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鳥居の前で

この作品を見つけてくれてありがとうございます。

楽しんでいただけたら幸いです。


赤星帝を含む二十六名を十階層へ送り届けるため、250名の日米混成支援部隊は、戦闘と補給を繰り返しながら彼らの隊を押し上げた。


今回の塔登では、前回のような強制転移は起きなかったのが幸いした。



構造はダンジョンのそれと同じで、フロアを制圧しながら階段を見つけ上階層を目指す。

フロアには大小複数の階段の存在を確認。


大隊での移動のため、大きな階段を選び、大隊は行列を成しながら進行を止めない。


 

道中は前回同様、筒型のガードロボットが数で押し寄せ、多脚兵器は火線を張り巡らせ、マネキンめいたアンドロイド兵士は人間の動きをなぞるように迫る。


 


だが――隊は崩れない。


 


隊列は乱れず、補給は滞らず、致命的な損耗も出ていない。


 



そして、10階層。

 


「……聞いた話より、静かすぎるな」


小鳥遊蓮が、肩に担いだ大型シールドを軽く叩いた。長身で無骨な顔立ち。緊張しているはずなのに、それを押し殺す癖がある。


 


 


無数の鳥居が、静かに並んでいた。


 


あの時と同じ光景。


だが、空気はまるで違う。


 


背後では、日米混成部隊が反転を開始している。


戦闘と補給を繰り返しながら、この場所まで押し上げた彼らは、役目を終えた。


 


「……本当に戻るんですね、あの人たち」


 


ぽつりと呟いたのは、榊原美桜だった。小柄で短い黒髪、まだ若さの残る顔立ちだが、その目は鋭い。


 


「門はくぐらないのですか?」


その問いに答えたのはノーマンだった。



「人間をやめるのは、俺たちだけだ……今回はな」


 

軽く笑うが、冗談ではない。


 


その言葉に、場の空気がわずかに沈む。


「……怖気づいたか?」


エリック・ウォーカーがニヤリと笑う。大柄で筋肉質、いかにも重火器担当といった風貌だ。


「誰がですか?」


即座に返したのは李春華。長い黒髪を後ろで束ね、細身だが無駄のない体つき。


「あなたみたいな鈍重な的に変身してしまう方がよほど怖いです」


「はっ、言うじゃねえか」


「事実です」


 


「よし、門の向こうで勝負するか?」


 


「いいですよ。三秒で終わりますけど」


 

「……気が合いそうだな、お前」


 

「最悪ですね」


 


 


「やめろ」


 


赤星の一言で、空気が締まる。


 


「ここは遊び場じゃない」


 


静かな声だが、よく通る。


 


二人は同時に視線を逸らした。


 


 


「でもよ」


 

今度はタイラー・スミス。金髪の若い伍長が肩をすくめる。


 

「結局ランダムなんだろ?能力って」


「ええ、おそらく…」


 

答えたのは九条真琴。落ち着いた雰囲気の女性軍医。


 

「報告では、現時点では法則性は確認されていません」


 


「じゃあさ、俺がクソ弱い能力引いたらどうすんの?」


 

「諦めてください」


 

間髪入れずに綾瀬真理が言う。眼鏡越しの視線は冷静そのもの。


 

「精神的耐性も観察対象です」


 

「冷てぇなあ、日本のドクターは」


 


「現実的と言ってください」


 


「運だけの話じゃないだろ」


 


低く口を開いたのは東條隼人。短髪で鋭い目つき、無駄のない立ち姿。


「俺たちはすでに“選ばれてる”」


 


「んだな、違いねぇ」


 


デイヴィッド・チェンはほくそ笑みながら肯定。


 


「第一調査隊のデータ。生存者に偏りがある」


 


「……興味深い」


 


「つまり?」


 


榊原が身を乗り出す。


 


「適性があるってことだ」


 


 


「適性、ねえ」


 


マリア・ゴンザレスが腕を組む。引き締まった体に短い巻き髪。


 


「じゃあ私、当たり引く気しかしないんだけど」


 


「自信過剰だな」


 


ナディア・ペトロワが鼻で笑う。


 


「それで死ぬタイプだ」


 


「そっちこそ」


 


「私は死なない」


 


「言い切ったわね」


 


「事実だ」


 


 


「……騒がしいな」


 


ぽつりと呟いたのは白石。無精髭に落ち着いた目。


 


「緊張してるんだろ」


 


隣の黒川が低く言う。腕を組んだまま動かない。


 


「……まあな」


 


「いいことじゃない」


サトウ・D・カーミラが軽く笑う。どこか飄々とした雰囲気。

 


「なあ」


小鳥遊蓮がぽつりと口を開く。大柄で穏やかな顔つき。


 


「もしさ」


 


全員の視線が少し集まる。


 


「戻れなくなったら、どうする?」


 


一瞬、静寂。


 


「その時は――」


 


アレックス・藤堂が静かに言う。


 


「戻らないだけだ」


その言葉は、淡々としていた。


 


だが、重い。


 


「……いいね、それ」


タイラーが苦笑する。


 

「シンプルで好きだ」


 


「当たり前の話だ」


 


 


そこで――


 


 


「――黙れ」


ノーマンの声が落ちた。


 


 


一瞬で、空気が凍る。


 


 


「ここは戦場だ」


視線が、全員に向けられる。


「ここは能力を得る場所じゃない。“変わる場所”だ」


 


誰も口を開かない。


長い鳥居の道を抜けて、開けた場所に出た。


巨大な鳥居が扉を開いて、隊員たちを迎えた。


 


「軽口はいい。だが――この先は運次第」


一歩、前に出る。


 

「武運を祈る」


 


それだけだった。


 



沈黙。


 


 


その中で、赤星が静かに口を開く。


 「まずは、一度通った我々が行く」



鳥居を見据える。



「異変があったら、迷わず撃て! いいな」


ノーマン・ガーランドが続く。


「我々が、無事なら、お前達も続け」


「まず軍医、通信、非戦闘員から年齢順、次に戦闘員も同様に行ってくれ」



 

「――行くぞ!」


 


 



この作品を見つけてくれてありがとうございます。

そして、読んでくださってありがとうございます。

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