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こびとたち

 魔法使いの弟子はゲーテが手がけたバラードだ。それをもとに映画や本が多数世に出ている。

 大まかな流れはこうだ。

 あるところに魔法使いとその弟子がいた。

 魔法使いは私用で出かけ、弟子は留守番がてら掃除をすることになっていた。

 弟子はあらゆる掃除道具に魔法をかけ掃除をしようとしたが失敗してしまうのだ。焦ってしまった弟子はどうすることもできなかったがそこへ師匠が帰ってきて暴走した掃除道具を止めて、めでたしめでたし。



 真っ黒な表紙を両手で抱えたまま、梓音さんは無言で私の隣を歩く。

 図書室を捜索したあとも校内を散策したがめぼしい物は見つからなかった。当然、私達四人以外の人間もいなかった。

 徒労感に暮れながら私達は学校をあとにし、目的地もないまま住宅街を歩いていた。

 ブリキの兵隊たちのような危険なおもちゃたちはいないようでゆっくりと歩くことができる。

「あと人がいるとしたらどんなところがあるんだ?」

 少し後ろにいる美波くんが隣を歩く儚葉くんに問いかけた。

「僕らが行っていないところはあと…廃工場とか水族館、遊園地とその敷地内にある劇場と美術館、それに森の中にある廃教会。そう言えばこの道を行けば公園があったような気がするよ」

 ここにいたのは一年も前なのに儚葉くんはすらすらと思い出す。

「………あっ、あれじゃない?」

 うつむいて歩く梓音さんの代わりに私が前方を指差す。

 一際目立つ赤い塗装の家の向かい側。狭い道路を挟んでその公園はぽつんとあった。

「あれ………?誰かいるよ」

 錆びついたブランコ、滑り台、鉄棒。公園の中央に設置されたジャングルジムで数人の小人が遊んでいた。身長は一メートルもないだろう。全員黒いフード付きマントを頭からすっぽりかぶるという身なりだ。

 きゃっきゃと楽しそうにジャングルジムの上から真っ赤な花びらをこちらからは死角になる方向へ撒いている。

「何してるんだろうな?」

 訝しげな表情で美波くんが呟き、儚葉くんもその様子を警戒して眺めている。


 甘い、匂いが漂ってきた。

 ただ甘いというわけではなく鼻につくような、どこかで嗅いだことのあるようなそんな匂い。

 学校を出たあとずっと沈んだ調子だった梓音さんが顔を上げて「バラの匂いだわ」と小声で言った。

「それじゃあ、あの撒いているやつはバラの花びらってこと?」

「なんでバラなんか撒いてんだ?」

 私と美波くんが交互に疑問を述べる。真相を知るため近づこうとしたとき、突然小人たちとは違う、低い、男の人のどなり声がした。

「だからっ…やめろって、言ってるだろ!!」

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