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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第五章 | 【Fifth Story of the Babies : 《特殊兵装、見参》】

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Episode 50 :【たとえ、窮地に追い込まれようと】

 ――龍雅が《紺碧応龍(コンペキノオウリュウ)》を装着し、強烈な必殺技・《狂瀾(きょうらん)怒涛(どとう)海龍斬(かいりゅうざん)で、異形《いぎょう》の翼竜《ドラゴン》を粉砕《ふんさい》した――。


 それと時を同じくして、朱音《あかね》もまた、《TYPE:D》と対峙《たいじ》していた。


(……これは……かなーりマズい状況やな……)


 しかし、龍雅が圧倒的勝利を飾ったのとは対照的に、朱音は――まさに絶体絶命《ぜったいぜつめい》の窮地《きゅうち》に追い込まれていた。


 今の朱音は、《特殊(とくしゅ)兵装(へいそう)》を装着することができておらず、生身での戦闘を強《し》いられていた。


 そのせいで、端正な顔立ちは血と傷で、スーツも至る所が破れてしまっている。


 そんな彼女のすぐ近くには、醜悪《しゅうあく》と呼ぶに相応《ふさわ》しい翼竜《ドラゴン》が――《《2体》》。


 つまり今、朱音は《TYPE:D》に、挟《はさ》み撃《う》ちをされている状況なのだ。


 なぜ、そんな絶体絶命《ぜったいぜつめい》の状況に、朱音は追い込まれてしまったのか。


 答えを知るには、時計の針を、少し巻き戻す必要がある――。



 ――〈A.E.G.I.S(イージス)〉本部から発進した朱音は、物の数分もしない内に、目的地へと到着。


 浮遊ワゴン車から飛び降り、戦場へと降り立った。


 眼前にいたのは、大樹のような腕で、まるで積み木を崩すかのように、ビル群を薙《な》ぎ倒《たお》す《TYPE:D》。


 すぐさま朱音は、自らの《特殊兵装》を装着するため、スーツの内ポケットから《アーマードバックル》を取り出そうとした――。


 その時、悲劇は起こった。


【ガアアアアアアアアアアアアアッ!!!】


 上空から、別個体の《TYPE:D》が、凶悪な咆哮を上げる。


 そしてそのまま、口腔《こうくう》内で生成した火炎弾を、朱音に向かって発射してきたのだ。


「なっ――!!?」


 ――ドオオオオンッ!!!


 上空からの奇襲《きしゅう》に気付いた朱音は、全力で跳躍《ちょうやく》。


 なんとか直撃は免《まぬが》れたが、至近距離で爆炎《ばくえん》に巻き込まれた結果、紙屑《かみくず》のように吹き飛ばされてしまう。


「ぐうっ……!!」


 爆炎《ばくえん》による火傷、爆風《ばくふう》によって生じた衝撃波《しょうげきは》、アスファルトを転がされたことによる激痛《げきつう》――。


 その全てのダメージを、しかも同時に負ってしまったことにより、朱音の生命活動力は、著《いちじる》しく衰弱《すいじゃく》してしまう。


 それだけでも散々な状況だというのに、朱音の不幸は、まだ終わらない。


 なんと、火炎弾の爆発によって、持っていた《アーマードバックル》を、手放してしまったのだ。


「くっ……!!」


 朦朧《もうろう》とする意識の中、手探りで周囲を探す朱音。


 だが、どこにもバックルは見つからない。


 どうやら、かなり遠くまで吹き飛ばされてしまったようだ。


【グギギィ……!! グギャギャギャアアアアアアアアッ!!!】


 追い打ちをかけるように、上空から火炎弾を発射してきた《TYPE:D》が地に降り立ち、勝利を確信したかのような雄叫《おたけ》びを上げる。


《特殊兵装》が使えない上に、満身創痍。


 そして、ただでさえ脅威的《きょういてき》な翼竜《ドラゴン》を、しかも2体も相手しなければならない。


 これを絶体絶命の窮地と呼ばずして、なんだというのか。



(……エネルギー節約のために、ギリギリまで生身でいようとしたのが、こうも裏目に出るとはなぁ……。

 おバカキャラが、策士ぶるもんやないな……)


 ――《特殊兵装》こと、《対(たい)異能(いのう)生命体(せいめいたい)特化型(とっかがた)・特殊(とくしゅ)環境(かんきょう)適応(てきおう)兵装(へいそう)》。


 その名の通り、〈A.E.G.I.S〉が誇る、対《ヒューマネスト》用の強化スーツ型戦闘兵器。


 《特殊兵装》には、最大の特徴である〝科学技術で再現された超能力〟の他にも、多種多様な機能が組み込まれている。


〝装着者が受ける、物理的ダメージの軽減〟。


〝身体能力の強化や補強〟。


〝組み込まれた超能力の出力増強〟。エトセトラ……。


 それらの機能は、装着時に自動的に発動する。


 そして、装着が解除されるまで、あるいは稼働に必要なエネルギーが尽きるまで、発動し続ける。


 この〝稼働に必要なエネルギー〟とは、ズバリ、《A(アーマード)S(システム).GP(ガラパゴスフォン)》のバッテリー。


 そのバッテリーから供給される電力を、腰部《ようぶ》に装着した《アーマードバックル》が常時変換(へんかん)・放出を行い続けることによって、《特殊兵装》の本領は発揮される……という仕組みなのだ。


 つまり、《GP》のバッテリーが尽《つ》きれば、《特殊兵装》を使用することはできない。


 そうなると手元に残るのは、無駄にメタリックで分厚いだけの、金属の塊だ。


 そして《特殊兵装》はその性質上、ただ装着しているだけでも、稼働に必要なエネルギーを消費してしまう。


 安全性や確実性を考慮《こうりょ》すれば、戦闘時には常に《特殊兵装》を装着し続けるのがベストなのだが、それは最大持続時間を急速に削ってしまう行為でもある。


 なので朱音は今回、「必要最低限の範囲内《はんいない》でしか使用できない」という作戦を、事前に立てていた。


 ……しかし結果的に、その作戦は、失敗に終わった。


 それを、「結果論だから仕方ない」と擁護《ようご》するか、「愚策《ぐさく》が招いた結果」と非難するか……。


 少なくとも朱音は、最初から《特殊兵装》を装着する判断をしなかった、過去の自分を呪っていた。


(ああ、もう……ナッチャンの前で、あんなカッコつけておいて、この様かいな。

 今のウチ、いいお笑い種やなぁ……)


 《アーマードバックル》がなければ、《特殊兵装》を装着することなどできない。


 力なく、乾いた笑みを浮かべる朱音。


 しかし、その朱色《しゅいろ》に輝く瞳の奥底には、強き意思と決意が燃え上がっていた。


 朱音はまだ、生き抜くことを、諦めてなどいない。


 足元が覚束なくても、傷と血にまみれても――朱音は立ち上がり、2体の翼竜《ドラゴン》を睨《にら》みつける。


(でも、悪いけどな……ウチは、こんなところで終われる人間じゃ、ないんよ)


 破れたスーツの胸元に、そっと手を添える朱音。


 首元から鎖骨を赤黒く染める、時間でさえ癒せなかった、痛々しい火傷痕。


 その傷は、彼女にとって、「目の前の命を守れなかった」という、罪の象徴。


 そして――「それでも、なお生きる」と誓った、希望の灯火であった。

<次回予告>


《――「ねえねえ! おとーさん、おかーさん!

 朱音ね、将来は、自衛隊になりたいな!」》


≪朱音という人間は、肩書や制服だけでなく、魂の奥底まで、立派な自衛官だったのだ。≫


≪朱音にとっては、それこそが――「今日も生きる」という、小さな祈りだった……。≫


次回――Episode 51 :【私が、守りたかったもの】

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