57話 燃えるロゴス
「友の仇を取らせてもらうぞ!!」
ザクノバの死を卓むロゴスは、ありったけの殺意を込めた拳をアディアへ突き出す!
「ぜぇやあああーーーー!!」
生きながらに伝説といわれる武闘家だけに、その一撃は恐ろしいまでの迫力があった……っが、残念ながらそれ以外の部分は不十分。
「踏み込みが遅い! やはり腰の具合は、だいぶ悪いみたいね!」
彼女が事前に手に入れた情報通り、ロゴスはぎっくり腰から回復しきってないために動きが若干鈍い。よって余裕とまではいかなくても、躱すだけなら十分に可能。
「はぁ、はぁ……何故じゃ! 何故ワシの攻撃が当たらん!?」
「フフン、その焦りよう……どうやらそれが今のアナタが出せる全力みたいね」
「今のはじゃと? どういう意味じゃ?」
この疑問にアディアは蔑む目をして答える。
「だから言葉通りの意味よ。アナタ、数日前にぎっくり腰になったんでしょ?」
「……何故それを知ってる?」
「ザクノバに聞いたからよ」
「ザクノバに!?」
「彼からアナタが回復するまでの間、休戦にしたいと頼まれていたわ」
「ぬぅ……では、お主はヤツとの約束を反故にしてこのような襲撃を?」
「正解……っていうか、そもそも私が自分を裏切った男の依頼を受けるヤツとの約束を律儀に守ると思う?」
アディアの正論にロゴスは苦渋の表情で納得。
「絶対に思わんな……」
「でしょ? だから彼と別れた後、大急ぎで準備をしてここに来てるわけ」
「なるほど……要は謀ったというわけじゃな。まったく卑劣な真ね……っ!」
“卑劣な真似”と続けようとしたが、冷静に考えれば彼女の言ってることか正しいので言葉を飲み込む。
「……まぁよい。騙し騙されなんぞ大して珍しくもない話。それよりも、お主を返り討ちにするのが大事じゃ!」
「返り討ちねぇ……できるのかしら?」
「で、できるに決まっておるわ! 多少の不利を抱えたところで、一対一でワシがお主に負けるはずない!!」
「フフフ、多少の不利ねぇ……その多少が戦いにおいて、どれ程に重要な要素になるかを知らないアナタじゃなくて?」
「ぐぬぬぬ……」
もっともな指摘を受けて歯ぎしりをするロゴス。しかし、この状況では弱味なんて見せられない。
「ええい、黙れ! ワシに不利があろうとなかろうと、お主が一人でワシに勝てるわけがないんじゃああああーーーー!!!」
悩ましい腰の痛みなんて存在しないが如く己を鼓舞するロゴスは、鬼の形相でかまえる!
「アディアよ!! 友の仇を取らせてもらうぞ!!」
まさに“最強の武闘家”と呼ぶに相応しい佇まい。だが、彼女はそんな彼に対して臆することなく口を開く。
「へぇ、さすがに凄い迫力ね。けど、アナタは一つ勘違いをしてるわ」
「勘違い……だと?」
ロゴスの眉が微かに動く。
「私がいつ、一人でここに来たと言ったのかしら?」
「なっ……ハッ! そういえば先程の窓から撃ち込まれた魔法は……まさか!?」
「そういうこと♪ 今よリィン!!」
合図と同時、壊れた窓からは数十本の真空の矢が撃ち込まれる!!
「し、しまっ……ギャアアアアアアアアアアアーーーー!!!」
完全に不意を突かれたロゴス。彼はなす術がないまま、無慈悲かつ残酷に身体中を貫かれる!!




