67話 魔王の行方
家出した魔王を捜索するアディアとリィン。だが彼女達がたった二人だけでそれをやるには心ともないので、村人達に協力を要請してみることに……
「魔王様が行方不明? わかりました。それならば喜んで手伝わせていただきます!」
「あの小さくて可愛いらしい魔王様が!? 早く探してあげないと……」
「魔王様が!? 今すぐに人を集めます!!」
ありがたいことに誰もがすんなりと承諾してくれ、最終的には総勢百人近くの捜索隊が出来上がっていた。
「ふぁ~、ずいぶんな大所帯になったわね。これならあっという間に見つかりそうだわ」
アディアがそんなふうに感心してると、リィンはさも当然だと言わんばかりに口を開く。
「あっという間に見つけないとダメなんですよ。魔王様は村人達の……いえ、魔族にとって希望になる御方ですから!」
「希望になる御方……ね。その割には泣きべそかいて家出したけど……」
「アディアさん? 誰のせいでこうなったと?」
「あ、ごめん。私のせいよね……うん、ごめん。反省してるからそんな怖い顔で睨まないでくれる……ね?」
圧力を受けてたじろぐアディア。だがリィンはそんな彼女を放って村人達に向き合う。
「それでは魔王様の捜索を開始します! 一班は北区を担当。二班は南を、三班は……」
手際よく次々と指示を出していくリィン。村長を務めるだけあってその手腕は確かなものであり、三十分も過ぎた頃には―――
「リィン様、魔王様が見つかりました!!」
「本当ですか!?」
「で、ですが……その……」
「どうしました? そんなに口ごもって?」
「……連れ拐われました」
「え?」
「魔王様は、王都から視察に来ていた騎士達の手によって連れ拐われました!!」
「何ですって!?」
青ざめるリィンに報告者は続ける。
「ほ、ほんの十数分程前でした。北区の外れを捜索していたら、三人の騎士が暴れる魔王を無理矢理に捕えて去っていくのを目撃したんです!」
「そ、それで!?」
「無論、すぐに追いかけましたが、彼等は村の外に待たせていた馬車に乗り込み、そのまま王都の方向へ……」
「に、逃げられたのですか!?」
「申し訳ありません!!」
猛烈な勢いで頭を下げる報告者。だが、相手が馬車ではどうしようもない。
「くっ! こうなったら我々も王都へ向かうしかありません! 全員、今すぐに準備を……」
早急に次なる行動を決断するリィン。しかし、ここでアディアが待ったをかける。
「待ってリィン、大人数で追うのは目立ち過ぎる! ここは私とアナタの二人で追いかけるのが得策よ!!」
「我とアディアさんだけで……?」
「そうよ! 聞いた話によると連れ去った騎士達は三人、馬車の操者を含めてもせいぜい数人程度のはず。私とアナタなら余裕で組み伏せられる人数だわ!」
「た、確かに……」
「それと追いかけるなら私達にも馬車が必要になる。この村に馬車はあるの!?」
「いえ、我とアディアさんだけなら馬車は必要ないかと」
「え? じゃあどうやって?」
「二本の足があれば十分です」
「二本の……って、まさか走って追いかけるの!?」
困惑するアディアに、リィンは余裕の笑みで言う。
「いえ、我にはアレがあるから問題ありません」
「アレ?」
「そうです。アレを使えば、馬車なんて瞬きで追いつけます!!」
彼女が自信たっぷりに言う“アレ”とは一体? その正体に覚えがないアディアは、どことなく不安な表情を浮かべるのだった……




