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59話 ティータイム

 宿屋での見事な闇討ちを終えてからの翌日の午後。アディアと魔王は変わらずリィンの屋敷で世話になり続けており、今はリビングで三人揃ってのティータイムを満喫していた。


「―――宿屋での一件、ずいぶんと迷惑をかけちゃったわね」


 ソファーに座って優雅に茶を啜り、話を切り出すアディア。対面に座る家主のリィンは、嫌そうな顔をしている小さな魔王を膝の上に乗せて言う。


「かまいませんよ。窓の修理、血で汚れた床の清掃。それに死体を処分するための費用等と、けっこうな額を出費す羽目にはなりましたけど……」

「ほ、本当に迷惑かけちゃったわね……ハハハ」


 出費と言われて肩身が狭くなるアディア。ただ言った方のリィンは、差程気にする素振りを見せずに話を続ける。


「それよりも、勇者の仲間二人を葬れたのは幸運でしたね」

「確かに。しかもこちらがほぼ無傷で済んだのは、アナタが協力してくれたおかげよ」

「いえいえ、アディアさんの手際が良かったからですよ」


 互いに相手の健闘を称える二人だが、そこに魔王が自分の活躍を忘れるなと割って入る!


「おい! 余だって、ヤツ等が逃げられないように扉を押さえたりしていたんだぞ!」

「ハイハイ、アンタにもちゃんと感謝してるわよ」

「フン、どうだかな……あと、あまり浮かれるな。真に倒すべき相手はあの勇者なんだからな」

「言われなくてもよ。ギルハートを殺すまでは私の復讐に終わりはないわ!」

「我も同じです。魔王様と体験するはずだった至福の時間を奪った罪、それを償わせないと気が済みません!」


 二人揃って真剣な顔で(こぶし)を握る彼女達。その迫力は、通常の男なら間違いなく引くレベルだ。


「わ、わかってるならいい……っで、今後の展開についてはどうするつもりだ?」

「そうね。取り敢えず私は、預けてる武器の修理が終わるまでの間は何もできないから、適当に鍛練でもしながら過ごすわ」

「ふむ、リィンはどうだ?」

「我は引き続き、銃の改造作業を行います。もちろん、魔王様と一緒にです!」

「え?」


 不穏の発言を聞き逃さなかった魔王は、恐る恐る訊ねる。


「な、なぁリィンよ。その()()についてなんだが……本当にそれは必要か?」

「っと言いますと?」


 聞かれたリィンは不思議そうに首を傾ける。


「い、いや、貴様が余のために骨を折ってくれるのには素直に感謝してるが……その、作業の過程でベタベタとういうか……何かと過剰に接触してくるのが気になってだな……」


 どうやらリィンは、作業にかこつけてセクハラ紛いなことをやっているらしい。しかし、それを(よこしま)な行為だと悟られたくないとする彼女は?


「何を仰いますか魔王様! 銃と魔法石による関係はとても複雑なのです! それをおろそかにすると、魔力が暴走して使い手に多大な危険を及ぼすかも知れないのですよ!!」


 力強い正論で己の主張を正当化。そしてさらには……


「そもそも魔王様は見た目も魔力もお子様レベルなんですから、大人の我がちゃんとついていないと危ないじゃないですか!」


 弱味に漬け込むような発言をし、より一層な過保護ぶりを発揮して追い込む!


「ぐぐ……わ、わかった……貴様と一緒に……がんばるとしよう……」


 結果、魔王は多少の強引さに圧されつつもリィンの意見を受け入れる……っが、それでも自身の誇り(プライド)を守るためにささやかながらの要求をする。


「き、貴様の考えは理解する。ただなぁ……作業中くらいは余を膝に乗せるのを止めてくれないか?」


 本当にささやかながらの要求だが?


「ダメですよ! 我は魔王様の教育係。よって作業中とはいえ、絶対に()()にいてもらわないと困ります!」

「ううう……わかった……」


 結局は聞き入れてもらえず、彼女に従わざるしかなくなるのであった。

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