Episode 49 :【悲劇を断ち斬る、激流の刃】
――キシューイン……。ガチャッ……!!
【〝アマツボシ・リュウガ〟――認証完了。】
龍雅はスーツの内ポケットから、《アーマードバックル》を取り出し、腰部に装着。
そしてすかさず、警察手帳を開くように《GP》をパカッと開き、ホルスターから引き抜いた〝アクセスカードキー〟を、ガラスケースに差し込んだ。
そのまま龍雅は、手首のスナップを使って《GP》の画面を閉じ、バックルに装填する。
【《アーマード・システム》、始動。】
【《紺碧応龍》――迸る激龍を、我が剣に。】
――ガシュン、ギシュイィン!!
電子音声の後、波模様の意匠を刻んだ群青の鎧が、龍雅を覆い尽くすように纏い付く。
装着を完了すると同時に、龍雅の身体から、水飛沫が激しく弾け飛んだ。
――《紺碧応龍》。
水色に輝く刃の大剣と、渦潮模様の巨大な盾を携え、科学技術で再現した〝アクアキネシス〟(水を操る超能力)を駆使して戦う、激流の騎士。
それこそが、龍雅専用の《特殊兵装》だ。
「フレンド君達! この場は俺に任せてくれ! 君達は、住民の避難や、他の《TYPE:D》の対処に当たってくれ!」
そう呼びかけると、龍雅は大剣の柄(剣を握るところ)に組み込まれたスイッチを押す。
すると、大気中の水素と酸素が結集していき、激流の刃が生成される。
これこそが、龍雅が愛用する大剣・《龍水剣》の最大の特徴だ。
『了解しました!』
『任せましたよ、主任!』
龍雅が戦闘モードに入ったのを確認した治安維持型達は、その指示に従って、場を離れる。
【グルルルルゥ……!! グギャアアアアアアアアアッ!!】
束縛から解放された《TYPE:D》が、その鬱積した苛立ちを吐き出すかのように、裂けた口元を開いて咆哮を上げる。
そしてそのまま、口腔に巨大な炎の球を生成し、龍雅に向けて吐き出した。
龍雅はすかさず、渦潮模様が刻まれた盾・《海神》を構え、水の防壁を展開し、火炎弾を受け止める。
そして、圧倒的な物量差を以って、《TYPE:D》が放った火炎弾を、一瞬の内に蒸発させてしまう。
――フシュゥウウウウウウッ……!!!
高温を秘めた水蒸気が、周囲を覆い包む。
だが、《TYPE:D》は、翼を羽ばたかせ、それらを吹き飛ばしてしまう。
それは、鮮明な視界を取り戻し、次の攻撃を仕掛ける策としては適切だ。
しかし龍雅は、その時点で――相手を撃破する準備を、すでに終えていた。
龍雅は、華麗な剣捌きで《龍水剣》を持ち替え、柄頭(柄の先端)で《アーマードバックル》の側面を叩く。
【《狂瀾怒濤海龍斬》――発動。】
――ブシュウウウウウウッ!!!
必殺技の発動を意味する電子音声が鳴り響いた直後、《龍水剣》の激流の刃が、その勢いを更に増す。
やがてそれは、龍雅の肉体すら追い越してしまうほどの大剣へと、進化する。
その後の龍雅の行動は、至って単純明快だ。
「ウオオオオオオオオオオッ!! セイッハアアアアアアアアアアアーッ!!!」
全身全霊の力を脚部に込めて、跳躍。
そして、勇ましい雄叫びを上げながら、超絶進化した《龍水剣》を振り下ろす。
――ズバァアアアアアアアアンッ!!!
放たれたのは、潜水艦すら両断する、破壊の斬撃。
それは、優に10メートルを超える巨大な翼竜すらも、真っ二つに斬り裂いた。
【グギャアアアアアアアアアアアアアアーッ!!!】
――ドガガァアアアアンッ!!!
こうして《TYPE:D》は、大地が震えるほどの断末魔の叫びを上げながら、爆散した。
「今すぐに撃破する」という言葉通りの、完全なる大勝利。
しかし、今の龍雅には、その余韻に浸る一時の休息すらない。
龍雅は、《特殊兵装》の装着を解除することなく、バックルから《GP》を取り出し、その画面に表示される《TYPE:D》の位置情報を即座に確認する。
龍雅にとって、《TYPE:D》の個体としての強さは、実は然したる脅威ではない。
一番の脅威は――その数なのだ。
現在、〈御門大江戸〉内で確認できる《TYPE:D》の個体数は、確実に減ってはいるが、それでも数えきれないほどの個体が反応している。
先程の戦闘のように、必殺技を発動して一瞬で撃破し続ければ、事は容易に進む……のだが、現実はそう上手くいかない。
なぜなら、必殺技はポンポンと連発できず、使用後には制限機能が起動する仕組みになっているからだ。
(とにかく、今は一刻一秒が惜しい。ここで立ち止まっている時間はないな)
《海神》を前方に放り投げ、サーフボードに乗るかのように両足を乗せる。
次に、盾の裏側に埋め込まれたスイッチを、踏み込む。
それにより、《海神》から勢いよく水が噴出され、地上を滑るという形での高速移動を可能にする。
こうして龍雅は、次なる戦場へと、疾走していく。
〝異形の翼竜〟を、一刻も早く、討ち滅ぼすために――。
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命とは 剣を握れば いとも容易く壊せるのに
この両手で掬っても 指の隙間から零れ落ちてしまう
「ならば、せめて この手の中にある命だけは」と
流れを断ち切る刃で 一滴の祈りを護り抜く
(雨津星 龍雅)
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《紺碧応龍》
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<次回予告>
≪時を同じくして、朱音もまた、《TYPE:D》と対峙していた。≫
(……これは……かなーりマズい状況やな……)
(でも、悪いけどな……ウチは、こんなところで終われる人間じゃ、ないんよ)
次回――Episode 50 :【たとえ、窮地に追い込まれようと】




