表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/280

111話 『竜』と交渉

 準備を整え、ハイエースで夜中に飛ばすと、夜明け前には帝都にたどりついた。

 ハイエースを隠すのに適した場所ももらった地図でいくつか見当をつけていたので、スムーズに隠せた。


 そしてハイエースから鬼を2匹ほど召喚する。

 頭からローブをかぶせたが大きさがまるで間にあってないので、ハイエースを隠す用の予備の布を体を覆うくらいの大きさに裁断して使うことにした。


「足、おもいっきり見えてる」


「仕方ない。幸い、人はいないようだし大丈夫だろう」


 俺もそう思うのでアイに従い、その状態で鬼たちを連れ歩くことにした。


 帝都と言われるだけあって、今までみた最も大きなサミュエル自治領の町よりもはるかに規模がでかい。

 その町が廃墟のように閑散としているのは、異様ではあった。

 モブのいない、絵やCGで作られた町みたいだ。


「人っ子ひとりいないな」


「いえ、見られているっす」


 クオンが平然と言う。

 俺とアイはきょろきょろと見回すが、特に人は見当たらない。

 素人にはわからないという風な感じで、クオンもウルシャも苦笑している。


「サミュエル卿の間者だろうな」


 カウフタンが吐き捨てるように言う。

 ちらりと見た先は、町中というより斜め上の方。

 何ブロックか先にある塔の方を見た。


「あとは……いますよね、ケアニス様」


「さすがウルシャさん。ええ、いますよ。天界の者たちの気配もちらほらしています」


「お? ひょっとして天界にも俺たちの行動は筒抜け?」


 どこからバレた?


「私がいますから。天使の真力は、天界の者なら探せる者は探せます。現に私も彼らがいるのがわかりますから」


「ケアニス。キルケは来ているか?」


「気配は感じられませんが、来ている可能性は高いですね」


 ケアニスは、キルケくらいの天使になると、真力の隠蔽も可能だという。

 さらには、俺をさらった時のように真力で武装をしていない可能性もあるそうだ。

 その状態の天使を探すのは、ケアニスにはできないらしい。


「お恥ずかしい話ですが、私、感知系は苦手な方でして……」


 主に荒事担当いう感じは確かにある。


「それに『竜』がいますからね。下手な動きはしないでしょう」


「『竜』にちょっかいを出して、我々の交渉の邪魔をする可能性はないでしょうか?」


「警戒しますね、カウフタンさん。ですがありえません。仮にちょっかいを出しても、彼らに『竜』への対抗策がないですから」


 キルケたちの真力で武装した力は見た。

 カウフマンが使った炎の剣の比ではないほどの力だった。

 それをもってしても、対抗策にならないと。


「今は、行くしかないでしょう。見張られていることは承知の上ですし」


「だな。んじゃ行くか」


 俺たちはだだっ広い街道を進む。

 目指す先は、大きな宮殿。

 まさに皇帝が住まう場所であり、各地の貴族や王たちが集う場所だ。


 まるで1つの町くらいすっぽりと入りそうなくらいの広さがある。

 そしてそこにも人の気配はない。


 宮殿内は、何の展示もされていない博物館という感じだ。

 意外とほこりがないのは、人がいないからか汚れようがないというやつか。


「……綺麗な場所だな。時間でもあればじっくり見て回りたい」


「のんきっすね、戦士殿」


「まあ、俺が緊張してもしょうがないから。警戒してくれているクオンたちがいるし」


「油断は禁物だぞ、イセ」


「わかった」


 確かに、気が緩んでいたかもしれないから引き締めよう。


「そろそろ庭園だ」


 アイが緊張気味に言う。

 その庭園に、『竜』がいる。


 『竜』の巨体を留めるには、庭園が一番ということらしい。

 雨風は防げないがどうするのかと思ったら、『竜』だからそんなものではびくともしないから別にどうでもいいらしい。


 そんなことを考えながら進み、庭園が見えてくる。

 見えてきた段階でわかる。

 庭園の丁度真ん中らへんに、丸くなって寝ているように見える『竜』の姿があった。


「……これが『竜』」


 カウフタンがつぶやく。

 それに合わせて、緊張が走る俺と、ウルシャと、クオン。

 というより、足がすくむほどビビっている感がある。

 それほど、『竜』から漂う生き物としての気配は異様だ。

 異様なほど、巨大だ。


 そんな中でも、アイとケアニスは、意外と普通に歩みよっていく。


「アイ様は、『竜』を見たことがあるのですか?」


 ウルシャがそんなことを聞くと、こくりとうなずいた。


「『神器』の集まりの時に。『竜』も一応居たから」


「みなさんが緊張するのもわかりますよ。私も……正直、逃げ出したいくらいです」


 この中で最も戦力になるケアニスをして、そこまで言わせるほどの存在。

 それが目の前の『竜』だ。


 こんなのが敵意を向けてきたら、そりゃ終わりだろう。


 そして近づき、少し張れば相手に声が届くくらいの距離に近付いた時、『竜』の首がむくりと起き上がり、視線をこっちに向けてきた。


「っ!?」


 ただそれだけで、俺たちは歩みを止めた。

 これは敵意じゃない。

 ただ見ただけだ。

 なのに、全身から汗が吹き出してくるような焦りが走る。


 こんなのと、交渉なんてできるの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ