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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第五章 | 【Fifth Story of the Babies : 《特殊兵装、見参》】

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Episode 48 :【相対する、翼竜と応龍】

 ――《TYPE(タイプ):DRAGON(ドラゴン)》。


 ファンタジーの物語や、ゲーム作品などで登場し、広く知られる怪物、ドラゴン。


 その翼竜を彷彿とさせる、巨大な翼と長い尾が特徴的な、《ヒューマネスト》の一種だ。


 その巨体は、優に10メートルを超え、強靭《きょうじん》な体躯から繰り出される攻撃は、高層ビルを積み木のように、いとも容易く崩してしまう。


 さらに、口腔内で生成され、大砲のように吐き出される火炎弾は、圧倒的な熱量と破壊力を兼ね備えた、恐ろしい武器だ。


 鱗に覆われた肉体の、その頑丈・強靭さもまた、《TYPE:D(ディー)》の厄介さの一つである。


 戦車に搭載された、120mm滑腔砲――人類が誇る陸戦兵器の主砲でさえ、できることはほんの一瞬だけ、怯ませることのみ。


 戦術ミサイルによる絨毯攻撃ですら、確実な撃破に至ることはなかった。


 そんな、たった一体の怪物に、数え切れぬほどの兵士が、無惨に殺されていった。


 まさに、《ヒューマネスト》の中で最強と言える、強靭無敵な翼竜。


 そんな《TYPE:D》が、

『〈御門(みかど)大江戸(おおえど)〉を防衛する電磁《でんじ》結界《けっかい》が、緊急メンテナンス中』

という一瞬の隙《すき》を衝《つ》き、住宅街へと侵入した。


 雨雲に覆われる空の下で鳴り響くのは、緊急避難のサイレンと、恐れ、涙する人々の悲鳴。


 安息を約束されていたはずの〈御門大江戸〉の住民達が、突然の来訪者の手によって、呆気なくその命を奪われていく。


 この事態に対処するべく、〈御門大江戸〉内を警邏《けいら》する〝治安《ちあん》維持型《いじがた》フレンド〟が、それぞれの装備を構え、各地に展開する。


〝駆除《くじょ》型〟は、最新式かつ高出力の科学兵器を、捕縛《ほばく》型は強力で頑丈な電磁ワイヤーを両腕に装備し、《TYPE:D》に立ち向かう。


 目的は、住民の避難と、特殊構成員達の到着までの、時間稼ぎ。


 一体、また一体と破壊されながらも、自分達が稼いだ時間が、より多くの命を救うと信じて、彼らは戦い続けている――。



 ――集中治療室を離れた龍雅《りゅうが》と朱音《あかね》は、それぞれ別の浮遊ワゴン車へと飛び乗り、《TYPE:D》の活動が特に活発な場所へと、急行する。


(っ……。すまない、みんな……あともう少しだけ、耐えてくれ……)


 車窓の向こう側で広がる景色に、龍雅は唇を強く噛み締め、渦巻く感情を押し殺す。


 ――ピロリロリ。ピロリロリ


 その道中、龍雅の《AS(アーマードシステム)・GP(ガラパゴスフォン)》から、軽快な着信音が鳴り響いた。


 その相手は、本日何度目かの通話となる、朱音であった。


『――なあ、リュウさん。ナッチャン、あれで納得してくれたんかな?』


「……どうだろうな」


 不安を含んだ朱音の声に、龍雅は短く答える。


 夏神《なつみ》は、意思が鋼のように強く、たった一言の忠告で大人しくなるタイプではない。


 内心、龍雅は、そう考えていた。


《2050(ニーゼロゴーゼロ・)DD(ディザスター・デイ)》の惨劇《さんげき》が起きる前、龍雅は、警視庁刑事課に所属する、優秀な警察官だった。


 その仕事柄、人と接する機会が人一倍多かった、龍雅。


 彼はその経験から「正義感や己の使命に駆られるあまり、自分の命を顧《かえり》みない傾向が強い」という、夏神が抱えている危険性を、見抜いていたのだ。


『あの子、間違いなく、大人しく引き下がっている柄じゃないやろ……?

 そんなこと言ってる場合じゃないって、分かってるんやけど、やっぱり心配やわ……』


 そう考えていたのは、どうやら朱音も同じだったようだ。


 その声色からは、仲間を想う優しさと、戦場に立つ者としての葛藤が、入り混じっていた。


 そんな彼女の心中を察しながらも、龍雅は短く息を吐き、口を開く。


「……君の気持ちは分かるが、いずれにしても、今は《TYPE:D》の迎撃が、先だ」


 自分を納得させるように呟く龍雅。


 その言葉に、朱音も『……せやね』と、静かに返した。



「――さて、行くか」


 目的地へと到着した龍雅は、電磁浮遊するワゴン車の高度を少しずつ下げていき、飛び降りるように着地する。


 張り詰めた空気が顔を切りつけ、硝煙《しょうえん》と金属の匂いが鼻を刺す。


 彼の目の前には、治安維持型の電磁ワイヤーで身動きを封じられている、《TYPE:D》の姿が。


 強靭で巨大な体躯《たいく》を守る、毒々しい色彩の鱗。


 引き裂かれた口元でチラついて見える、血の滴る鋭利な牙。


 そして、無数の目玉が埋め込まれ、妖《あや》しく動く巨大な翼……。


 まさに、異形の怪物という言葉が相応しい翼竜《ドラゴン》が、そこにいた。


(夏神君といえど、この《TYPE:D》が相手では、成す術もないだろう。

 夏神君が無謀《むぼう》な行動をしてしまう前に、そして何より人々の犠牲を最小限に抑えるために、今すぐに――撃破しなければ)


 一刻一秒を争う状況下、今の龍雅の最優先事項は――確実かつ迅速に、《TYPE:D》を撃破すること。


 だからこそ龍雅は、何ら躊躇《ちゅうちょ》することなく、《アーマードバックル》――《特殊(とくしゅ)兵装(へいそう)》を装着する際に必要な、長方形かつ金属製の道具を取り出し、構えた。


-----------

<次回予告>


【《紺碧(コンペキノ)応龍(オウリュウ)》――迸《ほとばし》る激龍《げきりゅう》を、我が剣《つるぎ》に。】


≪水色に輝く刃の大剣と、渦潮模様の巨大な盾を携え、科学技術で再現した〝アクアキネシス〟 (水を操る超能力)を駆使して戦う、激流の騎士。≫


【《狂瀾(きょうらん)怒濤(どとう)海龍斬(かいりゅうざん)》――発動。】


次回――Episode 49 :【悲劇を断ち斬る、激流の刃】


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