50話 外れる期待
「魔法石。これさえあれば余の魔力が元に……」
かつての自分を取り戻せる。そんな期待に胸を躍らせる魔王だったが……
「あの魔王様? 念のために伝えておきますけど、いくら魔法石で魔力を増大できても全盛期の力にはとても及びませんからね?」
「へっ?」
天国から地獄へ蹴落とされたみたいな顔で固まる魔王に、リィンは申し訳なく続ける。
「そもそも魔法石は赤ん坊が使う歩行器みたいな道具。ですから……その……過剰な期待をさせていたらスミマセン」
罰の悪そうに頭を下げるリィン。そこにアディアはバカにした口調で魔王を蔑む。
「ハハハ! 赤ん坊の歩行器って、今の魔王にはお似合いかもね」
「うるさい! あと余は赤ん坊ではなくて、お子様だ!!」
「……ハイハイ、そうだったわね」
そんな下らないやり取りのなか、リィンが困惑した顔で口を挟む。
「あ、あの……話を進めてもよろしいですか?」
「す、すまん、やってくれ」
「では……コホン!」
咳払いをして話を再開。
「と、とにかくです。魔法石で増大した魔力を弾丸の代わりとして使う……ここまではいいですね?」
「ふむ。その考えは理解するが、実際のところ形のない魔力を形のある弾丸として使用するのは可能なのか?」
「可能です。現に魔法とは魔力を具現化した結果じゃありませんか」
「ふむ……そう言われると、何だかやれそうな気もしてくるな」
「やれそうではなく、やるんですよ魔王様」
「て、手厳しいな。だがおかげで余の方は目処がついた。あとは……」
二人の視線がアディアへ向けられる。
「あとは私の武器になるわけね」
「そうなるな」
「ですね。でも、その話へ進む前に一旦上へ戻りませんか?」
「同感。ちょうど喉が渇いてきたところだしね」
「でしたら取って置きの茶葉がありますから、御馳走しますよ」
「へぇ、それは楽しみ♪」
―――その後、三人は再びリビングヘ。テーブルを囲んだティータイムを優雅に楽しみつつ、アディアの武器について話を進めていく。
「じゃあアディアさんの希望は、あくまでも今の武器を修理して使い続けたいということですか?」
「まあね。扱い慣れてるのもあるけど、やっぱり愛着があるのが大きいから」
「……わかりました。信用できる店がありますので、紹介状を用意しますね」
「助かるわ」
「いえ。では、そのまましばらく待っていてください」
リィンはそう言って席を立つと、飲み終わった自分のカップを持って足早にリビングから出ていく。
一方、残ったアディアは大槌を感慨深く眺めていた。
「ふぅ……思えば、この子とのつき合いも相当に長くなったわね」
武器を慈しむ彼女に、魔王は興味あり気に訊ねる。
「なぁ、その武器にはそんなに愛着があるのか?」
「まあね。だってこれ、私が物心がつく前からずっと振り回していたものだから」
「物心がつく前か。それなら……って、物心がつく前からだと!? 貴様、そんな昔からこんな物騒なものを振り回していたのか!?」
「そうだけど……少しやんちゃだったかしら?」
「いや、やんちゃというか……危険過ぎだろ、それは!!」
アディアのとんでもない過去を垣間見る魔王。図らずも彼の脳裏には、子供時代の彼女が無邪気に大槌を振り回して周囲の者達へ多大な恐怖を与えまくる光景が浮かぶのであった。
ついに50話を超えました!
物語はまだまだ続く予定なので、これからもよろしくお願いいたします!




