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第2部ー15

 それにしても、アーサー皇帝陛下から私への求婚だが、ドミニク義父さまからその話を聞かされてから、連日のように、私を皇后として冊立するので、入内するようにという手紙が、人を介してアーサー皇帝陛下から届くようになった。

 全くしつこい男は逆に嫌われるというのが、アーサー皇帝陛下は分かっていないのではないだろうか。

 私は却って、アーサー皇帝陛下への好感が下がっていくようになった。


 だが、この状況は、本当によくない。

 私が、エドマンド様と結婚したいので、降嫁の許可を、とアーサー皇帝陛下に訴えることは、アーサー皇帝陛下の逆鱗に触れてしまい、絶対に降嫁の許可をアーサー皇帝陛下に貰えないという事態が起きる可能性さえある。

 降嫁の許可を、アーサー皇帝陛下にもらえないままでは、私はエドマンド様と結婚できない。

 私は溜め息が出る想いがして、しょうがなかった。


 そして、ドミニク義父さまとヘレナ母様は、私に対して、速やかにアーサー皇帝陛下からの求婚をお受けして、皇后として入内するように勧めたのだが。

 最初にドミニク義父さまからこの入内の話を私が聞かされてから、1週間から10日程経つ内に、帝国の皇族や上級貴族で構成される上流社会内の空気が、少しずつ変わって行った。

 この辺り、私は基本的に邸宅内に引き籠っているので、ドミニク義父さまからの口ぶりからの憶測が入ってしまうのだが、アーサー皇帝陛下は、かなり強引に私の入内話を、ドミニク義父さまに対して、そもそも持ち込んでいたらしい。


 私が若すぎることを理由に、入内することについて気が進まないことが、どこかから漏れ出したことから(誰が漏らしたのか、それは言わぬが花だろう。)、皇后候補者がそれなりの年齢、18歳になるまで待つのが妥当なのではないか、という声が挙がり出した。

 せめて、私が乗り気になるのを待つべきでしょう、という声も上がり出した。


 そして、現皇后の実家の公爵家も、周囲の同情を買うべく、奔走しだした。

 子どもができないからといって、皇貴妃に貶められるとは、アーサー皇帝陛下からの余りにも酷い仕打ちではないか、ということだ。

 実際、帝国の歴史を紐解けば、子どもを産まなかった皇后は何人もいるが、だからと言って、皇貴妃に貶められた例は無い。


 これらは、私にとって有り難い話だった。

 私が皇貴妃でも構わないので入内したい、と言っていないのが明らかなのに、私を皇后として無理に入内させるようなことをしては、帝国上流社会の空気は、完全にアーサー皇帝陛下に対して冷たいものになってしまう。

 アーサー皇帝陛下は、私を入内させようとする動きを、終には止めざるを得なくなった。


 私はほっとした。

 私がこのままの状態で、アーサー皇帝陛下の皇后に冊立されてしまっては、アーサー皇帝陛下が崩御した場合に皇太后になる以上、新帝となるエドマンド様との結婚等、義理の母子であるとして、絶対に不可能な話になってしまうからだ。


 そんなこんな事態が起こる内に、気が付けば2月余りが経ち、ローラさんの兄が無事に上京してきた。

 フローレンス姉様を介して、エドマンド様と私は、ローラさんの兄と面会する手はずを調えた。

 人目に付かない教会の施設の一角を確保し、フローレンス姉様とその腹心の修道尼1人を立会人にして、ローラさんの兄と、エドマンド様、私の3人が話し合いの場を持つ。


 ようやく、ローラさんの娘さんの行方が分かる。

 その日を待ち望むエドマンド様は逸りきっておられたし、フローレンス姉様や私も、このことが嬉しく思えてならなかった。

 

 初めてお会いするローラさんの兄は20代半ばの筈だが、長年の諸国巡礼の旅のせいか、老けて見えるお方だった。

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