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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第三章 | 【Third Story of the Babies:《超常異能現象防衛機関・〈A.E.G.I.S〉》

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Episode 34 :【辿り着いた目的地】

 ――空中道路を駆け抜けた果てに、ついに俺は〈A.E.G.I.S(イージス)〉の本部へと辿り着いた。


 そこは、政府直属という肩書に恥じない、巨大かつ豪華な外観の摩天楼(まてんろう)。


 戦闘組織の本拠地と言うよりかは、超高級ホテルを彷彿とさせる、威圧感と美しさを放つその姿に、思わず息を呑む。


 屋上の専用ヘリポートに着陸した浮遊車から飛び降り、そのまま雨津星《あまつぼし》さんと鳳紫《ほむら》さんの後をついて、建物の中へと踏み入れた。


「せっかくだから、我らが本拠地を案内しようか!」


 雨津星さんのその一言を合図に、〈A.E.G.I.S〉内の観光ツアーが始まった。


 それは〈御門(みかど)大江戸(おおえど)〉を見た時とは、また違った意味で、衝撃を受けるものだった。


 まず、本部に導入されている、最新式エレベーターの性能だ。


 扉が閉じたかと思えば、一瞬の内に目的の階へ。まるで瞬間移動だ。


 それでいて、乗り心地は驚くほどスムーズだった。


 内装もまた、外観に負けず豪華だ。


 しかし、無駄に煌《きら》びやかなわけではなく、どこか落ち着きと品のある、〝静かな贅沢〟に包まれていた。


 さらに、各特殊構成員の待機室は、さながらスイートルームのように広々としたもの。


 専用の浴室に至っては、貸切温泉のようにくつろげる、解放的な空間になっている。


「……まるで、VIP《ヴイアイピー》並みの待遇ですね……」


 思わず漏れた俺の言葉に、鳳紫さんが苦笑いを浮かべる。


「まーでも、これぐらいの見返りがないと、ウチらの仕事はやってられへんからなー。贅沢させてもろうてますで」


 言葉の調子は軽いのに、その声色からは、どこか後ろめたさが滲んでいた。


 察するに、自分達だけが特別扱いされていることに、葛藤を抱いているのだろうか。


 確かに、普通に考えれば、不自然なまでの好待遇だ。


 しかし、「《ヒューマネスト》という怪物と戦う組織の一員」なのだから、命の危険に対する対価と考えれば、納得できる話ではある。


 ……とはいえ、〈アフターエリア〉での生活水準を知っている身としては、手放しで喜ぶ気にはなれなかった。



 ――そうして本部を歩いていて、ふと気づいたことがある。


 雨津星さんと鳳紫さん以外の人間と、一度も出会っていないのだ。


 構成員であろう〝機械人形(フレンド)〟は、多種多様の型《タイプ》があちこち稼働しているというのに、2人以外の人間は、影も形も見当たらない。


 そのことを疑問に思い、雨津星さんに尋ねてみる。


「……ああ、それについてか。


 〈A.E.G.I.S〉に所属する人間は、現在では、俺と朱音君を含めた、4人しかいない。

 それ以外は、全てフレンドだ」


 淡々と語る雨津星さんの声には、どこか寂しげな感情が混じっていた。


「組織の方針として、人員の追加申請もしていない。

 ここは文字通り、命懸けの職場だからな。気軽に募集するわけにもいかないさ。

 だからこそ、我々は〝特殊構成員〟として扱われている、ということだ」


 ――「《《現在では》》」。


 その言葉が、胸に引っ掛かった。


 きっと以前は、もっと多くの仲間がいたのだろう。


 彼らがどんな過去を歩んできたのか……それは、想像に難《かた》くなかった。


 だからこそ、俺はそれ以上は、踏み込まなかった。


 それ以上聞くことは、過去の傷に触れてしまうと思ったからだ。


「んまあ、要するにやな」


 重くなりかけた空気を払うように、鳳紫さんが笑いながら、俺の肩に手を回してくる。


「そんな厳し~い審美眼をお持ちのリュウさんが、わざわざ自分からスカウトするくらい、君は期待されてるってコト!」


 そう笑った鳳紫さんだったが、すぐに表情を曇らせる。


「……まあ、今の話を聞いた直後に言われても、ちっとも喜べへんかもやけど、ね……。

 要は、期待されてる分だけ、前線に駆り出される可能性も、高いってことやし……。

 ホンマ、君みたいな若い子に縋《すが》らなアカンくらい、情けなくてカッコ悪い大人で、ごめんな……」

「……いえ。元々そのつもりで、雨津星さんのお話を、受けたわけですから……。

 むしろ、これまで死に物狂いで積み上げてきた努力を、そうやって認めてもらえることの方が……正直嬉しいんです」


 俺の返事に、鳳紫さんは驚いたように目を丸くし、それから安堵の色を浮かべた。


 ……けれど、その笑顔は、どこかぎこちないものだった。


 彼女は自分のことを「情けなくてカッコ悪い」と言っていたが、俺はむしろ逆だと思っている。


 《ヒューマネスト(あの怪物)》と、直接戦ったことのある俺だからこそ、人々の自由と平和のために、命を賭《と》す覚悟で戦える――そんな彼らのことは、純粋に尊敬し、信頼できる相手だと、そう言い切れる。


 ……まあ実際には、初対面でいきなり《HERO》を突き付ける、なんて無礼を働いてしまったんだけどな。


 その件は、今後も反省しなければいけないな。改めて、そう思った。


 -----------


<次回予告>


「……あの。本当に、ここで合ってるんですか?」


「おや? 凛太郎《りんたろう》君。君は今日、半休のはずでは?」


「『出会ったばかりの少年を、新たな特殊構成員として、〈A.E.G.I.S〉に引き入れることになった』……。

 そんな報《しら》せを受けて、無関心・無警戒でいられるほど、俺は愚かじゃない」


次回――Episode 35 :【紫煙(しえん)と共に現れた男】

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