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前世「降霊術師」の村娘B、婚約破棄されたけど今世こそ素敵な人と結婚したい!  作者: 三多来定


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69.リリアンとの再会

 私は連日の様に、私の中のジュリー様から貴族の交友関係とパーティーの招待客を叩き込まれ、クロックさんが雇ってくれたダンスの先生からへなちょこ踊りを叱られ、空いた時間はニール様の執務のお手伝いをする(これは私が希望した)という忙しい日々を送っていた。


 ニール様と一緒にいる時間は確かに存在しているのに、再会して一度もニール様とキスしていないという日にちが積み上がっていった。


 ニール様は、確かに私を想ってくれている。

 肩や手に触れるスキンシップはある。

 でもキスはない。

 まだ婚約中だからだろうか。

 でも、前は関係なくキスしてきたよね?

 もしかして、私のことが少し癇に障るようになってきた?


 やばい。ちょっと冗談のように言っていた「白い結婚」がだんだんと現実味を帯びてきている気がする。





 コイラーン侯爵家に戻ってきて1ヶ月以上が経ち、私はリリアンにやっと会えることになった。


 リリアンはスターツリー商会長と旦那様である息子と一緒にコイラーン屋敷にやってきた。

 そして、久しぶりに会ったリリアンのお腹は少しふっくらとしていた。


「コ、ココ、金髪!? あ、いえ、ココ・シスネロス公爵令嬢様、お久しぶりでございます」

 リリアンはサッと跪く。


「リ、リリアン、お腹、赤ちゃん!? あ、えーと、お久しぶりです。どうぞ楽にしてくださいませ」

 私はリリアンに手を差し伸べる。


 私とリリアンの様子を見た侯爵様とニール様とスターツリー商会長親子はニコニコと笑っている。


「ココ、私たちは仕事の話がありますので、お二人で庭園を散歩してきてはどうですか?」

 ニール様が優しくほほ笑む。


「はい。ありがとうございます」

 私は軽く会釈をすると、リリアンと侍女の母と共に庭園に向かった。


 実は私がグローカル公爵家の庭園に感動していたのをニール様が覚えていて、庭師を増やして造園をしてくれたのだ。

 そして白いガゼボも建ててくださったのである!


「ええ? 庭園が変わってる!? あの建物何?」

 リリアンはキョロキョロとしている。


「ニール様がね、お茶が出来るようにガゼボを建ててくださったの。庭園も私の好きな花を植えてくれて……」

 

 嬉しそうに話す私に、リリアンはニヤニヤとする。


「ちょっとぉ、あんなに優しそうな侯爵子息様、初めて見たわ」


「リ、リリアンこそ、赤ちゃん出来てるし、旦那様はお優しそうじゃない?」


 ガゼボに着いた私とリリアンは、お互い照れ合いながら白いテーブルセットに着席する。


「だ、旦那様は優しいわ。なんか、驚くくらい大切にしてくれて……」

 リリアンは顔を赤らめる。


 私はウンウンと頷く。

 リリアンが幸せそうで良かった。

 そしてクロックさんはおじいちゃんかぁ……。


 母と母の選んだ女性使用人たちがお茶とお菓子を運んでくる。


「あれ? 女性の使用人が増えてる!」

 リリアンは驚いて女性使用人たちを見回す。


「そうなの。この人が私の侍女をしてくれているマーチさん。カルラさん、ノアさん、サーラさんの3人はメイドなの」

 私は女性たちをリリアンに紹介する。


 リリアンは言わば使用人の先輩である。

 とは言っても、カルラさんとノアさんは45歳、サーラさんは50歳。

 全員既婚者で子育てが終わった方々なので、人生では先輩である。


「全員ベテランさんなのね」


 リリアンの感心した言葉に、私は「そ、そうなの」と頷いた。


 実際は、彼女たちにメイド歴はない。

 でも主婦の方々の生活力は素晴らしく、掃除も洗濯もテキパキとこなすのだ。

 そしてなんと言っても、立場をわきまえている。

 先日会ったご令嬢のようにキャンキャン騒いだり泣いたりしない。

 いや、それは当たり前なのかもしれないけど、仕事と家庭をキッチリ分けている方たちなのだ。


 もちろん、母がそのような人選と教育を行(おこな)ったからだろうけど……。

 やっぱり母は女版クロックさんである。


 母はホールのフルーツタルトの大きなお皿をテーブルに置くと、綺麗な所作で切り分けだした。


 リリアンが「うわぁっ!」と感嘆の声を上げる。


 完全にグローカル公爵家の真似っこだけど、リリアンが喜んでくれるのなら何でも良い。


 と、その時だった。

 母が手をテーブルにつき、「うっ」とうなりしゃがみ込んだのだ。

 顔色は真っ青である。


「お、お母さん!?」

 私は席を立ち母の背中をさする。


「え? お母さん!?」

 リリアンが私と母を見比べながら席を立つ。


「だ、大丈夫です……」

「大丈夫じゃないよ! やっぱり毎日無理してたんじゃん! 至急お医者様を!」


 私の指示で、カルラさんとノアさんが屋敷に駆けていく。

 私とサーラさんで、母を私が座っていた椅子に座らせる。

 母はウッと口元を手で押さえる。


「大丈夫!? ええと、お茶を……」

「待って、ココ! この方、つわりじゃないかしら? 私もそうだったの。ほら、このタルトのバターの匂いとか、結構ウッとなるっていうか……」


 焦りまくる私を制して、リリアンがテーブルからタルトのお皿を持ち上げワゴンに乗せて、ガゼボの外にガラガラと押して出した。


 母は、ハァーと息を吐く。

 リリアンの言うとおり、少し楽になったようだ。

 私はホッとしたものの、首をひねった。


「ん? つわり? え?」


 それって、お腹に赤ちゃんがいるってことだよね?

 お母さんが妊娠している?

 

 ど、どういうことーっ!?

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