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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第三章 | 【Third Story of the Babies:《超常異能現象防衛機関・〈A.E.G.I.S〉》

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Episode 38 :【《特殊兵装》、《雷轟麒麟》】

挿絵(By みてみん)


《雷轟(ライゴウ)麒麟(キリン)》

「――――なっ……!!?

 な、なんだ、その姿は……!!?」


 閃光が弱まり、視界が戻った瞬間――俺は目を疑った。


 なぜなら、鳴宮《なるみや》が――稲妻の意匠《いしょう》が刻まれた、漆黒《しっこく》の鎧《よろい》を纏《まと》った姿へと、変身していたからだ。


「電子を自在に操る超能力、〝ヴォルトキネシス〟。

 その力を、《異能生命体(ヒューマネスト)》との戦闘に最適化するまで、昇華したのが――《雷轟(ライゴウ)麒麟(キリン)》。

 最新鋭の科学技術が生んだ、俺専用の《特殊(とくしゅ)環境(かんきょう)適応(てきおう)兵装(へいそう)》だ」


 淡々と告げる鳴宮の、その感情の宿らぬ瞳は、鎧《よろい》越しに俺を一直線に射抜いている。


「……さあ、少年。

 貴様の覚悟と、持ち得る力の全てを、俺にぶつけてみせろ。

 でなければ――死ぬぞ?」


 ――ドゴォオオオオンッ!!!


 順次に姿を消した鳴宮の、その重く速い飛び蹴りが、俺の腹部に炸裂する。


 内臓が潰れるような激痛。


 そのまま俺は、悲鳴や呻き声を上げることもできず、蹴り飛ばされた。


「ナッチャン!!」

「待て、朱音《あかね》君!! 君も巻き込まれるぞ!!」

「で、でも……!!」


 ――カツゥンッ!!


 鳴宮が鋼鉄の蹄《ひづめ》で地面を踏みつけると、バチバチィという轟音《ごうおん》と共に、雷撃が発生。


 それが濡れた地面を伝って、俺に追い討ちを掛けた。


「ぐあああああああああああああっ!!!」


 全身を走る激痛に、断末魔《だんまつま》の如き叫びを上げる。


 だが、暴風雨によって、それは簡単に掻《か》き消《け》されてしまった。


「リュウさん!!

 このままじゃあの子、ホンマに死んでまう!!」

「くっ……! 止むを得ない!!」


 霞《かす》む視界の先、鳴宮のものと酷似したバックルを取り出し、装着する雨津星《あまつぼし》さんが見えた。


 間違いなく、俺を助けるためだろう。


 ――だが。


「手を、出さないでください!!」


 俺はそんな雨津星さんを、敢《あ》えて拒絶した。


 嵐と緊張が吹き荒れる中、崩れそうな身体を無理矢理立たせ、震える両足に力を込める。


「俺は……俺はッ、この世界を変えるために、ここへ来た!! 

 あなたに助けてもらうぐらいなら――刺し違えてでも、この男に認めさせる!! 

 それぐらいの覚悟がなければ……俺は、英雄になんてなれないんだ!!」


 ――鳴宮の言っていた通りだ。


 俺は心のどこかで、自分のことを過信していた。


 巨大蜂《きょだいばち》の《ネスト》を単独で撃破した実績に、驕《おご》っていた。


 だけど、それはただ――《HERO(ヒーロー)》という強力な武器を持っていたからにすぎない。


 俺はまだ、斎賀《さいが》先生に託された力を持っているだけの、ただの子供だ。


 そして、今度は雨津星さんに、情けをかけられ、助けてもらおうとしている。


 それでは、虎の威を借る狐と、何が違うというんだ。


 今の俺に必要なのは、借り物の力でも、情けや慈悲でもない。


 『この不条理な世界を変えてみせる』という、強き信念だ。


 それを以《も》って、鳴宮という強敵を、乗り越えてみせる。


 そうでなければ、雨津星さんや鳳紫《ほむら》さんの隣に立つ資格なんて、ない――!!


 俺は闘志だけで、すでに限界を迎えている身体を動かし、体勢を整える。


 そして、《HERO》を構え、レーザーを乱射した。


 ただ闇雲にではなく、冷静かつ正確に、様々な行動パターンを読みながら。


 だが、掠りもしない。


 鳴宮は、まさに稲妻の如き瞬間移動で、それら全てを回避していたのだ。


「遅い」


 ――ドゴオオオッ!!


 急接近した鳴宮の回し蹴りが、脇腹に炸裂する。


 ……だが、痛みはなかった。


 正確には――脳が、痛覚の処理を放棄していたのだ。


 地面を転がる時に跳ねる雨水の冷たさすら、今の俺は、もうすでに感じ取れなくなっていた。


「……ゴチャゴチャと、大言壮語《たいげんそうご》を並べたかと思えば、結局はその程度か?

 俺に一発も当てられない程度の力量で、《ネスト》を相手するつもりだったのか?

 思い上がりも、ここまで来ると賞賛に値するな」


 鳴宮が、俺を見下し、淡々と侮辱《ぶじょく》の言葉を吐き捨てる。


 しかし、今の俺には、生意気な台詞《せりふ》を返す力も残っていない。ただ虚《うつ》ろに、濡れた地面を見つめるだけだ。


 鳴宮は、そんな俺にトドメを刺さんと、爪先が天を向くほど大きく片足を上げる。


「精々、あの世で両親に慰《なぐさ》めてもらえ」


 そして、感情のない声で、死刑宣告を無感情に下した――。


 ――やはり、思った通りだ。


 俺を蹴り飛ばした後、奴は必ず〝踏み付け雷撃〟でトドメを刺しに来ると思っていた。


 いくら高圧的に振る舞っていようと、鳴宮は、俺の《HERO》を警戒している。


 照準が合いさえすれば、確実に命中する光線銃(レーザーガン)は、奴にとって脅威なんだ。


 そして、今の鳴宮は、完全に油断している。


 もう俺に成す術などないと高《たか》を括《くく》り、先程よりも大きく足を上げているのが、その証拠だ。


 それはつまり、鳴宮は――自分から、唯一の隙《すき》を作ったということだ。


 鳴宮が地面を踏みつけるよりも先に、俺は《超新星(スーパーノヴァ)》モードを起動。


 残された力を全て振り絞り、奴に照準を定める。


 そして、引き金を――力強く引いた。


【SUPER NOVA.】


 ――バシュゥウウウウウウウウッ!!!


「何っ……!?」


《HERO》の銃口から迸(ほとばし)るレーザービームが、兵装越しの鳴宮の顔を、驚愕に染めた――。



 ――その瞬間の光景は、確かに俺の目に焼き付いている。


 しかし次の瞬間、視界がブラックアウトした。


 満身《まんしん》創痍《そうい》の身体では、とても《超新星》の反動に耐え切れなかったのだ。


 その後、放たれたレーザーは、奴に命中したのか。


 それともあっさり避けられたのか――それすらも、分からない。


 今はただ、消えゆく意識の中で、願う。


 もう一度、目を覚ませることを――。


----------


《次回予告》


「……まさか、こんな必殺技を隠し持っていたとはな……。食えない少年だ」

「……おいたが過ぎるで、リンリン。

 なんの罪もないナッチャンを、こない一方的に……」

「その必要はないだろう。

 ここには、そこらの病院より、高度な治療施設がある。……違うか?」


次回――Episode 39 :【雷雨が去りて】

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