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38話 老婆の正体

「い、生きていらっしゃったのですね魔王()!!」

「え? 魔王様って!?」


 床に跪いて敬意を払う老婆。一方、ソファーでふんぞり返っている魔王は老婆の顔をしばらく見つめると、何かに気づいたように口を開く。


「この研ぎ澄まされた魔力の感覚……リィンか!?」

「ハイ! ご無沙汰してます魔王様!!」


 嬉しそうに返答した途端、彼女の姿は老婆からメイド服と肩まで伸びた銀髪……そして、頭に羊みたいな角を生やした若くて(二十代前半くらい?)美人の女性へと変化する!


「おお! その顔にその角は……間違いなくリィンなのだな!!」

「ハイ!」


 久しぶりと思える再会に喜ぶ両者。ただ、アディアには彼女についての情報がまるでないので魔王へ訊ねる。


「ねぇ、魔王? こちらの女性はどういった方なのかしら?」

「う、うむ……コイツはその……リィンだな」

「うん。だから、どんな関係の人なの?」

「あ、ああ……それは……」


 何故か口ごもる魔王。彼に代わり、リィンが自ら口を開く。


「我は魔王様の教育係を務めていた者です」

「教育……係? えっと、それは勉強とかを教えるって意味よね?」

「その解釈でけっこうです。他にも武芸や魔法は当然のことながら、魔王としての礼節や心構え、一族を繁栄させるために必要な秘術を実戦形式で手取り足取り身体を張って教え……」

「ま、待て! それ以上は迂闊に喋るなリィン!!」


 彼女の説明を不自然に止める魔王。どうやら教育の内容については、あまり(おおやけ)にされてたくない事情があるらしい。


「……と、とにかく、まずは話を聞かせてくれ」

「何なりと」

「魔族の貴様が何故こんな村にいるんだ? 何か目的があるのか?」

「ハイ。我がこの村に滞在してるのは、ここが王都から近く、情報収集に便利だからです」

「情報収集? ということは、この村はその拠点として使われているのか」

「そうなります」


 魔族が情報収集のために村を利用……その事実を聞いたアディアは思わず口挟む。


「ちょっといいかしら? 話の腰を折って悪いんだけど、リィン……魔族のアナタが、わざわざ人間の村でそんなことをしてるの?」

「と言いますと?」


 アディアの疑問にリィンは首を傾げる。


「王都に近いのはわかる。でも多少は辺鄙といえ、ここは周りに多数の人間が存在している……つまりは、()()()()()をやるには色々と不都合な環境なはずよ!」


 どうやらアディアは、魔族が人間の村で情報収集をするには無理があると指摘したいらしいが……


「仰っている意味は理解できます。ですが、ここではそういった懸念は一切ありません」

「何故そう断言できるの?」

「ここの村人全員が魔族だからですよ」

「え! 全員が魔族!?」


 リィンはそんな心配は不要と告げ、さらなる事実を明かして彼女を驚かせる!


「な、なら! 私が見た人達は……まさか!」

「お察しの通りです。()()は彼等が変化の魔法で欺いてる姿に過ぎません」

「欺く!? 何のために!?」

「人間にここが魔族の村だと知られたくないからですよ。それと我はこの村の長となる身。もしアナタが災いをもたらす者だというなら……」

「私を“消す”って言いたいわけね!」


 アディアは“まずい!”と思い咄嗟に身構えるが!


「フフフ……安心して下さい。魔王様の手前、余程おかしな真似をされない限りは、こちら側から手を出すつもりはありませので」

「そ、そう……それなら一応は信用するわ」


 取り敢えずは、今すぐにどうこうされる心配はないということで安堵。そして、会話の主体は再び魔王とリィンの二人へ移る。

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