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62話 報告

 魔力切れを起こして気を失う魔王を寝室のベッドへ寝かせたリィンは、側に用意した椅子に座って心配そうに見守る。


「ふぅ……呼吸は落ち着いてるし、脈も安定している。これなら大丈夫そうですね」


 心配そうに見守るリィン。


「……」


 心配そうに見守るリィン。


「…………ゴクッ!」


 心配そうに……見守る(?)かと思われたその時、何者かが部屋の扉をノックする!


 コンコン!

「だ、誰ですか!?」


 慌てるリィンは、ノックの主へ何事かと訊ねる。


「王都での偵察を承っているグレルです」

「グレル……そういえばそんな時間でしたね。どうぞ入ってください。ただし、魔王様が休息中なのでお静かに願います」

「承知しました」


 そう言って扉をゆっくり開いて現れたのは、彼女の部下になる短い銀髪の青年魔族だった。


「報告ですか?」


 村長のリィンは厳しい表情で訊ねる。


「ハイ。承っていた勇者の動向について、いくかの情報を入手しましたので伺いました」

「手短にお願いします」


 寝ている魔王との時間を楽しみたい彼女は、本当に手短にして欲しいみたいに要求。


「ハイ。まずは一ヶ月後……正確には二九日後に控える勇者とセシリア姫との結婚パレードについての詳細な情報が入りました」

「……聞きましょうか」

「パレード当日、昼過ぎに二百人余りの騎士と共に城を出発。勇者とセシリアの両名は屋根のない開放型の馬車に乗って移動する手筈になっております」

「開放型? 大衆の前に堂々と無防備な姿を晒すというのですか?」

「ええ。よほどに不足の事態に対応できる自信があるのでしょう」

「……続けてください」

「次にパレードの進行コースですが、城を離れた後は二時間程かけて順に居住区、商業地域、民達が憩いの場として象徴される噴水広場を巡り、最後はそのまま帰城になります。

 その後は大広間へ移動し、式と披露宴を挙げる手筈になっているようです」

「なるほど。結婚式を城で行うのは当然としても、大衆に自分達の幸せをアピールしたい気持ちがあからさまに見受けられますね」

「同感です。次にその主役になる二人についての情報ですが……」

「え、次?」

「どうかしました?」

「あ、いえ、続けてください」


 リィンはベッドで眠る魔王を気にしながらも報告を受け続ける。


「勇者に関してですが、あの男はほとんど城に籠っていて外出する気配は一切ありませんでした。ただ……」

「ただ?」

「フィアンセであるセシリア姫には不審な点が見られました」

「勇者の相手に不審な点が?」


 リィンの関心が魔王から移る。


「城に潜伏している者によると、度々深夜に城の地下室にて怪しげな行動をとってるとのことです」

「深夜の地下室で? 結婚式の準備等ではないのですか?」

「そういった(たぐい)は日中に従者達に任せて済ませているようでした。あと、地下室から出て来た際の姫については、ひどく消耗していた様子だったとか……」

「消耗……ですか。わかりました。そちらについても引き続き調査を頼みます」

「かしこ参りました」


 ―――その後、一通りの報告を終えたグレルは退室。そして、残ったリィンは寝ている魔王を眺めながら思考する。


「セシリア姫……一ヶ月後に勇者と結ばれる身でありながら何を企む?」


 彼女に対する疑念。それが今後の展開に如何なる事態をもたらすかは……この時のリィンには、想像すらできないのであった。

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