第2部ー5
「ともかく、ローラさんの葬儀が行われて、その際にエドマンド義兄さまとローラさんの子がいたのは間違いないわ。大方、エドマンド義兄さまは、ローラさんが自殺したと思い込んで、教会を探っていなかったのではないかしら。私にとっても盲点だった。財産問題で揉めた教会をローラさんが頼っていたなんて」
フローレンス姉様は、話を本題に戻して言った。
確かに、財産問題でかつて揉めた教会を、ローラさんが頼るなんて、私には思いつかない。
エドマンド義兄さまに至っては、尚更だろう。
「とりあえず、エドマンド義兄さまに、ローラさんの子のことを伝えてあげて」
フローレンス姉様の頼みに、私は肯いた。
「ローラが失踪後、しばらく生きていた。そして、子を遺していたって」
エドマンド義兄さまは、私の話を聞いて、絶句した。
「間違いないのか」
エドマンド義兄さまは、私の両肩を掴んで、揺さぶりながら言った。
私は思わぬ痛みに顔をしかめながら言った。
「エドマンド義兄さま、痛いです」
「すまない。でも、余りにも意外で、哀しくて、また、嬉しくて」
エドマンド義兄さまは、顔をぐちゃぐちゃにして泣き笑いの表情を浮かべながら言った。
私は、エドマンド義兄さまのその表情を見て、思わず胸が痛くなるのを覚えた。
何故なんだろうか。
私は、フローレンス姉様から聞いた話を、できる限り詳細に伝えた。
エドマンド義兄さまは、顔をしかめ、半分唸りながら肯き、そして、呟いた。
「確かにフローレンスの言うとおりだ。ローラは不安だったんだ。私は、ローラの言葉に甘えて、ローラは通いの愛人のままでもいい、と内心で思っていた。そのために、ローラの生活の支援とかまでは、私の考えが及ばなかった。ローラの周囲には、少なくとも身の回りの世話をする侍女、それに下女に下男、護衛の騎士と4人は人がいたはずだ。生活しようとしたら、それなりにお金がかかっていたはず。父や兄の遺産もいつまであるか、ローラは不安だったから、私の愛人になった。でも、私は生活の支援をしなかった。ローラが私の愛想を尽かすのも当然だ」
おーい、自分の世界に入るのも程々にして、エドマンド義兄さまに、私は文句を内心で言った。
私が目の前にいるのよ、それにしても、このバカ義兄。
両親や兄弟を失って、孤独になった愛人の生活のことを考えていなかったのかい。
愛想を尽かされて当然だぞ。
皇族らしからぬ罵詈雑言が、私の頭の中に浮かんでしょうがなかった。
私は(内心で)大きなため息を吐いた後で、エドマンド義兄さまに尋ねた。
「それで、この後、どうするつもり」
「もちろん。自分とローラの子を探し出して見せる」
そこは、力強くエドマンド義兄さまは言った。
「どうやって」
私はさっきのエドマンド義兄様の独り言を聞いたために、エドマンド義兄さまに冷たく言った。
「それは、懸命に探せば何とかなる」
「フローレンス姉様が指摘するまで、全く見つけられなかったくせに」
エドマンド義兄さまに、私は冷たい態度を続けてしまった。
だって、さっきの独り言を聞かされてしまっては。
エドマンド義兄さまは煩悶し出した。
私は(内心で)更に大きなため息を吐いた。
全くダメな義兄を持ったものだ。
「もう、私も協力してあげる。少しでも協力者が多い方がいいでしょう」
私が言うと、エドマンド義兄さまは喜んで言った。
「ありがとう。ジェーンが助けてくれて、嬉しいよ」
私は表面上は笑いながら、内心で思った。
さて、どうやって、ローラさんの子を見つけよう。
何だかんだ言っても、私の力は無いに等しい。
フローレンス姉様に、結局のところは、私は頼るしかないみたいだ。
それにしても、ローラさんの子はどこにいるのだろうか。




