56話 襲撃
「とにかくドアが使えねぇなら、別の出口を探すしかねぇ!」
部屋の唯一の出入口であるドアを塞がれて焦るザクノバは、ロゴスと共に脱出を試みるべく窓の方に注目する!
「待てザクノバ! 外に誰かいるぞ!」
「ああ、オレの目にもはっきり見えてやがるぜ」
彼等の視界に映るメイド服の女。その怪し過ぎる出立ちには警戒するが、そこから先の行動へ移るには躊躇があった。何故なら……
「まずいな。オレは杖がないと魔法が使えねぇぞ」
「ワシの方だって腰は回復してきておるが、痛みが残ってまだ半分程度の力しか出せそうにないわ」
共にベストコンディションからは程遠い彼等。ただそんな危機的な都合を知ってか知らずか、窓越しの何者かは容赦なく仕掛ける!
「ウインド・アロー!」
掌から放たれる数十になる真空の矢が窓を破壊し、明確な意思を持って室内の彼等へ襲いかかる!
「やべぇ! 避けろジイさん!!」
「お主もな!!」
互いに声をかけてその場から素早く飛び退いて難を逃れる……っが、息つく間もないままに塞がれていたはずのドアの隙間から何かが投げ込まれた!
「な、何だ!?」
ザクノバが視界に捉えたのは、床に転がる拳大の黒い球体。それが大量の煙を噴出して部屋中を充満させていく!
「煙幕だ! 気をつけろジイさ…………!」
「ザ、ザクノバ!?」
最後のジイさんの“ん”まで続かなかったことに違和感を覚えるロゴス。しかし視界を奪われてる状況では何もわからないので、取り敢えずは壁側に背中を張りつける。
「はぁ、はぁ……これで背後からの奇襲は防げるか?」
最低限の防御姿勢だけは整えるなか、足元で何かが当たる感触に気づく。
「なんじゃ?」
目を凝らして確認すると……
「ザ、ザクノバ?」
何と目撃したのは、つい今しがたまで会話を交わしていたはずの人間が胸から血を流して横たわる姿だった!
「ザ、ザクノバ!? しっかりするんじゃ、ザクノバ!!」
慌てて呼びかけるも反応はない。
「ま、まさか……」
恐る恐る首筋に手を当てて脈を確かめる。
「バ、バカな……ザクノバ……何故、お主が死なんといかんのじゃあああーーーー!!」
理不尽な現実を目の当たりし、ロゴスは激し激昂!
「出てこい! ワシの友を殺したヤツは、今すぐに出てこいぃぃぃーーーー!!」
そして姿が見えない敵を探すため、目の前に広がる鬱陶しい煙に向けて凄まじい正拳突きを打ち込む!
「せやっ!!」
拳の勢いと回転によって巻き起こる強烈な風圧が周囲の煙を瞬時に霧散させ、開けた視界には見覚えがある人物の姿が露に!
「アディア!! お主がザクノバを殺したのか!?」
問われた彼女は平然と答える。
「そうよ。私が殺したわ」
発言に間違いはない。その証拠に彼女の手に握られてる短剣からは真新しい血が滴り落ち続けていた。
「何故だアディア……何故、ザクノバを殺したんじゃ!?」
「あら? 先に私を殺そうとしてのはそっちじゃなくて?」
「ぐぬっ!」
“やられたらやり返す”彼女の理屈には筋が通っているかも知れない。ただ、それにロゴスは当然の如く納得しないので……
「友の仇、取らせてもらうぞぉぉぉーーーーーー!!」
殺意と感情が赴くまま、猛烈な勢いで前へ飛び出す!!




