68話 迫る脅威!
魔王が拐われたからしばらく後。アディアとリィンの二人は、村の入口付近で何やら話し合っていた。
「では今から拐われた魔王様を追いかけます。準備はいいですねアディアさん?」
「あ、うん……いいんだけどさぁ。もっと別のやり方はなかったの?」
「ありません。今はこれが一番“最速”の手段なんです」
「最速って……う~ん、上に乗ってるだけの私に選択はないか」
「そういうことです」
会話の内容について説明すると、ズバリ彼女達は肩車をしていた。ただこれは別に遊んでいるわけではなく、れっきとした移動手段の準備としてやっている。
「では、いきますね!」
「お、お手柔らかに……きゃ!!」
以前の戦闘でやったように強力な魔力を推進力にして走り出すリィン。そのスピードはまさに圧巻!
「ちょ、早過ぎ……」
「喋らないで! 舌を噛みますよ!」
上であたふたするアディアを他所にリィンはスピードをグングンと上が続け、やがて眺めの良い草原地帯にさしかかる頃……
「見えた! 前方二〇〇メートル地点に怪しい屋根付きの馬車を発見!!」
アディアは魔王が連れ拐われたと思われる馬車をとらえる!
「了解です! 一気にスピードを上げます!」
「え、まだ上がるの!?」
「振り落とされないで!」
「ひゃあああーーーー!!」
彼女達が更なる速度加速追いかける一方、馬車内では三人いる騎士の若い青年が外を眺めて大声で叫ぶ。
「た、大変です隊長!! 後方から、後方からぁぁぁーーーー!!」
「何だ騒々しい?」
顎髭を蓄えた五十代半ばのガッチリ体型の男は、何事かと訝しむ。
「そ、その……メイド服を着た女が……」
「メイド服の女? それがどうしたと言うんだ?」
「だから、メイド服を着た女が赤髪の女を肩車して、猛スピードでこちらへ向かって来てます!!」
「はぁ!?」
部下から訳のわからない報告を受けて困惑する隊長。堪らず馬車の窓から顔を出して見ると、確かにメイド服の女が赤髪の女を肩車して追いかけて来てるのが確認できた!
「なっ! 馬も使わず……っていうか、何であんな状態であんなにスピードが出せるんだ!?」
「オレに言われても知りませんよ! それよりも、どう対応すれば!?」
「う、うむ……とにかく、こちら側からは彼女等に関わる理由がない。ここは下手に関わらないのが賢明だ」
そう判断する隊長は、御者へ急いで指示を出す。
「緊急事態だ! スピードを上げろ!!」
「ハッ、了解であります!」
追いつかれぬよう、馬車は懸命に走り続けるが……
「ダメです隊長! 距離を離すどころか、逆に詰められてます!」
「ぬぐぐ……御者よ、もっとスピードは出せないのか!?」
「こ、これ以上はとても無理です!」
「くっ、アイツ等……一体何が目的で……」
徐々に迫る謎の脅威に危機感を覚えるなか、隊長は自分達が追われる理由を考える。
「……やはり、コイツが原因か?」
コイツとはもちろん拐われた魔王を指す。今は薬で眠らされて馬車の床に横たわっている状態。
「頭の角から魔族だと判断して捕えてはみたものの、まさか取り返しに来る者が現れるとは……仲間想いなところは人間と一緒ってことか?」
相手側の関係性に感心したくなるが騎士の手前、みすみす返してやれないのが現実。よって……
「剣を抜け! これより我々は、謎の追跡者に対して戦闘を開始する!!」
「ハッ!!」
彼等は追って来る謎の脅威に対し、迎え討つ覚悟を決める!!




