92話 勇者ギルハート①
突如、襲撃を受けたリィンの村。白銀の鎧を身に纏う勇者ギルハートと遭遇したリィンが戦闘の末に傷を負ったところ、アディアと魔王が彼女の元へ駆けつける!
「やぁアディア、相変わらず自慢の大槌をブンブン振り回しているみたいだね?」
「ギルハート……童貞をもらわれ昔の男が何の目的があってこんな場所に現れたのかしら?」
気さくに話しかけてくるギルハート。アディアは不機嫌かつ毒のある口調で返したが彼は余裕の表情で続ける。
「ハ、ハハハ……そんな破廉恥な格好していても、性悪なところは変わってないみたいだね」
「ビキニアーマーについては偶然と事故が重なった不幸な結果よ! それに性悪になった原因を作ったのはそもそも……って、それよりも!」
「ああ、ここに来た目的だったね。う~ん、そうだなぁ……敢えて言うなら“確認”するためかな?」
「確認? 何を?」
「今のキミさ!」
「い、い、今の私を!? ま、ま、まさかこの期に及んで寄りを戻したいとか言うんじゃないでしょうね!?」
思わせぶりの発言に焦るアディアだが、案の定……
「いや、それはない。絶対にありえない。神に誓うよ」
「……そこまで言う?」
真顔で徹底的に否定され、話は本来の形へ戻る。
「ボクがキミを知りたいと言ったのは、ロゴスとザクノバの件についてさ。あの二人はどうせキミが始末したんだろ?」
「まあね」
「やっぱり……っで、いくらキミが強くても、一人でそれが容易く出来たとは思えない」
「何を……言いたいのかしら?」
「協力者……仲間がいるんだろ? 例えばそこの魔族みたいな……ね!」
角を露出させた魔王とリィンをそうだと決めつけたように話すギルハート。アディアはこれを見て別に隠す必要もないと素直に答える。
「ええそうよ。彼等は私の仲間、同時にアナタへ復讐を果たす同志でもあるわ!」
「ハイ、アディアの言う通りです!」
「う、うむ……まぁ、そうなる……な」
二人は同意して頷くが、魔王の方は“仲間”という部分に若干の抵抗がある様子。
「魔族の仲間か……なかなか良い選択だと思うよ」
「フフン、でしょ? 前の裏切り者と違って、彼はとても優秀なのよ♪」
得意気な顔で仲間の自慢をするアディア。ギルハートはそんな彼女を見て確信を持ったかのように話す。
「……とにかくだ。今のキミについてはこれで十分に確認できたあとは……キミ達が本格的な脅威になる前に排除するだけだ!」
「脅威? 排除?」
「元勇者パーティーの一員であったキミが魔族と組む。これだけで人類にとっては潜在的な脅威になりかねない。よって…」
「私達を排除したいわけね。でもホントにそれだけかしら?」
「どういう意味だい?」
「本心を言いなさいよ。ようするに姫とねんごろになるのに昔の女が目障りになっただけてしょ?」
「お前の考えなんてお見通しだ」とばかりに煽るアディア。それに対してギルハートは、薄気味悪い笑みを浮かべて言う。
「へぇ、ちゃんとわかってるじゃないか。ボクの本音を♪」
クズ発言の終るとギルハートは、剣を構えて完全なやる気……殺る気モードに入る!
「さぁ、言い残すがあれば今の内だよ?」
これが最後の会話だと告げる思リフ。アディア的には当然何も話すことはなかったが……
「戦う前に聞かせなさい! 我の村をこんな目に合わせた理由を!!」
リィンだ。彼女は自分の大事な村を……人を蹂躙された理由を知りたかった。いや、ギルハートの口から言わせたかった。
その行為がまったく無意味だと理解しても、それでも村人等が悲惨な最期を迎えた理由を……罪への懺悔を聞きたかった。
聞きたかったのだが……
「うるさいね」
「えっ?」
「魔族を蹂躙した理由だって? 人間が悪しき魔族を始末する……そんな息を吐くにも等しい行為に理由なんかあるわけないだろ?」
「なっ!」
「さっきも話した通り、ボクがここにやって来たのはあくまでもアディアとキミ達の排除が目的。そこに転がってる腐った魔族共の命はそのついでに過ぎないんだよ!!」
「――――――!!」
予想通り過ぎるあまりにも理不尽、あまりにも身勝手極まる返答を受け、リィンは一瞬にして逆上! 直後、理性を失った彼女は猛獣の如くギルハートへ襲いかかる!!
「貴様ァァァァァァーーーーーー!!!」
「やれやれ。お前も他の奴等と同様、ボクの剣の餌食になるのか……」
しかし、この展開を正確に読んでいたギルハートは、彼女を返り討ちにしようと流れるような剣技で胴体を捉え……
「させるか!」
パァン!
パァン!!
捉えられようとした刹那! それをさせまいと、魔王の銃が火を吹く!!




