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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第三章 | 【Third Story of the Babies:《超常異能現象防衛機関・〈A.E.G.I.S〉》

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Episode 32 :【英雄への序章】

「あはは……にしても、『世界を変える』……とは、なかなか大きく出たもんやね~。

 具体的には、どういうプランをお持ちなん?

 あ、これはウチの個人的な興味やから、無理に話すことはないけど……」


「……いや……同じ組織に所属《しょぞく》するのなら、いずれは早い段階で、話しておくべきことだとは、俺も思っていたので……」


 ――鳳紫《ほむら》さんの、その飾らない人柄の影響、だろうか。


 気付けば俺は、少しずつ、自分の目標を語り始めた。


『この世界を、根底から覆《くつがえ》す』という、大それた目的を、如何様《いかよう》にして果たそうとしているのか。


 まずは、俺自(みずか)らの戦闘的優位性を証明する。


 そして、それをアピールポイントにして、〝《ヒューマネスト》の撃退《げきたい》や鎮圧《ちんあつ》〟が主目的の組織に、売り込みを掛《か》ける。


 それが、最初の目標だったからだ。


 だからこうして、雨津星《あまつぼし》さんを通して、〈A.E.G.I.S(イージス)〉という組織に加入する――その前段階まで来た時点で、目標はすでに達成できたと言ってもいいだろう。


 あとは〈A.E.G.I.S〉で、できる限り短期間のうちに、『《ヒューマネスト》を撃退・鎮圧し、〈御門(みかど)大江戸(おおえど)〉の治安維持に貢献した』という功績を残していく。


 そうすれば、俺に対する評価は、着実に上がっていき、次第に俺という存在を無視できなくなっていく。


 その、揺るぎようのない地位を手に入れてこそ、初めて、『〝〈アフターエリア〉の環境改善〟や、〝トガビト(〈アフターエリア〉に住むことを強《し》いられた人間)の生活支援の、さらなる充実化〟』……という、俺の意見や主義主張を、相手に承諾させられるようになる。


 だからこそ俺は、『単槍匹馬《たんそうひつば》で《怪物(ヒューマネスト)》を撃破した』という、確固たる宣伝材料を手に入れられるように、斎賀(さいが)先生の力を借りて、己を鍛え上げ続けていた――。


 そんな道筋を、俺は自分なりに、必死に考えてきた。


「――自分でも、浅慮《せんりょ》で無謀《むぼう》な……行き当たりばったりな計画であることは、自覚しています。

 それに、〝世界を変える〟なんて大層なことを言ったって、子供一人ができることなんて、所詮《しょせん》は高《たか》が知れているということも……。

 それでも……何も行動しない言い訳だけは、したくないって……そう言い聞かせて、今日まで生きてきました」


「……そうだったんやね……ごめんね、さっきは茶化すような言い方してもうて……」


 鳳紫さんの口調が、少しだけ柔らかくなった。


「ウチは、キミのその覚悟と、それを実際に行動に移せるパワーを、笑ったりなんかしないよ。

 むしろ、君みたいな若い子に、そこまでの重荷を背負わせ続けていた……そんな、情けない大人でしかない自分を、恥じるばかりやわ……」


「ああ……君の痛いくらい真っ直ぐな瞳は、自分の汚い部分を見透かされているようで、思わず身が引き締まる。

 大人になると、先送り主義というタチの悪い病気を、拗《こじ》らせたまま生きてしまうからな」


 雨津星さんが苦々しい表情と声色のまま、ぎこちなく笑う。


 それにつられるように、運転席の鳳紫さんも苦笑する。


 しかし次の瞬間、雨津星さんは真剣な顔つきと目つきで、俺の顔を真正面に見据《みす》える。


「だからこそ、気が早い話かもしれないが……君が本気で、少しでもこの世界を変えていくというのなら、俺は最大限尽力(じんりょく)するつもりだ。

 そして、君が世界を救う英雄となるその日まで、全力を掛けて、君を支えると誓う。

 これは、今まで見て見ぬふりをし続けてきた、俺なりの……せめてものケジメだ」


 そう力強く宣言する雨津星さん。


 そんな彼に、俺は次第に――《《戸惑いを覚える》》。


 雨津星さんの言葉が、嫌だったわけじゃない。


 むしろ、彼にそう言ってもらえて、どこか安心した気持ちになれた自分がいる。


 しかしそれでも、心中に渦巻く戸惑いや疑問を、払拭《ふっしょく》できない。


 その理由は――。


「……どうして……まだ出会って間もない、俺のために、そこまで……」


 思わず口に出してしまった言葉を、今度は鳳紫さんが、ニカッと快活な笑みを浮かべて、答える。


「ナッチャン。人が人を好きになったり、信じたりするのに、理由や時間の長さなんて、関係ないもんやで?」


 鳳紫さんが、そのまま優しい声色で、言葉を続ける。


「事実、ウチはキミのこと、すでにちょっと気に入ってるもん。

 キミみたいな真面目くんは、年上のお姉さんに、結構モテるもんなんやで~?」


 ……あまりに真っ直ぐな言葉に、なんて返せばいいのか、分からない。


 だから俺は、「……ありがとう、ございます」と、可愛くない返事の後に、そっぽを向く。


 そして再び、窓の景色を眺めていた――。


「――!! あいつは……!!」


 その時だった。


 午前10時を知らせる時報のメロディが流れたかと思えば、高層ビルのあちこちに表示されている電子パネルが突然、同じ映像に切り替わる。


 俺は、その映像に映し出された人物を見て、思わず息を呑む。


 宝飾品とステンドグラスで作られたような、禍々《まがまが》しい鎧《よろい》姿《すがた》。


 見間違えるはずがない。あの〝鎧野郎〟は、間違いなく……!!


----------

<次回予告>


『さあ、今日も一日、頑張りましょう!

 これすなわち、努力は報われ、いずれ花咲く!』


≪……何が……何が、「努力は報われ、いずれ花咲く」だ。≫


「……あの鎧野郎。あいつは、いったい何者ですか?」


次回――Episode 33 :【彼の者に蘇る、義憤《いかり》】


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