87話 立ち上がる魂
たった一人でノーランとクライアンという強敵を倒したリィン。だが安堵したのは束の間、彼等の仇を取ろうとする残りの騎士達との戦いは続いていた……
「はぁ、はぁ……ウインド・アロー!」
肩で息をして魔法を放つリィン。様子から見て、疲弊しているのは明らか。
「ま、まずいですね……まだこんなに数が残ってるなんて……」
さらに相手の人数は三十を超えており、控えめに見てもかなり追い詰められてる状況になっていた。
「これは我もいよいよ覚悟を……ん?」
敗北……そんな二文字が頭に過り始めていたら、視界には見覚えがある背中が映る。
「あの後ろ姿は……アディアさん!?」
突然の登場に驚くリィン。同時に感極まる!
「よかった……彼女が加勢すれば、この戦況は確実にひっくり返せる!」
不利から有利への転換を期待。さっそく背中の彼女へ話かけるが?
「御協力を感謝します、アディアさん。さっそく我と一緒に……」
「悪いけど、リィン。ここから先は、全部私に任せてくれない?」
「え?」
何と彼女は加勢ではなく、自らが全ての騎士を相手にするつもりでいたのだ!
「無茶ですアディアさん! いくらなんでもこれだけの数を一人で相手にするのは……」
「大丈夫、心配しないで。私の体力は有り余る以上に有り余ってるから!」
強気な発言の通り、確かに彼女には一切の疲弊や疲労は感じない。それどころか表情には余裕すらあったので……
「わ、わかりました。あとはお任せします」
リィンは彼女の言葉にあまえ、安全な場所にまで距離をとって見守ることに。そして……
「じゃあ、まずは挨拶からいくわよ!」
任されたアディアは勢い良く走り出すと、大槌を棒高跳びの要領でしならせた反動を利用して騎士達の頭上高くへ跳ぶ!
「震えなさい……デッド・インパクト!!」
空中で体勢を整え、落雷の如き大槌の一撃を地面に叩きつけて大きく揺らす!!
「な、なんだぁ! 地面が揺れる!?」
「ひぃええええーーーー!!」
「こ、堪えろ! 両足で踏ん張るんだ!!」
動揺する騎士達。倒れないように耐えてはいるものの機動力は著しく奪われる!
「さぁて、次は……」
ニヤニヤと薄気味悪い笑顔を浮かべるアディア。次なる行動は!?
「こういうのは、どうかしら!?」
腰を落として大槌を横向きにかまえた後、渾身の力でフルスイング!!
「狩り取れ! デス・サイス!!」
音を越える速度のスイングから生み出された真空の刃が、数メータ先にいる騎士をまとめて両断!!
「「………………!!!」」
圧倒的かつ、凶悪過ぎる一撃に言葉を失う彼等。数瞬の間を置いてようやく反応を示す。
「ギャアアアアーーーー!! オ、オレの腕があぁぁぁぁーーーー!!」
「痛い、痛い、痛あああああいぃぃぃーーーー!!」
目を覆いたくなる惨劇にも関わらず、アディアは何の同情もないままに次の攻撃へ。
「ふふ~ん♪ まだまだいくわよ。デス・サイス!!」
鼻歌を交えて再び放たれる真空の刃は、容赦なく命を狩り取り、騎士等の心を徹底的にへし折る!
「もう……もうダメだ。オレ達は終わりだ……」
絶望に打ち震え、人数も十人を切ってこのまま全滅……と思えた時、一人の若い騎士が剣を頭上に掲げて吼える!!
「まだだ! まだオレ達は終わらない!! 騎士団の正義を見せつけるまで絶対に終わってやるもんかぁぁぁーーーー!!」
「「!!」」
単純、それでいて取ってつけたような安っぽい啖呵。しかし、諦めた者の魂を燃え上がらせるには十分だった。
「そ、そうだ……オレ達はまだ負けてない!!」
「戦うんだ! 正義のために!!」
立ち上がる騎士達。彼等の瞳には輝かしい光を宿る!!
一方、対峙するアディアは……
「へぇ。騎士団なんて軟弱者の集まりばかりだと思っていけど、骨のあるヤツもけっこういたものね……いいわ! その熱々の根性、正面から叩き潰してあげる!!」
ありったけの殺意を大槌に込め、より徹底的な攻撃を行う準備を整えるのであった!!




