64話 真夜中の訪問者
真夜中の王都。中心地に堂々とそびえ建つ城の中にある一室にて、勇者ギルハートは椅子に座って静かに何かを待ち続けていたが……
「おかしい。もう何日もロゴスとザクノバからの定期連絡が届かないなんて……アディアの暗殺に失敗したのか?
まあ思い返してみれば、あのパーティーの時も簡単に手玉に取られていた感はあったからな。それも仕方ないといえば仕方ないかも知れない……か」
あるべき情報が届かないことで、二人に見切りをつけていた。
「けど本当にあの二人がやられたとするなら、アディアはどうやって彼等を退けたんだ?
彼等だってそれなりに警戒して彼女の暗殺には挑んだはず。にも関わらず失敗したということは……彼女が一枚も二枚も上手だったのか?」
明かりを灯すランプの炎が揺れるのを眺めつつ、ギルハートは推察を続ける。
「いや、そうだとしても二人が同時にかかれば彼女一人くらいならどうにか……待てよ?
彼女が一人で彼等に対抗してなかったらどうなる? 彼女に協力する仲間が存在していたとしたら……」
しかし、この結論に至るには些か穴があった。
「……フッ、それはないな。彼女の心情を考えたら、今さら仲間なんてものを望むとは思えない。
何せ彼女は、愛する人や信頼していた戦友に裏切られた身たからね……」
アディアの仲間説を否定すると、今度は別の可能性も考えてみる。
「では人間以外の仲間ならどうだろか? 例えば魔族なんかが……なわけないか馬鹿馬鹿しい」
そう、人間の彼女が魔族を仲間にするなんてあり得ない。何故ならつい最近まで、人間と魔族は血で血を洗う争う歴史を繰り返していた間柄なのだからだ。
「けどもし……いや、もうやめておこう。いくら考えても、所詮は想像の域を出ない話だ」
無駄なことはこれ以上続けてたくないとするギルハートは、喉が渇いたのか、机に置いてあった水差しからコップに水を注いで一気に飲み干す。
「ふぅ。そろそろ寝るとするか」
一息ついてベッドへ……っとその時!
コンコン!
何者かが部屋のドアを叩いたのは。
「こんな夜分遅くに誰だろ?」
取り敢えずは対応するためにドアへ近づく。
「どなたですか?」
返事はすぐにかえってくる。
「私、セシリアです」
「セシリア!? ちょっと待ってください、すぐに開けますから!」
急いでドアの鍵を外し、彼女を部屋へ招き入れる。
「え、えっと……こんな時間にどうなされました?」
恐る恐る対応するギルハートが訊ねると、セシリアは冷めた表情で答える。
「妻となる女が、夫になる男の部屋へ訪れるのに理由が必要ありまして?」
「あ、いえ……特にないですね」
その理屈はわかるが、それでもある程度は気を遣って欲しいものだ。
「私がここに伺ったのは、アナタに忠告……いえ、警告するためです」
「ボクに警告? 何を?」
ギルハートは意味もわからず対応に戸惑う。
「アナタが影でこそこそと何かをやっているのは存じてます。ですが、あまり勝手をなされてると……わかってますね?」
「!!」
一瞬、全てを見透かされてのか焦るが!?
「……用は済みました。ではこれで失礼します」
「あっ、ちょ……!」
セシリアは何事もなく退室してしまう。そして、部屋に一人残されたギルハートは?
「―――やれやれ、妻となる女が夫になる男へ忠告なんてするかね?」
思わぬ訪問者への愚痴を漏らしつつも、ようやくベッドで横になれるのであった。
久しぶりのギルハート登場は、如何でしたか?




