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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第三章 | 【Third Story of the Babies:《超常異能現象防衛機関・〈A.E.G.I.S〉》

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Episode 39 :【雷雨が去りて】

 ――〈A.E.G.I.S(イージス)〉の、イメージトレーニングルーム。


 立体映像《ホログラム》実体化《じったいか》技術《ぎじゅつ》によって再現された嵐が吹き荒れる、実戦を想定した訓練所。

 

 その空間を覆い尽くしてしまうような、一筋のレーザービームが照射された。


 その標的は、《雷轟(ライゴウ)麒麟(キリン)》を纏《まと》った男――鳴宮《なるみや》凛太郎《りんたろう》だ。


 だが凛太郎は、蹄《ひづめ》で地を踏みつけて雷撃を発生させ、同時に両腕をクロスさせて、防御の姿勢を取る。


 そうすることで、咄嗟《とっさ》にレーザーの威力を軽減させ、受けるダメージを最小限にしたのだ。


 しかし、それでもノーダメージとはいかず、両の籠手《こて》はひどく損傷し、熱波と煙が噴き出していた。


「……まさか、こんな必殺技を隠し持っていたとはな……。食えない少年だ」


 二つ折り式携帯電話――《AS(アーマードシステム)・GP(ガラパゴスフォン)》をバックルから取り出し、ガラスケースに挿入されたカードキーを引き抜くことで、《特殊兵装(とくしゅへいそう)》の装着を解除。


 そんな凛太郎が、意識を失って倒れている夏神《なつみ》に、称賛の言葉を贈る。


 それは、軽蔑や皮肉でもない、率直な評価だった。


 そのまま凛太郎は、使い古されたライターを取り出し、蓋をキンッと開ける。


 すると、先程まで吹き荒れていた嵐が、嘘のように、ピタリと止んだ。


 ――ガチャッ……。


 その直後、凛太郎の後頭部に、重たく冷たい鋼鉄の感触が伝う。


 銃身に炎の意匠《いしょう》をあしらった《特殊なライフル銃》が、押しあてられていたのだ。


 それを構えていたのは、鳳紫《ほむら》朱音《あかね》だった。


「……おいたが過ぎるで、リンリン。

 なんの罪もないナッチャンを、こない一方的に……」


「奴の服には、人一人を守るには過剰すぎるほどの、電磁結界《でんじけっかい》発生装置《はっせいそうち》が組み込まれていた。それぐらいの知恵は働くようだな。

 しかし、手加減している俺を相手にして、気絶しているようでは……やはりまだ、力不足と言わざるを得ないな」


 銃口を突き付けられているにも関わらず、凛太郎は煙草《タバコ》を1本取り出し、火を点ける。


「……装置が組み込まれていたからって……!

 ウチが言いたいのは、そういうことちゃう!」


 次の瞬間、凛太郎は銃口をその手で握り――わざと、自分の額に突き付ける。


 そして、朱音が息を呑む中、冷静に言葉を続ける。


「そう思うのなら、もっと早くこうするべきだったな。

 本当に俺が、この少年を殺そうとしていたとしたら――仲間に銃を向ける覚悟が、お前にはあったのか?」


 その鋭い眼差しが、真っ直ぐ朱音を射抜く。


 まるで、言葉以上に、朱音を糾弾しているかのようだった。


「その甘さが、お前の弱さだ。自分でもそう思わないか、鳳紫」


「……アンタのそういうとこ、ホンマ……大嫌いやわ」


 朱音は苦々しい表情を浮かべ、どこか観念したかのように、ライフルの銃口を下げる。


 そんな朱音に対して、凛太郎は何を感じるわけでもなく、平然と紫煙《しえん》を吐く。


 火花が散るような空気。


 だがそれは、一触即発の緊張か、それともただの〝家族喧嘩〟か。


 そんな両者の空気に、夏神の容態を確認していた雨津星《あまつぼし》龍雅《りゅうが》が、声を上げた。


「二人とも、今は揉めている場合じゃない! 

 一刻も早く、夏神君を病院に――」


「その必要はないだろう。

 ここには、そこらの病院より、高度な治療施設がある。……違うか?」


 相変わらず無機質な声色《こわいろ》の、凛太郎の言葉。


 そんな何気ない言葉に、龍雅と朱音は、驚きを隠し切れなかった。


 凛太郎の言葉通り、〈A.E.G.I.S〉の治療施設は、最新鋭の医療器具が導入されている。


 しかしそこは、特殊構成員しか、入室や使用を許可されていない場所なのである。


 だからこそ、凛太郎のその言葉が、何を意味するのか……それを、2人は理解したのだ。


「その言葉……! 夏神君の加入を、認めてくれるんだな!」


「認めざるを得ないだろう。

『一発でも当てたら認めてやる』、その条件を提示したのは、この俺だ」


「それなら話は早い! 君も、夏神君の手当を手伝って――」


「断る。ここから先は、俺の管轄外だ」


「なっ……」


 動揺する龍雅と朱音を前に、凛太郎はなおも冷酷な口調で続ける。


「心配しなくとも、その少年は、生死を彷徨《さまよ》うような重症ではない。直接戦った俺が言うことだから、間違いはない。

 故《ゆえ》に、緊急を要する案件ではないので、俺はこれで失礼させてもらう」


 そう言い終えると、凛太郎は何食わぬ顔で、その場を去っていった。


「なんやあいつ……! 血も涙もないんか、ホンマ……!」


「文句は後にしよう!

 俺はまず上に行って、ガブリエル様に、今回の件を報告しなければならない!

 その間に君は――」


「『ナッチャンを治療室に運んでほしい』、やろ? 分かっとるで!」


「ああ、その通りだ! 君の察しの良さには、いつも助けられる!」



 朱音との阿吽《あうん》の呼吸を見せた後、龍雅は、雨と血で濡《ぬ》れた夏神の顔に手を添える。


「よく頑張ったな、夏神君。もう君は、正真正銘、俺達の仲間だ。

 痛い思いをさせて、すまない。しばらくの間、ゆっくり休んでくれ」


 そして、辛うじてか細い呼吸をしている夏神に向けて、笑みを浮かべる。


 それは、〈A.E.G.I.S〉の主任としてではなく、一人の大人としての、優しい眼差しを秘めたものだった――。


----------


 放たれたその一撃は 轟《とどろ》く落雷の如く

 何より光速《はや》く 何より強く 全てを貫く


 誰に何を言われようと 構わない

 敵に刻み込む その軌跡《きずあと》こそが 

 確かに俺が歩んできた 歴史の証明


(鳴宮(なるみや) 凛太郎(りんたろう))


----------

<次章&次回予告>


「――ガブリエル様!

 ご報告したいことがあり、ただいま参上いたしました!」


『うるッッさいわねッ!! アナタの声は、いちいち耳障りなのよ!!』


『……それで? 結局のところ、アナタの要件は何なのよ』


次章――【Forth Story of the Babies:《我等、人類を守る盾となり》】


次回――Episode 40 :【〝大天使様〟の御前】


-----------


 第三章、完結!


 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


 物語を最後まで見届けてもらえたこと、心から感謝しています!


 もし少しでも心に残ったものがあれば、

一言だけでもレビューや応援コメントをもらえたら、とても励みになります!


 それでは、また次の章で、お会いしましょう!


 「【T.F.B】の物語が、あなたの人生に、小さな輝きを届けられますように!」


----------


 PS. 本作のキャラや世界観を表現するイメージソングやPVなどを、YouTubeで公開しています。

 物語をもっと楽しみたいな、と思っていただけた方は、もしよければ、そっと覗いてみてくださいね!


 Youtubeにて、

 「トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ」

 ……と、検索してみてくださいね!

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