第2部ー9
私はいろいろ考えを巡らせ、ある手段を講じるべきだと決断した。
下手に個別の大公家に探りを入れると、却って皇室の弱みを見せることになりかねない。
むしろ、一見すると関係ない事のように装いつつ、全部の大公家に探りを入れるべきではないのか。
例えば、騎士の腕を競う大会を開くので、全ての騎士に大会参加を呼び掛けたいと考えるので、それぞれの大公家にも協力を呼びかけることにより、騎士達の情報を集めるとか。
私なりにそう考えて、エドマンド義兄さまに自分の考えを伝えたのだが、エドマンド義兄さまの考えの方が、私よりは上だった。
「そこまでのことはしなくても大丈夫だよ。自分なりに考えて、ローラの娘の行方は、ある程度は見当がついた」
ええ、あれほど考え事に苦労して、やっとの思いで私は考えついていたのに。
エドマンド義兄さまの返答を聞いて、私は、(内心で)絶句せざるを得なかった。
エドマンド義兄さまは、私の想いに気づいていないのか、自分の考えを説明してくれた。
「まず、ローラのお父さんが、子爵から伯爵へと抜擢されたのは知っているかな」
それは聞いた覚えが、私にもある。
「更に言うと、幾ら業績を上げても、帝室なり、3つの大公家なりの、何処かから、かなりの引立てが無いと、子爵から伯爵への出世は有りえない。つまり、ローラのお父さんは、その何処かとかなり深いつながりがあったのは間違いない」
エドマンド義兄さまは、私に丁寧に説明してくれた。
なるほど、ということは、ローラのお父さんのバックが分かれば、ローラさんの娘の行方も見当がつく可能性が高いわけだ。
「そして、ローラのお父さんが、何故、子爵から伯爵へと抜擢されたのかは、ドミニク父さんが教えてくれた」
エドマンド義兄さまの口調に、私の気のせいかもしれないが、苦いものが混じった。
「バーフ大公家が、ローラのお父さんの伯爵への叙爵の口利きをしたそうだ」
ふーん、バーフ大公家が、ローラのお父さんのバックに就いていたのか。
と、私はその言葉を聞いた瞬間は思っただけだったが、その意味が頭の中に染み通るにつれ、私の頭の中はパニックを起こしそうになった。
ええ、つまりそれって。
「そう、ローラの娘は、私の足元に隠れている可能性が高い訳だ」
エドマンド義兄さまは、苦いものを噛みしめながら話すような口調で言った。
私も、唖然とした。
そんな身近なところ、かつ、遠いところに、ローラさんの娘はいる可能性が高いのか。
バーフ大公家は、エドマンド義兄さまの第1夫人、タバサ様が、まだ成人に達していない当主コナン殿下の事実上の後見人になられている。
そして、コナン殿下の名目上の後見人は、エドマンド義兄さまだ。
言うまでもないことだが、実はエドマンド義兄さまの実子であるサムエル殿下が、エドマンド義兄さまとタバサ様の養子になったことから、エドマンド義兄さまとタバサ様の関係は、単に冷たい関係だけでは済まされない、複雑な関係に陥っている。
そして、バーフ大公家に仕える騎士達は、表向きはコナン殿下に全員が忠誠を誓っている。
だが、その内情は微妙に割れているらしい。
名目上、バーフ大公家の後見人になっているエドマンド義兄さまに、より忠誠を寄せる者。
実際上のバーフ大公家の後見人であるタバサ様に、より忠誠を誓う者。
コナン殿下こそ、バーフ大公家の当主であるとして、中立を保つ者。
そんなところに、ローラさんの娘がいるということは、エドマンド義兄さまは下手に探りを入れることについて、ためらわざるを得ない。
エドマンド義兄さまに私心はなく、コナン殿下をバーフ大公家の当主に据えるべきと考えておられるのに。
本当に厄介だ、と私はため息を吐いた。




