人体実験
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静寂が支配していた。
無数の鳥居が、規則性もなく並ぶ空間。風はなく、音もない。ただそこに“門”だけが存在している。
赤星帝は一歩前に出た。
「……俺が先に行く」
誰も異論はなかった。
前回、この領域を経験している唯一の存在。その結果が安全性の基準になる。
赤星は振り返らず、最も近い鳥居をくぐる。
――変化なし。
数秒の沈黙の後、赤星は振り返る。
「問題ない。来い」
次に進み出たのは、ガーランド少佐だった。
「二回目の奇跡、ってのを少しは期待したんだがな」
軽口を叩きながら門をくぐる。
小さく舌打ちが響いた。
「……再付与は無し、か」
これで確定した。
“ギフトは一度きり”。
そして、この場は純粋な“選別の場”であると。
ガーランドはすぐに指示を出す。
「全員、止まるな。年齢順に通過しろ。発現があった場合は即時報告」
赤星が続ける。
「暴走の兆候が出た場合――俺とノーマンで処理する」
それが何を意味するか、誰もが理解していた。
沈黙のまま、最初の隊員が門をくぐる。
一人、また一人。
タイラー・スミス伍長
顕現 犬系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
暴走なし。
榊原 美桜三等陸曹
顕現 猫系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
マークス・レイナ二等陸曹
顕現 狐系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
李 春華二等陸曹
顕現 虎系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
サミラ・カーン中尉は変化無し、能力不明。
「赤星三佐、これって私は何にもなし?」
サミラは大げさに両手を広げて首をかしげる。
「三雲三尉の例もある、何か気がついたら報告してくれ」
殉職した三雲三尉は《守りたい》という思いで能力を発現している。
「獣人系が多いな、しかも俺の時の様な暴走も無し…か」
ガーランド少佐は門をくぐり、変化していく隊員たちを観察しながら呟いた。
そして、次に通過した小柄なカーミラ・D・佐藤二等海曹が門を抜けてすぐに倒れた。
「っ――!」
カーミラ・D・佐藤の身体が、音もなく膨張した。
次の瞬間。
――弾けた。
肉体は原型を留めず崩壊し、代わりに無数の黒い影が飛び出す。
それはコウモリだった。
数百、数千にも及ぶ群れが、空間を埋め尽くすように拡散し――
やがて、霧のように消滅した。
「……個体維持不可。分散型……か」
ガーランドが低く呟く。
記録係の軍医が震える手でログを取る。
「クソ…何もできなかった…」
赤星は思わず、うつむく。
数秒、失った部下を悔み。
そして、切り替える。
「次だ」
「ジーザス…」
胸のまえで十字を刻み、軍曹が進む。
カルロス・メンデス軍曹
顕現 爬虫類系獣人化 瞳孔に変化、肌に一部に鱗化。
胸を撫で下ろしながら、皆の横に整列する。
そして、次の異常は、より明確な“脅威”だった。
東条勇人一等陸佐が門をくぐった直後、その身体が軋み始める。
骨が膨張し、筋肉が肥大化し、皮膚が裂ける。
「が……あああああああッ!!」
絶叫とともに、体高三メートルを超える異形へと変貌する。
角を生やし、皮膚は黒く硬化し――
鬼だった。
かつてのスチュワートと同系の暴走パターン。
理性は、既にない。
「対象、暴走確認――!」
銃口が一斉に向けられる。
だが、引き金が引かれることはなかった。
赤星の両眼――赤眼が、鈍く光る。
視界が、赤く染まる。
「……止まれ」
低く、静かな声。
だがそれは、命令だった。
巨大化した鬼は命令通り、その場で停止する。
「マジかよ、こいつ元に戻るんか?」
固まった鬼を横目に、隊員たちは門をくぐっていく。
アレックス・藤堂二等陸尉。
顕現 犬系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
マリア・ゴンザレス大尉
顕現 猫系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
オリヴィア・ブラウン中尉医療士官。
顕現 狐系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
九条 真琴三等陸軍医
変化無し。能力不明。
デイヴィッド・チェン大尉
変化無し。 能力不明。
「三佐! 見てください、俺の盾が!」
小鳥遊一等陸曹の背負っていた盾がまばゆく光る。
小鳥遊 蓮一等陸曹
シールド強化、物質強化系能力。
ナディア・ペトロワ大尉
変化無し。 能力不明。
白石 恒一一等海曹
顕現 魚人系獣人化 頸部にエラ、肌の一部が鱗化。
エリック・ウォーカー軍曹
顕現 熊系獣人化 筋肉と体毛増加。
綾瀬 真理一等陸尉軍医
顕現 猫系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
イーサン・ロス曹長
顕現 犬系獣人化 頭部に耳、臀部に尾を発現。
黒川 鉄馬一等陸曹
顕現 肉体硬質化 肌の一部が金属質に変化。
続くジャック・ハンター少佐。
門を抜けた瞬間、その全身から炎が噴き上がった。
「……っ、これは……!」
炎は衣服だけでなく、肉体そのものを燃料にしているかのように膨れ上がる。
皮膚は焼失し、骨格すら赤熱する。
それでも――動いている。
いや、“生きている”。
人の形をした炎。
が、背後に振り返り。
手をかざす。
「へっ? 」
後方で並んでいた、ルーカス曹長、南雲三等陸佐、ダニエル准尉が業炎に焼かれる。
「曹長!准尉!」
ガーランドが携帯消火器で炎に包まれた隊員に向けて噴霧する。
「ノーマン!そいつらは手遅れだ! こいつの相手を頼む!」
赤星は赤眼の対象を動く業炎の化身と化したハンター少佐に向けた。
「炎よ!消えろ!」
しかし、少佐の火は消えない。
「熱源反応、急上昇――! うっ撃て!!」
誰かの号令で待機していた隊員たちが発砲し始める。
「射撃は無意味だ!」
火炎の化物は、赤星に迫る。
静寂がついに破られ。
地獄の様な戦闘が始まった。
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