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60話 魔力の弾丸

 屋敷のリビングにある地下室にて……


「それでは魔王様。慎重に……かつ、やさしく触ってみて下さい」

「ああ……こうか?」

「そうです。その調子で……あっ!」

「どうしたリィン!?」

「だ、大丈夫です……そのまま続けてけっこうです」

「そ、そうか?」


 怪し気な会話を交わしてはいる彼等が、じつは銃に取り付けた魔法石を使って魔力を循環させる作業をやっているだけだった。


「お見事です魔王様。ちゃんと魔力が銃の内部で流れているのを感じます!」

「うむ! だいたいの感覚(コツ)は掴めてきたな。あとは……実際に発砲してみてからだな」

「そうですね。では、さっそく外で試してみましょう!」


 ということで、彼等は屋敷の中庭へ移動。


「―――では、試し撃ちをする前に改めて説明させていただきます」


 奥に用意された数本の空き缶が並べられた台の前で、リィンが試射について説明を始める。


「何度も聞かせましたが、銃には今まで使用していた従来の弾丸は入っておりません。その代わりに、取り付けた魔法石によって自身の魔力を弾丸に変換させて発射することが可能になる改造が施されております」

「ふむ、本当に何度も聞かされた話だな」

「それと、この銃の弾丸はあくまでも魔王様の魔力が元になっております。よって魔王様の持つ魔力が枯渇(こかつ)した場合、弾丸は発射できなくなります!」

「それも何度も聞いたな」


 魔王は諸々の説明と注意を飽きる程に受けたあと、奥の台に並べた空き缶へ向けて銃をかまえる。


「まずは()へ当てるよりも、魔力を弾に変えて発砲することに集中してみてください」

「フッ、当てるよりもか……魔王ともあろう者が、ずいぶんと舐められたものだ」

「え?」

「見てろリィン。魔王と呼ばれる者の実力を!」


 パァン!

 偉そうなセリフを口にして引き金を引いた瞬間、銃口から発射された魔力の弾丸が一番左にある缶の真ん中を易々と撃ち抜く!


「お、お見事です!!」

「当然だ」


 称賛の声をあげるリィン。それに気を良くした魔王は次々に撃ち続ける!


 パァン!

 パァン!


 さらに数発撃ったところで……


「あれ? 今、弾が曲がりませんでしたか?」


 不思議そうに首を傾げるリィンに、魔王は得意気に教える。


「フフフ、その通り。実際に曲がった……いや、()()()のだ!」

「なっ! 本当ですか!?」


 驚く彼女に続ける。


「魔力を弾丸に変換させる。ならば、魔力のイメージ次第では、様々な形の弾丸に変化させられるていうことになる……」

「そ、それって……?」

「つまりは弾道自体に微妙な角度や歪みを加えてやれば、発射される際に受ける空気の抵抗が影響して弾道を曲げられる……このようにな!!」

 パァン!


 再び発砲すると、弾丸は大きな弧を描いて隣の缶に命中!


「す、すばらしい……すばらしいですよ魔王様!!」


 魔王の理解と応用力に心の底から感動するリィン。嬉しさのあまりに抱きつこうとしたその時だ!


「な、何だ……急に……力が抜けて」

「魔王様!」


 魔王の足元が突然ふらつき……


「だ、大丈夫ですか魔王様!?」


 前のめりに倒れる寸前でリィンが支える!


「ぐっ……うう……い、一体何なのだ、この異様な脱力感は……」

「脱力……ハッ!」


 ここでリィンは、自らが言った言葉を思い出す。


「ま、魔王様、魔力の枯渇してます! すぐに横になってください!」

「魔力の枯渇? そういえば言ってたな……そんなこと……」

「魔王様?」

「…………」

「しっかりしてください! 魔王様ぁぁぁぁーーーー!!」


 魔王は完全に意識を失ったのか、呼びかけにまったく応えなくなる。


「くっ、教育係である我が何足る不覚を!」


 己の不手際を悔やむリィン。だが、今は一刻も早く彼を休ませることが先決なので……


「魔王様、すぐにベッドへ運びますね!」


 急いで彼をお姫様抱っこし、屋敷の寝室へ駆け込むのであった!

ついに60話まできました!

物語的にはまだまだ先は長いですが、これからも暖かく読んでもらえたら幸いです!


※よろしければ、ブクマ、評価、感想もお願いいたします!

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