第2部ー12
でも、現皇帝の従妹という皇族の立場にある私にとって、エドマンド様の第2夫人という地位は、そこまで自分の身分を捨てる価値があるのか、と言われたら、100人の内99人が否定するだろう。
エドマンド様の第2夫人という地位は、それこそローラさんのような伯爵家の娘とか、バックにかなり力のある子爵家の娘とかがなる地位に過ぎない。
私のような皇族の女性なら、エドマンド様の第1夫人になるのが当然なのだから。
私は暫く考え込んだ末に、自分の考えをまとめた。
「私は、エドマンド様の第2夫人でもいい。エドマンド様の傍にずっと寄り添えるのなら、それでも構わない。そして、ローラさんの娘の義母になりたい」
「よく、そこまで言えたわね。さすが、ヘレナ母様の娘ね」
私の言葉を聞いたフローレンス姉様は、感心したような口ぶりを表面上は示したが、私としては何となく揶揄されているように聞こえた。
フローレンス姉様は、ヘレナ母様とドミニク義父様の再婚をかなり批判的に見ていたはずだ。
私とエドマンド様の結婚についても、客観的には自分の立場と言うものを全くわきまえていない結婚と言う想いが、フローレンス姉様には、どうしてもしてしまうのだろう。
「そこまでの覚悟があるのなら、ローラさんの娘を探すのに、私もより協力するわ」
フローレンス姉様の言葉に、私は首を傾げた。
えっ、何かいい方法でもあるの。
「実を言うと、ローラさんの娘を見つかった後の事が心配で、私は非常手段を使うのをためらっていた」
フローレンス姉様は、半ば独り言を言った。
確かに、私もエドマンド様も、ローラさんの娘を探し出すことだけで頭がいっぱいで、その後のことを考えていなかった。
「武器と言うのは、抜いて相手に向けるわよ、と脅すのに使うのに止めるのが最善なの。武器を実際に相手に向けると、いろいろと後始末が大変になる。だから、どうしようか悩んでいたのだけど。私から、ローラさんの兄の所属している修道会に、ローラさんの兄が帝都に来るように動いてもらうわ」
フローレンス姉様は、私に言った。
ありがとう、フローレンス姉様。
私は、心から頭をフローレンス姉様に下げた。
「でも、これはかなり危ない話なの。あなた、自分の立場が本当に分かっているのかしら」
そんなにこの話は危ない話なのかしら、私はすぐに理解できなかった。
「アーサー皇帝陛下に子どもがおできになっていないのは、あなたも当然知っているわよね」
フローレンス姉様の問いかけに、私は黙って肯いた。
アーサー皇帝陛下は、既に20歳を越えた身、従弟のエドマンド様と同年齢だが、子どもは一人もおられない。
一方、エドマンド様は、表向きはお子様がおられないが、実は既に子どもが2人もいる。
そして、アーサー皇帝陛下は、それを薄々察しておられるせいか、子つくりに懸命に励まれているのだが、未だにできない。
最近は、とうとう皇帝陛下は、出産経験のある宮中女官とも関係を持ち出したということで、さすがにそれは皇帝と言う身分からしてどうか、と良識派の上級貴族が眉を顰めだしたらしい。
「私の情報網にたまたま引っかかったのだけど」
フローレンス姉様は言いにくそうに切り出した。
「あなたに近々、皇貴妃として入内してほしいという声を、アーサー皇帝陛下が掛けるという話が出ているらしいわ。そんな中で、あなたがエドマンド義兄様と結婚したいと言いだしたら」
ぎゃあ、勘弁して、私は内心で皇族らしからぬ悲鳴を上げた。
アーサー皇帝陛下が激怒し、私が降嫁する許可を、アーサー皇帝陛下から貰えなくなる可能性がある。
「ともかく注意して動くに越したことは無いわ」
フローレンス姉様の言葉に私は無言で肯いた。




