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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第三章 | 【Third Story of the Babies:《超常異能現象防衛機関・〈A.E.G.I.S〉》

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Episode 31 :【紅一点、鳳紫朱音、参上】

 ――「迎えが来るまで、しばらく待ってもらえないか」。


 雨津星(あまつぼし)さんにそう言われたので、俺は〈狭間(はざま)交信局(こうしんきょく)〉の入り口前で、雨宿りをすることに。


 その間、せっかくだからと、俺は雨津星さんに、一つ質問をすることにした。


「俺は今後、〈A.E.G.I.S(イージス)〉の特殊構成員として、どう動けばいいのでしょうか?」


「長期的には、抑制薬の服用と定期検査が、メインになるかな。

 だが、有事の際には、戦力として活躍してもらうかもしれない。

 その判断は、主任の俺が、その都度 決める。君の実力を判断した上で、な」


「……貴重な被験体だから、みすみす死なせたくはない……ってことですか?」


 ……我ながら、意地の悪い質問だと思う。


 実際、雨津星さんは驚き、苦笑する。


 だが、すぐにその表情は、真っ直ぐで信念のあるものへと変わる。


「君は、『生きること』に意味がある存在だ。何も、怪物をたくさん倒すことだけが、活躍じゃないさ。

 然るべき時が来たら、君も貴重な一戦力として、頼りにする。

 だから、それまでは、まだ大人に守られる子供でいてほしい」


 屈託のない笑顔でそう言われてしまえば、もう俺から言うことはない。


 俺は渋々、「……分かりました」と頷いた。


 ――そうやって待っていること、十数分。


 電磁浮遊式のワゴン車が、上空から音もなく接近してきた。


 青白いライトを地面に落としながら、静かに着陸する。


「お待たせ~!

 いやいやー、すんまへんなぁ、待たせてしもうて!」


 車窓が下がり、赤い髪をシュシュでまとめた女性が、ひょいと顔を出す。


 髪色と同じくらい鮮やかな朱色と、その整った顔立ちは、雨に濡れる景色の中でも、とてもよく映えるものだった。


「おっ! キミが例の、新入り候補くんやな! よろしゅう!」


 彼女が俺に向かって、グイッと手を差し出してくる。


 戸惑いながらも握手に応じると、その手は思ったよりも熱く、分厚いものだった。


「おおっ! 結構鍛えてる、ええ手やんか! よろしいよろしい!」


 何やらご機嫌な様子で、俺の手を握ったままブンブンと振りながら笑う彼女。


 結んだ髪がぴょこぴょこと揺れ、その度に朱色の光がちらちらと踊るのが、妙に目に残った。


(……この人が、迎えってことか)


 女性に疎(うと)い俺ですら、彼女が、外見も性格も〝華やかなタイプ〟だということは、すぐに分かる。


 だが、俺の率直な感想は……『その割に、中身はオッサン臭い』、だ。


 違和感のある関西弁もそうだが、俺の手を握る右腕が、アスリートのように筋肉質なので、余計にそう思う。


「うん! 素直に謝る、その潔《いさぎよ》さ良し! 

 だが、客人を待たせるのは、あまり感心しないな!」


「いやー、〈A.E.G.I.S(イージス)〉以外の人間と会うんやから、もうメイクも『水商売かいな』ってくらい、張り切りたくなるってもんやろ!

 《《リュウさん》》は、乙女心を分かってへんな~」


 ……そう言っている割には、そこまで濃い化粧には見えないが。


「そういうものだろうか? 

 おっと、紹介がまだだったな。

 夏神(なつみ)君。彼女こそ、〈A.E.G.I.S〉の紅一点! 鳳紫《ほむら》朱音《あかね》君だ!」


「おいっす! 鳳紫朱音です!

 年上だからとか気にせず、仲良うしてーな♪」


「……こちらこそ、よろしくお願いします。鳳紫さん」


 雨津星さんに勝るとも劣らない、快活な笑顔。親しみやすさも抜群。


 ……だけど、あまりに距離感が近くて、少し戸惑う。


 そんな彼女――鳳紫朱音さんへの軽い挨拶を済ませた俺は、彼女が操縦する浮遊ワゴン車に同乗した。


 ――フウィーッ……。


 機体は静かに浮かび上がり、都市の空中道路を滑るように、目的地へと進み始める。


 雨粒がぶつかる音が車内に響く中、車窓に映る街のネオンが、濡れた窓越しに、鳳紫さんの横顔を照らし出す。


「――にしても、今日は雨、ひどいなぁ。ちょっと前に、一回止んだのが、ウソみたいやね~。

 まあでも、雨の中のドライブって、なんかロマンチックやない?♪」


「浸るのは構わないが……運転には注意してくれよ?

 君の腕は、俺が保証しているが……」


「ふふん♪ 今日は大事な客人くんを乗せとるからね~。

 朱音ちゃんタクシーは、いつも以上に張り切っておりますよ!♪」


「ハハハッ! それはよかった!

 ……あっと、夏神君? 俺はいつも、彼女を運転手代わりにしているわけではないからな? たまたまだからな?」


 道中、そうやって雨津星さんと鳳紫さんが談笑する中で、俺は景色を眺めていた。


 ……正直、会話に入るタイミングが掴めない。


 できるとしたら、本当に短い相槌だけだ。


「そういや、夏神くん……やったっけ?

 せっかくやし、《《ナッチャン》》って呼んでもええ? 

 そんで、君はなんで、〈御門大江戸(こんなところ)〉に来たん?」


「えっ? あ、いや……」


 突然に話題を振られるが、咄嗟《とっさ》に反応できなかった。


「世界を変える、という目的のためだ!

 なんでも、〝世界を浄化する地獄の花〟……? とかいうのを名乗っているらしい!」


 そんな俺の事情を察したからなのか、雨津星さんが代弁者を務めてくれた。


 ……だが、最後の一文まで加えてしまうと、俺がとてつもなく痛い奴だと、彼女に思われかねない気が……。


 内容自体は、特に間違ってるわけでもないので、口出しするのも憚(はばか)れるし……。


「……へ、へー。最近の子は、えらいスケールでかいなぁ……」


 実際、バックミラー越しに見える鳳紫さんの表情は、分かりやすすぎるくらい引(ひ)き攣(つ)っていた。


「こらっ、朱音君! 茶化すのはよくないぞ!

 確かに妙な言い回しだが、良いじゃないか!

 頑張って考えたんだろう? 凄いぞ、夏神君!」


「……ありがとうございます」


 ……雨津星さんなりに、擁護(ようご)してくれているのは、分かる。


 だが、絶妙に嬉しくない。


 〝ありがた迷惑〟という言葉を辞書で引いたら、多分この状況が載っていると思う。


(……〈A.E.G.I.S〉って組織の人間は、みんなこんな感じなのか?)


 ちょっとだけ、この先の未来が、不安になった。


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挿絵(By みてみん)

(鳳紫(ほむら) 朱音(あかね))


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<次回予告>


「にしても、『世界を変える』……とは、なかなか大きく出たもんやね~。

具体的には、どういうプランをお持ちなん?」


≪気付けば俺は、少しずつ、自分の目標を語り始めた。≫


≪『この世界を、根底から覆《くつがえ》す』という、大それた目的を、如何様《いかよう》にして果たそうとしているのか。≫


次回――Episode 32 :【英雄への序章】


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