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37話 老婆

 たまたま立ち寄った村で、偶然出会った老婆から宿の世話になるアディアと魔王……もといマオは、彼女の家へ向かうために村の中を歩いていた。


「こんにちは村長さん!」

「おや村長。お客さんとは珍しいですな!」

「明日の会合はよろしくお願いしますね。村長さん!」


 道行く人々から次々に声をかけられる老婆。どうやら村長の彼女は、村人から慕われてるようだった。


「―――ようこそ、ここが我が家です」


 到着した場所にあったのは、見た目は古いがしっかりとした造りを感じさせる庭付きの屋敷。見た感じだけでは、十分に人を泊めさせる広さと余裕があるのを窺えさせる。


「さぁ、どうぞ中へ」


 笑顔の老婆が自ら玄関のドアを開き、中に入るよう促す。


「お、おじゃまします」

「……世話になる」


 招かれたアディアとマオ。彼等がまず最初に案内されたのは、広い空間からなるリビング。センスを感じさせるモダン風の壁、中央のスペースにあるテーブルの手前と奥の両側には二人掛けできる上等のソファーが置かれていた。


「さぁさぁ、遠慮せずにゆっくりくつろいでくださいな」

「ハイ、それじゃ御言葉に甘えて失礼……」


 言われてアディアがソファー座ろうとしたその時だ!


「先に座るぞ」

「あっ、コラ!」


 先んじるマオが勝手に腰を下ろし、我が物顔でふんぞり返ってみせる。


「ほぉ、なかなかの座り心地だな」

「まお……じゃなくて、マオ! ちゃんと挨拶してから座りなさい!」

「はぁ? 余はくつろげと言われたから、そうしたまでだぞ?」

「なっ!」


 理屈を捏ねた無礼な態度に憤るアディアは、制裁の拳骨(げんこつ)を容赦なく落とす!


「痛っ! いきなり何をするんだ!?」

「“何をする”ですって? 最低限の礼儀もなってないバカに罰を与えたんじゃない!」

「ば、罰だと!? そんな偉そうなこと……痛っ!」

「お黙り! 仮にも母親(役)の私に向かって『偉そう』なんて口の利き方は許さないわ!」

「ぐぬぬ……」


 頭を押さえて恨めしそうな目で睨むマオ。ただ念のために断っておくが、彼女は彼の母親でなければ、親戚関係ですらない。

 しかしそれを知らない老婆は、そんな彼等を本当の親子と認識してやさしくフォローを入れる。


「まぁまぁ、いいじゃないですかアディアさん。男の子はこれくらいやんちゃな方がいいものですよ」

「で、ですが……」

「ウフフ、いいんですよ。マオくんも本当はわかってるはずですから。ね、マオくん?」

「さあな?」

「コラ! また叩かれたいの!?」

「まぁまぁ……」


 仮の息子を戒めようとするアディアを、老婆は笑顔で宥める。


「それでは私は、晩ゴハンの支度をしてきますので……あっ、そうだ! マオくんは何か嫌いなものがあるかしら?」

「嫌いなもの? そうだな、強いて言えば人類の平和と安定が……ふがっ!」


 不吉なセリフを言わせまいと、アディアは慌てて口を塞ぐ!


「マ、マオには好き嫌いありません! 何でも喜んでいただきますのよ! オホホホーーー!」

「そ、そう? それなら安心ね」


 どうにか事なき終えて一安心……したのも束の間!


「あら? マオくんのその頭は?」

「え?」


 何とあろうことか、今の騒動でマオの頭に深くかぶっていたローブのフードが、いつの間にかにはだけて角が露になっていた!


「ま、魔王! 頭、頭!!」

「あっ!」


 焦ってフードをかぶり直すも、既に後の祭り。


「……その角は、まさか!?」


 一方、老婆は驚愕の表情を浮かべて震えてるので!?


「ま、待ってください! 彼は……その……あの……」


 懸命に言い訳しようとするが、言葉を上手くまとめられずに苦戦……としてた時、ここで老婆が予想外の行動を示した!


「え? えっ!?」


 アディアは困惑する。老婆が床に跪き、マオに対して(こうべ)を垂らして明らな敬意を示していたのだから。そしてさらには……


「い、生きていらっしゃったのですね魔王様!!」

「え!? 魔王()って!?」


 発せられた言葉には、彼女と魔王の間に何かしらの関係性があることを示唆させていた!!

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