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2050年、世界崩壊。二人の少年が、地獄と化した世界の運命を変える物語。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
【First Story of the Babies:《〝世界を浄化する地獄の花〟》】

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Episode 6 :【変わり果てた、国の姿】

 ――生き残った俺と母さんは、ひたすら彷徨った。


《ヒューマネスト》に殺されてしまうかもしれない、危険すぎる状況下……心身を擦り減らしながらも、命を懸けて、避難先を探し続けていた。


《――「ごめんね、夏くん……弱いママで、本当にごめんね……」》

《――「もう、何泣いてるんだよ、母さん! ボクなら全然大丈夫だから!」》


 目の前で父さんが消えた時から――母さんは明らかに、心も身体も衰弱していった。


 時には、立ち上がることすらできなくて、俺がおぶって移動することもあった。


 だけど、俺にとってそれは、全然苦なんかじゃなかった。


 むしろ、今まで自分を鍛えていたのは、こういう形で恩返しするためなんだって……心から、そう思えた。


 そうやって俺達は、何日も、何日も、歩き続けた。


「父さんの分まで、生きる」。何度も何度も、そう誓い合いながら。


 ようやくたどり着いたのは、小規模だが、設備が充分(じゅうぶん)に整っている避難施設だった。


 ……しかし、結局そこには、希望など一切なかった。


 なぜならそこは、家族や大切な人を(うしな)い、帰る場所を奪われたことで、人間として生きる気力を喪失した者達が集まる、行き止まりの生き地獄でしかなかったからだ。


 もはやその場所にいたのは、死んだように日々を消費する、亡霊のような存在だけだった。


 そんな避難施設での生活の中、得られる唯一の情報は、世界各国で起きている《ヒューマネスト》による被害拡大のニュースだった。


 それは決して、対岸の火事でも、特撮映像でもない。


《ヒューマネスト》は確かに存在し、そして誰にでも起き得る災厄(げんじつ)として、人類を脅かしていたのだ。


 その対策として日本政府は、東京都を中心に、あらゆる物理衝撃を遮断(しゃだん)する、巨大な電磁結界(でんじけっかい)を展開。


 《ヒューマネスト》の侵入を防ぐ、〝結界けっかい避難ひなん都市とし〟を造り上げた。


 その地域一帯の名は――〈御門(みかど)大江戸(おおえど)〉。


 そこに偶然いたというだけで、俺と母さんは、安全に生き延びることができた。


 そのことに、罪悪感がなかったといえば……嘘になる。


 だけど、当時の俺は、まだ11歳だった。


 「おかげで、母さんの負担が、少しは軽くなる。母さんと安心して暮らすことができる」……。


 残酷かもしれないが、それ以外のことを考える余裕は、なかった。


 ――だが結局それは、束の間にも満たぬ安息でしかなかった。


 世界の崩壊と不幸の連鎖は、まだ終わってなどいなかったのだ。



《――「――な、なんだ、お前達は!?」》

《――『あなた方は、国家秩序に不要な存在と認定されました。公務に従ってください』》

《――「は、はあっ!? 何言って――おいっ、何すんだよ!」》

《――「やめてっ! その子はまだ子供でしょ!?」》


 ――それは、《DD(ディー・ディー)》の惨劇から、1年余りが過ぎた、ある日のことだった。


 避難施設に、見知らぬ機械人形達が、突如押しかけて来たのだ。


人類(じんるい)貢献用(こうけんよう)機械(きかい)人形(にんぎょう)〟――通称〝フレンド〟

 本来は、業務型や医療型など、人間社会に貢献するタイプが存在し、世界中の人間を労働から解放したという、確かな実績を持つ、機械人形。


 だが、俺達の前に現れたのは、おおよそ人様の役には立ちそうもない……重武装をした戦闘兵器だった。


 俺達は、理由も告げられぬまま、拘束された。


 抵抗すれば、「不要な抵抗は、公務執行妨害の対象となります」と、一方的に暴力を振るわれた。


 ――『なんの権利があって、こんなことを』。


 叫んだ俺の前に、フレンドの一体が、空中に映像を投影した。


 そこに映っていたのは、宝飾品とステンドグラスで構成された、奇妙な(よろい)(まと)う――人間と思しき存在。


 その姿を、俺は今でも、鮮明に憶えている。


《――『ごめんなさいねェ~。アナタ達が、無駄に人生を浪費している間に、この国は変わったのよン。

 お気の毒だけど、東京都……いや、今や〝新国家〈御門(みかど)大江戸(おおえど)〉〟では、アナタ達のような劣悪分子に、居場所なんてナッシング! 

 ゴミはゴミ箱に、お行きなさい!』》


 その映像は、自分の主張を一方的に言い終えると、ブツンと切断されてしまった。


 おそらくは、ビデオ映像か何かだったのだろう。


 奴は、俺達と、まともに会話する気すらなかったのだ。


 それこそが――今の国を象徴する、見るに堪えない姿だった。


 俺達は、〝無価値〟と断じられた。


 ――『ただでさえ生産性のない花屋は、再建不可。

 母親は精神せいしん疾患しっかん状態となり、一人息子は社会資源としては幼すぎる』。


 ただ、それだけの理由で。


 フレンド達は、俺達を拘束した後、〈御門大江戸〉から追放した。


 その日を境に、俺と母さんは〝トガビト〟――最下級の身分の人間として、地の底へと()とされたのだった……。

《次回予告》


《かつての美しい面影は、まるで(しぼ)んで枯れていく花のように、消え失せていた。》

《――「……ぁ…………ぉ……ぇ…………っ」》

《……俺の声に、母さんは、何も答えてはくれなかった。》


次回――Episode 7 :【喪失と、決意】

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