幕間ーエドマンド4
今回の話を含めて、3話、幕間を投稿します。
初回は、エドマンド視点です。
私は、義妹のフローレンスが修道院に入ってから後、初めてフローレンスに会っていた。
私の元婚約者イザベラと違い、フローレンスは自発的に修道院に入った身なので、第三者の立ち合いが当然必要だが、私とフローレンスが会うことに本来は支障は無い。
だが、フローレンスが修道院に入った経緯から、お互いに会うのがとても気詰まりになっていて、気が付けば数年もフローレンスに私は会っていなかった。
「お久しぶり、エドマンド義兄さま」
私の前に姿を現したフローレンスは、約5年余りの歳月を経て、輝く美貌とスタイルを誇る美女に成長していた。
本来から言えば、(俗な言葉になるが)色気をかけらも感じさせない修道服に謹厳実直に身を固めているにもかかわらず、その修道服を通してさえ、フローレンスの魅力は私に漂ってくるようだった。
もし、私の従兄、アーサー現皇帝に婚約破棄されたまま、彼女が俗世に残っていたら、貴族の男性の間で噂になって、求婚者が殺到していたろう。
その先頭に私がいたかもしれない。
いや、そもそも予定通りに、アーサーと結婚していたら、近来、稀にみる美貌に光り輝く皇后として、アーサーの横に立っていただろうに。
私は本当に惜しいと、フローレンスの姿を見て思った。
失ってから、その価値が本当に分かると言うが、フローレンスについては、本当にその通りだ。
「それで、今日は何のためにお見えになったの。帳簿の件と伺っているけど」
フローレンスは、そのつもりは全く無いのだろうが、小首を傾げて、誘うような目で私を見た。
いかん、いかん、ここは修道院だ、私は思いきり自制心を働かせるつつ、フローレンスと話をする羽目になった。
「まずは、帳簿の件を話し合うために来た。後、ジェーンから相談を受けた件もある」
口の堅いフローレンスの腹心ともいえる修道尼が立会人とはいえ、どこから秘密が漏れるか、分かったものではない。
ローラの娘のことは、ジェーンから相談を受けた件ということで、できる限り具体名等は挙げずに話すに越したことは無かった。
「我が国の財政に複式簿記を導入することに問題は全く無いのだね」
「ありませんよ。むしろ、当然ですね」
複式簿記の説明を受け、我が帝国の財政帳簿に複式簿記を導入することの問題点を、フローレンスと話し合ったのだが、私の見る限り問題点は無かったし、フローレンスも太鼓判を押してくれた。
大蔵大輔、大蔵卿と国の財政を司る官僚としての道を歩むはずが、事実上の皇太子の地位にあることから、無任所の公爵と言う父と同様の立場に今の私はある。
だが、大蔵大輔止まりだったとはいえ、大蔵省内に今でも私は影響力を残しており、下級役人の不正防止等の為に複式簿記を導入させようと考えていた。
その話が済んだ後、私は本題に入った。
「例の子だが、今は騎士が引き取って面倒を見ていると思うのだが、どう思う」
「私もそう思います」
フローレンスは、私の言葉に肯いた。
騎士は主に地方の荘園が自衛のために持ち出したもので、いつのまにか事実上、帝国の軍事力を担う存在になっていた。
幾つかの軍事貴族が地方の騎士団を統率しており、軍事貴族は主に皇室に、一部が大公家に忠誠を誓って、御恩と奉公で関係を維持している。
ローラの家にいた騎士は、3つの大公家の内の一つに所縁のある騎士だろう。
だから、素直に私にローラとの間の子を示さないのではないだろうか。
「騎士の内情は、豊かなことが多いです。娘一人を養うくらい、問題ないのでしょう」
フローレンスは、そのように推測していた。
問題は、3つの大公家にどのように探りを入れるかだ。
皇室の弱みを示すことはできるだけ避けねば、私はそう考えを巡らせた。




