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リゼリアの混乱する顔に、オースティンはニヤリと笑った。周りは血の海のようになっているというのにもはや痛覚さえも感じ取れないのか、嬉々として語った。
「は!エリオット、お前、リゼリアにもこの話をしていないのか?!」
「は、話…?」
リゼリアは、オースティンとエリオットの顔を交互に見る。エリオットはリゼリアを抱きしめながら、オースティンを睨み続けている。
「確かに全てエリオットの手柄だ…私の功績は」
「え…?」
「けど、エリオットが賞賛されるなんて世界はいらない!だから全部ぐちゃぐちゃにしてやるんだよ!私と!お前!」
オースティンは充血した目を大きく開いて、今までの全てを吐き散らかすように怒涛の勢いで血を飛ばしながら叫んだ。
(ちょっとした違和感はあった。)
「そうすれば、残るのは私だけなんだ!…私は‘主人公’だからなぁ!」
エリオットが得られるはずだった賞賛を奪い取り、国を愛して守ってくれた人々を殺し、あまつさえエリオットの心に深い傷を負わせるオースティンに、リゼリアは心の底から沸々と怒りが込み上げた。
(これはもう、救いようがない。エルに殺させたくもない…)
リゼリアは、エリオットの腕の中から抜け出した。
「リゼ…?」
エリオットの握る剣を奪い取り、エリオットの声は聞こえないふりをした。荒い息をあげるオースティンの後ろに立つ。
「な、なんだ?!リゼリア!何をする気だ!」
「もう、やめて」
オースティンの背中から一気に首に剣を突き刺した。吹き出た血でリゼリアが赤く染まる。
「リゼ…」
真っ赤になったナイフを投げ捨て、リゼリアは真っ直ぐとエリオットの方を向く。
「私は汚い人間。」
言葉が詰まる。
「たくさんの人を、殺した。でも…あなただけはできないの」
鮮血を顔に滴らせながらも、まっすぐと殺し屋は王子を見つめた。その目には涙も浮かんでいる。
「…リゼリア。僕も愛してる」
エリオットは優しく、リゼリアの頬に触れる。
リゼリアもその上に手を重ねた。
ただ目を閉じた。




