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血の匂いが部屋の中に充満した。リゼリアは窓を開けて、涼しく爽やかな風を部屋の中へと入れる。窓の外を見ていると後ろから、エリオットがハグをして、彼の声がリゼリアの耳元で聞こえた。
「全部、話すよ」
「えぇ…」
リゼリアはエリオットの腕に手を添えて、ゆっくりと頷いた。エリオットはぽつりぽつりと口を開き始めた。
「…初めは、ちょっとした悪戯のつもりだったんだ。オースティンと僕は、小さい頃は髪と目の色は違うけど、顔はそっくりでね。たまに入れ替わって遊んでいたんだ。」
「そう」
リゼリアは小さく優しく相槌を打つ。
「でも、ある日、オースティンに変装した僕が、剣術の授業に出たことがあってさ。相手は当時の騎士団長だった。オースティンとして見られてるなら、多少派手にやってもエリオットは怒られないだろうって思って……そのまま本気でやって、騎士団長をボロボロにした。」
「うん」
「そしたら次の日からオースティンへの周りの態度が変わったんだ…神童だの、剣聖だのって、持て囃されるようになった。それでオースティンは味を占めた。」
「うん」
「それからは、剣術だけじゃない。学問でも何でも、僕と入れ替わって、自分の功績にした。エリオットとしては、出来損ないを演じろって言われてね。不思議と、それに対して怒りも湧かなかった。それが当たり前だと思ってたから。まあ、あいつも何もしてなかったわけじゃない。評価に見合うくらいには、剣も学問も身につけてたし。だから、誰も疑わなかったんだ。」
「えぇ」
「成長して、さすがに顔での入れ替わりは無理になったけど、今度は、人前に出なくてもいい功績を選ぶようになった。反乱軍の鎮圧とかね。ほら、鎧で頭を隠してしまえばわからないから…。思えば、僕が初めから拒否していればここまでオースティンは空っぽの功績に苦しむことはなかったんだろうな」
「…それは違うわ。選んだのはオースティンよ。それに、彼はあなたを苦しめるためだけに、何十人を殺した。これは彼の罪よ。あなたの罪は…」
リゼリアはくるりと回転し、エリオットの方を見た。
「私に、その秘密を言わなかったことよ。そして、それだけ。」
「でも、君にも秘密はあっただろう?殺し屋だって…」
「それは…確かにそうね。じゃあ2人で一緒に罰を受けましょう」
「あぁ。一緒に。」




