36話 田舎臭い村
燃え尽きる家から逃げ出してからの夕方。アディアと魔王は、数時間かけて移動した末にとある場所にたどり着いていた……
「古めかしい建物に所々が舗装されてない粗末な地面。それに、まばらに歩き回るどこかセンスを感じさせない古めかしい格好の者達……もしかして、ここが貴様が言っていた王都なのか? だとしたら、余の想像とは違ってずいぶんと田舎臭い感じがするんだが?」
そんな失礼な感想を述べているところへ、アディアからの説明が入る。
「ここはただの田舎臭い村よ。しかも、かなり辺鄙な部類のね」
「そうなのか? じゃあ、わざわざ立ち寄った理由は何だ?」
「宿をとって休息するためよ。もう時間が時間だしね」
「そうか。ならば、さっそくどこか……」
「でも、一つ問題があるわ」
「何だ?」
「お金がぜんぜん足りない……っていうか、一銭もないわ」
「ち、致命的な問題じゃないか」
不安になる魔王は、あからさまに表情を曇らせる。
「で、では、余達はどこで寝泊まりをすればいいんだ?」
「さぁ? このままだと、どこかの家の軒下が確実ね」
「……しょ、食事は?」
「雑草なら普通に生えてるでしょ?」
「冗談……だよな?」
あまりにも悲惨な現状を聞かされた魔王の表情は、曇るどころか土砂降りに……そんな不安のピークに達した時だった。
「もし、旅の御方?」
突然、見知らぬ老婆から声をかけられたのは。
「そ、そうですが、アナタは?」
アディアは戸惑いながらも、取り敢えずは無難に対応。
「ああ申し遅れました。私はこの村で村長を務める者でございます」
老婆が笑顔で自己紹介をすると、アディアもお返しに自己紹介する。
「私はアディア。この村に王都に向かう途中でたまたま立ち寄っただけなんです」
「王都へ……なるほど、そうでしたか」
老婆は頷くが、ここであることに気づく。
「おや? こちらのお子さんは?」
「む、余は……っ!」
魔王は一瞬何か言い返そうとするが、直感的に自分の正体を悟られまいとしてフードを深くかぶって視線を逸らす。
「あらあら、どうやら恥ずかしがり屋さんみたいね」
「え、あっ! ハイ、そうなんですよ! ハハハ……」
咄嗟に誤魔化すアディア。どうやらここは、親子の設定でいくのが無難と判断したらしい。
「ところでアディアさん。今夜はどこにお泊まりで?」
「あ、いえ、それがまだ決まってなくて……」
質問にぎこちなく答えているところ見て、何かを察する老婆はやさしい笑顔を浮かべて言う。
「……あの、ここで出会ったのも何かの縁。よかったらウチに泊まりませんか?」
「え!」
正直、これはアディアにとっては願ってもない提案だ。
「いいんですか! 正直、あまり持ち合わせがなかったので助かります!!」
実際は“あまり”どころか文無しだったのだが……とにかく彼女は迷わずこの幸運に飛びついた!
「ほら! まお……マオもちゃんと礼を言いなさい!」
「ん? マオって誰だ?」
いきなり知らない名前で呼ばれて困惑する魔王に、アディア若干焦りながらに続ける。
「な、何を言ってるの! マオはアナタの名前でしょ!ね?」
「いや、だから余は……」
「ね!!」
「お、おお……」
執拗な説得というか圧力? とにかく魔王は、自分が“マオ”であると認識。よって……
「マ、マオです。よ……よろしく、お願い……します……」
かなりぎこちなく挨拶をするが、かえってこの行動は老婆の目には他人と話すのが少し苦手な引っ込み思案の子供に映ったようで……
「ハイ、こちらこそよろしくね。マオくん」
最終的には親子(?)共に快く受け入れられ、無事に今日の寝床を確保できる運びへとなれたのであった。
新たなる舞台となる田舎臭い村。ここでは一体どんな展開が待ち受けるのか?
乞うご期待!!




