51話 武器の修理へ
「それでは魔王様。我々は銃と魔法石を組み合わせる作業にかかりますね」
「う、うむ……それはかまわんのだが……貴様と二人だけでやるのか?」
「ハイ! 二人だけでやります……ゴクッ!」
「!!!」
喉を鳴らして怪しい目つきで見つめるリィンに、ただならぬものを感じる魔王。できればこの場を離れようとするアディアについていきたいと目で訴えるが?
「……じゃあいってくるわね」
余計なゴタゴタに巻き込まれたくない彼女は、何も気づかないふりをして早々に出かけてる。
「―――ええと、確かこの辺りに……あ、ここね」
渡された地図を片手に村を彷徨っていたアディア。やがて目当ての店を発見するが、そこは外壁の塗料が所々剥がれかけたボロボロの建物だった。
「これは……看板があるから営業してるみたいだけど……大丈夫かな?」
一抹の不安を覚えつつも入口のドアを開く。すると中は意外にも清潔感があるモダンな雰囲気を漂わせる内装であり、壁や棚には古今東西のあらゆる武器がこれ見よがしに飾られている。
「へぇ。外からの印象と違って、中はちゃんとしてるのね。しかも商品の質も文句なしだわ」
思わぬ店の雰囲気に感心してじっくり眺めていると、奥にあるカウンターで短剣を磨いていた髭の濃い中年男から声をかけられる。
「いらっしゃい。何かお探しで?」
視線を合わせることなく、ありきたりな常套句で出迎える男にアディアは不審感を持ちながらも訊ねる。
「アナタがここの店主かしら?」
「ああ、ゴメルだ」
ぶっきらぼうでも一応は名乗られたで、こちらも名乗り返そうとするが……
「私は……」
「元勇者パーティーの一員であったアディアだろ?」
「え、私のことを知ってるの?」
既に相手に素性が割れていたことに驚くと同時、ゴメルは自分が彼女を知っていた理由を淡々と話す。
「アンタが村長を相手に大暴れした夜さ。あの場に集まっていた野次馬の中にオレもいたんだ」
「そ、そうだったの?」
「もちろん、人質を盾にするところもちゃんと見てたぜ」
「ハ、ハハ……カッコ悪いところを見せちゃたみたいね」
「フッ、まあ確かにカッコ悪かったかもな。でも手段はどうであれ、単身であの村長に勝ったのは大したもんさ」
「そ、そう言ってもらえたらありがたい……って、言っていいのかしら?」
どうやらゴメルという男は、なかなかに友好的な人物らしい。
「……それで、その大したことあるアンタが何しにここへ?」
「えっと、まずはこれを見てちょうだい」
アディアは紹介状を手渡す。
「村長からだな。どうしてこんなものを持ってるんだ?」
「色々あってね。ちなみにだけど、今は彼女の屋敷で居候してるわ」
「そうなのか? まぁ、オレにはどうでもいい話だがな」
ゴメルは適当に受け流して紹介状に目を通す。
「……ふむふむ、修理を依頼したいらしいな」
「頼める?」
「まずは武器見せてくれ」
「これね」
アディアが大槌をカウンターの上に置くと、ゴメルは右目にルーペをはめて詳しく調べ始める。
「……全体的に金属の疲労が溜まってるな。それと頭の部分が凹んでるし、柄にも微妙な歪みもあるから……きちんと仕上げるには少し時間がかかるぞ」
「どれくらい?」
「そうだな……疾風の速度でやれば、三日で終わるな」
「三日? 案外早いのね。それでお願いするわ」
「あと料金についてだが……」
「そっちはリィンの方に請求しといて」
「自分の武器なのにアンタが払うじゃないのか?」
「払わないわよ。だって私、文無しだもの♪」
他力本願の事実を悪びれなく言い放つ態度にゴメルは呆れるが、村長であるリィンが後ろ楯であるなら踏み倒される心配はないと判断。
「やれやれ……それじゃあ武器は預かっておくから、三日経ったら引き取りに来てくれ」
「ええ、よろしく頼むわ♪」
ということで、彼女はしばしの間だけ武器を手放すことになるのであった。




