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89話 力なき者達との決着

「残りはあと四人……」


 もはや油断の“ゆ”の字すらも頭に過らせないアディアは、騎士達へ鋭い視線を向けて大槌をかまえて睨みつける。


 一方、そんな圧力と殺気が満ち溢れる彼女と対峙する騎士達はというと……


「糞ったれ! 百人もいたってのに、もうこれだけしかいないのかよ!」

「嘆くなよ。勝てば全員での勝利になるんだからさ」

「そうそう。最後の一人になろうと退くつもりないぜ!」

「オレもだ。こうなったら、とことんやってやる!」


 絶望的な状況でも各々に闘志を燃やしていた。


「……じゃあ、一、二、三で一斉にいくぜ!」

「ああ、合図のタイミングは任せる。他の者もいいな?」

「了解だ」

「いつでもやってくれ」

「よし。なら、一、二、三でやるぞ……一!二!三!! いくぞぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」

「「オオオオオオォォォーーーー!!」」


 気合いの入った雄叫びを上げて決死の特攻を仕掛ける騎士達に対し、アディアがとる行動は!?


「全員で仲良く来るわけね……だったら!」


 全力で返り討ちにしたく、大槌を胸の高さと水平に抱えてその身を独楽の如く凄まじく回転させる!


 蹴散らすわよ! デス・スピニング(死の回転)!!」


 恐るべき凶器となる彼女に、騎士等は臆せずに突っ込む!!


「「オオオオオオォォォーーーー!!」」


 双方が正面から激しくぶつかり、結果は!?


「ギャアアアアーーーー!!」

「ガアアァァァーーーー!!」


 全身がズタズタになって弾き吹き飛ばされる四人。このまま全員が倒れて決着かと思えたが!


「ち、ちきしょう……生き残ったのはオレだけかよ?」


 一人の騎士がふらふらと立ち上がると……


「い、いや……オレも何とか、ただ……」


 続いてもう一人の騎士も立ち上がったが……


「……ただ、他はダメみたいだ」

「……そうか」


 残念ながらその先はなかった。


「ところでアンタ……な、名前を教えてくれないか?」

「……ゼクスだ」

「オレはワイマンだ。なぁ、ゼクス。この戦いが終わったら一緒に飲みにいかないか?」

「ハハハ、誘いはありがたいが、今月はあいにく金欠でな……奢りなら付き合うぞ」

「お、奢りかぁ……安酒しか出ない店で良ければ、連れてってやるぜ」

「……なら決まりだな」


 親しげに約束を交わす二人。だが、彼等は予感していた。その約束が果たされる未来が絶対に訪れないことを……


「じゃあ、そろそろ……」

「ああ終らせるか」


 仲間の仇をとるため? 騎士としての正義を貫き通すため? それ以外の何かのため? とにかく彼等は戦いを選択する。


「ウオオオオオオオオーーーー!!」

「でやあああああああーーーー!!」


 気力を振り絞った最期の特攻。しかし、それが成される前にアディアは動く。


「すまないわね。とどめ……刺させてもらうわ」


 力強く握られた大槌は、渾身の力で振るわれる!!


 グシャ!

 メキッ!


 命が砕かれる二つの嫌な音。それは彼女が勝利を手にした証(あかし)だった。


「―――はぁ、はぁ……」


 戦いが終わり肩で息をするアディア。ほぼ圧倒的な実力差を見せつけていたにも関わらず、それなりには疲弊していたらしい。


「さ、さすがに少しは疲れたわね……」


 抑えていた本音を吐露したアディア。彼女は大きく息を吐くと、崩れるようにその場で膝を着くのだった。

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