況に追い込んでもよいのでは。ジェーンがオリヴィアを引き取りたいと言っているのです。オリヴィアのためにも、ジェーンが引き取るべきでは」
その言葉に、エドマンド様は背中を最終的に押されてしまった。
「分かった。そうしよう」
エドマンド様は肯いて言った。




