第2部ー11
私が虚を衝かれてしまい、ぼうっとしてしまったように、フローレンス姉様には見えたのだろう。
フローレンス姉様は、丁寧に私に対して、言葉を継いでくれた。
「まさか、ローラさんの娘と、エドマンド義兄様が父娘の名乗りを交わしたら、全てが終わりと思っていたわけではないでしょうね。父娘の関係になったら、それ相応の対応がお互いに必要なのよ」
フローレンス姉様は、半ば私に呆れたような目も向けている。
私は頭を慌てて回転させた。
ローラさんの娘が、エドマンド様と父娘の名乗りを交わしたら、当然、ローラさんの娘は、エドマンド様の娘として扱われることになる。
実母のローラさんが亡くなられている以上、どうするのが通常だろうか?
普通に考えたら、ローラさんの娘は、実父のエドマンド様と同居する、つまりは義母でもあるタバサ様とも同居するのが順当と言うことに。
ええっ、それはまずい。
タバサ様は、ローラさんの娘どころか、ローラさんさえ、知らない可能性が高い。
ただでさえ、エドマンド様とタバサ様の夫婦関係は冷え切っているのに、そこにローラさんの娘がいることが公然の事になり、ローラさんの娘が同居するということになったら、ただでさえ氷が張りそうな程冷え切っている夫婦関係に、完全に氷を張ることになる。
ローラさんの娘にとって、どう見てもよくない環境だ。
更に考えるならば、ローラさんの娘を育てている騎士は、タバサ様が実質的な後見人を務めているバーフ大公家所縁の騎士でもある可能性が極めて高い。
そういったことも更に考えあわせるならば、エドマンド様の現状の家庭環境では、エドマンド様とローラさんの娘が父娘の名乗りを交わすことを、単純に喜ばしいとは言いづらい。
「だからこそ、あなたに、エドマンド義兄さまの第二夫人になって、ローラさんの娘の義母になる覚悟があるのかを、私は尋ねているの。あなたが、エドマンド義兄さまの第二夫人になって、ローラさんの娘の義母になると言えば、タバサ様も文句を言えないでしょう」
フローレンス姉様の言葉に、私は思わず肯いた。
私が、エドマンド様の第二夫人になれば、そして、ローラさんの娘の義母に、私がなりたいといえば、タバサ様がそれを否定するためには、自分から積極的にローラさんの娘を迎え入れるしかなくなる。
タバサ様の最近の態度から言えば、、ローラさんの娘のために、そこまでのことをするとは思えない。
「でも、それは、あなたにとって、ある意味、とてもつらいことよ。あなたは、今でも皇族なのに対し、エドマンド義兄様は、事実上は皇太子の地位にあるとはいえ、皇族を離脱した身なの。つまり、あなたが、エドマンド義兄様と結婚するということは、自分から皇族の身分を離脱して、第2夫人として降嫁するということになる。しかも、タバサ様と言う第1夫人がいるにも関わらずね。アーサー皇帝陛下から勅語が下されるとか、特別な事でもないと、タバサ様があなたに、エドマンド義兄さまの第1夫人の地位を譲るとは思えないし」
フローレンス姉様の言葉は更に続き、私は考えに沈んでしまった。
確かに、フローレンス姉様の言うことは、そのとおりなのだ。
教会は、男性が2人までなら妻を娶るのを認めている。
これは、社会全体で女性が余り気味なこともあり、当然のことと考えられている。
だが、やはり、第1夫人と第2夫人では、いろいろと格差がある。
エドマンド様の場合、既にタバサ様が第1夫人としての地位をもっている。
それは、タバサ様が、公爵家の娘でもあり、大公妃でもあった身からして、当然の地位だ。
私がエドマンド様と結婚する場合は、かなり特別なことが無いと第2夫人に私はならざるを得ない。




