第2部ー14
ドミニク義父さまを、何とか説得して、自室に下がると、私は急いで手紙を認めて、送った。
1つは、フローレンス姉さま宛、もう一つは、エドマンド様宛だ。
私単独で、今回のアーサー皇帝陛下との結婚話について、私が反対の方向で、ヘレナ母様を説得しようにも、私だけでは、一時の説得が精々だ。
今回のアーサー皇帝陛下と私との縁談について、幾ら私が頑張っても、本格的にドミニク義父さまが介入すれば、ヘレナ母様は、ドミニク義父さまべったりの態度になって、私とアーサー皇帝陛下の結婚話を推し進めようとするのが目に見えている。
そのためにも、私の味方を少しでも増やさねば。
エドマンド様からの返事の手紙が、フローレンス姉様からの返事の手紙より先に来た。
エドマンド様も、私とアーサー皇帝陛下との結婚話は、寝耳に水だったらしく、驚いておられるのが、私への手紙の文面からわかった。
そして、正面切っては書かれてはいないものの、私の事を好意的に、女性として見ておられるのも、手紙の文面の端々からうかがえた。
私はほっとした。
私、ジェーンのことは、可愛い義妹だとエドマンド様に手紙の中で書かれていたら、どうしようと私は心配していたのだ。
でも、エドマンド様からの返事の手紙で、お互いに男女として相手を見ていることが分かった。
これは、私にとって、とても嬉しいことだった。
フローレンス姉さまからの返事の手紙は、エドマンド様の返事の手紙より、3日程遅れて届いた。
これは、決してフローレンス姉さまが、私の事を心配していないからでは無く、それ以上にいろいろと手配りをして、その結果を踏まえて、返事を書こうとしたからだということが、フローレンス姉さまの手紙の内容から分かった。
まず、私が皇后として、アーサー皇帝陛下と結婚することについては、教会関係者に対して、フローレンス姉さまは、そのようなことをしないように、様々な働きかけをしてくださるということだった。
そもそも、ある女性を第1夫人として結婚式を挙げながら、その女性を第2夫人にして、別の女性を第1夫人として結婚式を挙げるというのは、教会としても歓迎される話ではない。
筋論を貫くならば、第1夫人は第1夫人、第2夫人は第2夫人として、夫は礼遇しなさい、というのが教会の立場なのだ。
場合によっては、裏の手口も使うとまで、フローレンス姉さまは手紙に書いて下さった。
私はほっとすると共に、余りやり過ぎて反感を買わないでね、とフローレンス姉さまのことが心配でたまらなくなった。
そして、フローレンズ姉さまは、ローラさんの兄が近々、帝都に来るという情報を手紙に書いて、私に教えてくれた。
フローレンス姉さまは、ローラさんの兄が所属している修道会に対して、「極めて穏当かつ良識的極まりない」話し合いを行って、ローラさんの兄が帝都に来るように説得したらしい。
フローレンス姉さまによると、相手の修道会は、「ほんの少し」難色を示したが、最終的にローラさんの兄が帝都に来るように使者を送ってくれた、とのことだ。
私は、その手紙の文面を表面だけ読んで、深く考えることを、自分に禁じることにした。
実際には、どのようなことが行われたのか、考えるだに怖ろしくてならなかったからだ。
ともかく、ローラさんの兄が帝都に来て、私やエドマンド様と会って話し合えれば、ローラさんの娘の行方が分かる筈だ。
そして、ローラさんの娘を、無事に私やエドマンド様の手許に引き取ることが出来たならば。
更に、ローラさんの娘を、私とエドマンド様の養女として引き取ることができれば。
私は、物事の暗い側面は、とりあえず見ずにおいて、明るい側面のみを注視しようと決意した。




