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2050年、人類崩壊。絶望郷と化した世界に抗う、少年達の物語――。【トゥエンティー・フィフティー・ベイビーズ】(近未来SF × ダークファンタジー)  作者: (冬ω冬)Win Poli(╹冬╹)
第三章 | 【Third Story of the Babies:《超常異能現象防衛機関・〈A.E.G.I.S〉》

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Episode 23 :【運命の地、〈狭間交信局〉】

(――ここが、〈狭間(はざま)交信局(こうしんきょく)〉……か)


 俺は、ついに辿り着いた。


 〈アフターエリア〉と〈御門(みかど)大江戸(おおえど)〉を隔絶(かくぜつ)する境界線――〈狭間交信局〉に。


 目の前に聳(そび)え立(た)つのは、ハニカム構造を持つ、わずかな隙(すき)もない電磁結界(でんじけっかい)に覆《おお》われた、巨大な鋼鉄の壁。


 それは、爪先立ちをしても、頂上など見えやしない。


 まるで、空に突き刺さる鉄《くろがね》の城だ。


「……っ……」


 込み上げる怒りを押し殺せず、思わず拳を強く握り締める。爪が手のひらに喰い込み、痛みが滲(にじ)む。


 昔、俺と母さんが〈御門大江戸〉の避難施設で暮らしていた頃には、こんな鋼鉄の壁はなかった。


 そもそも、すでに展開されていた電磁結界だけでも、充分(じゅうぶん)に防衛力はある。


 だから、こんな物理的な壁をわざわざ築く意味など、本来ならまったくないはずだ。


 ……きっとこの壁は、〝守るため〟のものじゃない。


 これは、〈アフターエリア〉で生きることを強(し)いられた、俺達〝トガビト〟を――ただ拒絶(きょぜつ)するためだけに造られたものなのだろう。


 邪推(じゃすい)かもしれないが、そう考えるのが、一番腑に落ちる。


 ……ふざけるな。


 こんな無駄なものを造る時間と労力があるのなら、もっと多くの人を救えたはずだ。


 なのにお前らは、どうしてそうしなかった?


 俺達には、救われる価値すらないとでも言いたいのか? 


『――警告。警告。

 それ以上の接近は、許可されていません』


 境界線――そこには血文字のように刻まれた文字がある。


『人間以下ノ存在、立チ入リヲ禁ズ』。


 赤く滲んだその文字を踏み越えた瞬間、機械的な警告が響いた。


 おそらくは〝フレンド〟――それも、治安維持型による言葉だろう。


 ふと視線を上げると、巨大な鉄の壁に組み込まれている監視カメラが、俺の一挙一動を捉えている様子だった。


「ここに来れば、〈御門大江戸〉に入国する権利が貰えると、聞いたんだが」


『〝トガビト〟である貴方(あなた)に、入国の権利はありません。

 速やかに退去してください』


 予想通りの応答。


 しかし、俺は一歩も引かず、真っ向から反抗してみせる。


「悪いが、俺はここで引くわけにはいかない。押し通らせてもらうぞ」


『速やかに退去してください。

 命令に従わない場合、処罰の対象となります』


「……取り合う気もないのか?

 そうやってお前らは、何も考えず、邪魔なものを排除し続けるのか。

 最近のフレンドは、昔よりAIの思考力が劣化しているみたいだな」


『黙れ! 貴様のようなゴミクズなど、まともに取り合う価値もない!

 即刻立ち去らなければ、貴様を二度と歩けない身体にしてやる!』


 俺の批判が、逆鱗に触れたのか。


 抑揚のない口調や声色は消え、代わりに怒鳴るような粗暴な言葉に変わる。


 「そういう風に学習・改造されているだけ」だとしても、機械にここまでの言葉を言われるのは、あまりいい気分ではない。


「……埒(らち)が明かないな」


 俺は〝Future-Phone〟を掲げ、壁の向こう側にいるであろう相手に向けて、言葉を続ける。


「この中には、俺が《ヒューマネスト》を撃破した映像が、録画されている。それも、単騎《たんき》かつ生身で撃破したものだ。

 少々特殊な拳銃(ぶき)は使ったが、それでもあの怪物を倒せた人間なんて、俺以外にいないはずだ」


 少し誇張した言い方だが、事実に近い。


 だからだろうか。その発言を聞いた途端、監視側のフレンドが、明らかに動揺した。


『……デタラメを言うな。

 《ヒューマネスト》は、我々治安維持型が複数体であたっても、制圧困難な対象だ。

 そんな怪物を、貴様ごときが……!』


「デタラメかどうかは、この動画を見てからにしてほしいが」


 軽く言い返すと、監視カメラの向こうで、ざわめきが起こる。


 機械越しでもわかるほどの、動揺。まるで生身の人間のように慌てふためいていた。



 ……しかし、まさかそのまま、何十分も放置されるとは思わなかった。


 いつしか再び降り出した雨は止まず、身体が芯から冷えていく。


 警告音が無駄に大音量で響き続けているせいで、イライラは募る一方だ。


 いい加減に、我慢の限界だ。


「……ッ! おい! いつまで待たせる気だ!」


 堪忍袋の緒が切れた俺は、監視カメラに向かって、怒号を上げる。


 しかし次の瞬間――。


『ハハハッ! ずいぶんと威勢がいいじゃないか! 若さと活力を感じるぞ!』


 応答してきた声が、これまでの機械音声とは、ガラリと変わっていた。


 声の特徴から察するに、20代後半くらいの若い男だと思われる。


『この度は、うちの治安維持型が無礼を働いたようで、本当に申し訳ない!

 彼らの人格AIは、俺如きの管理IDでは修正できなくてね。スペックは確かだから、そんな彼らに頼らざるを得ないんだが……』


 饒舌に語るその声は、良く言えば元気ハツラツだが……悪く言うと、物凄くうるさい。


『おっと、関係ない話をしすぎたな。

 ともかく、お詫びとして、とりあえず〈狭間交信局〉への立ち入りを許可しよう!』


 その言葉の数分後――電磁結界に一人分の隙間《すきま》が生まれ、鋼鉄の壁が、まるで自動ドアのように開かれる。


 こうして俺は、ようやく〈狭間交信局〉の内部へと、足を踏み入れたのだった。


---------

<次回予告>


「ようこそ、〈狭間交信局〉へ!

 ……と言っても、俺はここの人間じゃないがな!」


「俺は雨津星(あまつぼし)龍雅(りゅうが)!

 〈A.E.G.I.S(イージス)〉という組織の、主任を任されている!」


「君のような逸材を、放っておく手はない!

 早速、〝特殊(とくしゅ)構成員(こうせいいん)〟として、契約を――」


次回――Episode 24 :【〝雨津星龍雅〟という男】

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