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十人のインディアンと

 綺麗な瞳だった。

 綺麗な髪だった。

 悲しそうな顔だった。

 温かい手のひらだった。

 優しい声だった。


 赤い、血だった。

 綺麗な血だった。

 濡れた顔が、無くなった足が、冷たい手のひらが……、

 『  』の全部が、

 どうしようもなく、愛おしかった。





 そこはカラフルな星が瞬く異世界だった。

 綺麗だな、と正直に思った。ここ何年かは星を意識して見たことがなかったからだ。いや、あまり星は見たくなかったんだ。

 あいつのことを、思い出すから。


「ドーモーっお兄さんコンニチハッ」「コンニチハッ」「コンニチハッ」

 唐突に足元から子供の声がいくつも聴こえ、俺は「うわぁっ!?」と情けない悲鳴を上げて尻もちをついた。

 黒いてるてる坊主みたいな格好をした小さい子どもたちが十人。整列して俺を見ている。

「なんだお前たちはっ」

 ぱくぱくと口を開きながら俺は後ずさった。

「そうですっ、僕らは!」「インディアン!」「十人の」「インディアン!」

 コメントに、困った。

「あー、そう。んで、ここどこかわかる?」

 ようやく落ち着きを取り戻した俺は至極当然のように質問をした。

 ここは俺のいた「世界」ではないことは明白だ。なにせ星は星形で空だか天井だかわからない、とにかく上の方から吊るされているように見える。そして俺の立っているアスファルトにはチョークによる落書きが広がっている。

 俺の背後には水族館と掘られた銀のプレート、その奥に大きい建物がたっていた。一方俺の前方には一際目立つ塔が遠目に見える。

「ここは主様が作った幻想の街」「追憶の」「主様の願いの街」「だよっ」「だよ!」

 口々に喋られて俺は戸惑う。

「主様って?」

「お兄さんに……ううん、アルレシャに主様を思い出してもらうために作られた」「蜃気楼の街」「夜に現れて、朝に消えていくまぼろし」

「わかりやすく伝えてくれないか。あとアルレシャってうお座のアルファ星だったよな?俺には胡月紡って名前があるんだが…………?」

「いいんだよ、お兄さんはアルレシャだから」

「は?」


 小人たちは個々に名乗らず総括して「十人のインディアン」と名乗った。この世界の案内人とやらをしているらしい。

 どうやら俺は身に覚えのない厄介事に巻き込まれたようだ。

 夜の六時間だけ存在するこの世界でここの『主様』とやらを思い出すべく『証』を見つけなくてはならない。俺を含めた六人とこの世界でのみ与えられる力を行使して。

 その説明は長々と続けられた。

 このゲーム?というか任務というか、には一ヶ月という期限が設けられていて時間を無駄にしたくない俺は説明を聞きながら辺りをうろついていた。

 とりあえず一番目立つ尖塔を目指して。

 その間に二回鐘がなった。

「具体的にどんなものを探せばいいんだ?」

「証、は探すっていうか」「思い出せば自ずと見つかるよ」「見つかるヨ!」

「………なんだそりゃ」


 小洒落た塔は天に向かってまっすぐ伸びていた。星がその白壁を照らしだす。

 時計塔の真下のこの位置では時計は眺められない。

 塔内への扉は固く閉ざされているし、人はいないし、変な怪物みたいなものが徘徊していたりこの街は不思議だ。

「なあ、他の奴らはどこにいるんだよ」

「それは案内人の僕らの口から言えないよー」「僕らはあくまで」「お兄さんたちの『物語』には関われないんだよ」

「『物語』…………?」

 問いただそうとする前に三度目の鐘がのんきに鳴り響き、俺は口を閉じた。代わりにため息が漏れた。



 濡れたお前の足跡をたどれば、またお前に出会えるだろうか。

 夏のアスファルトは乾いているけど。

 お前が俺を赦してくれるなら。

 またあの星を探しに行くのに。

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