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前世「降霊術師」の村娘B、婚約破棄されたけど今世こそ素敵な人と結婚したい!  作者: 三多来定


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61.プロポーズ

 シスネロス公爵家のニール様用の客室で、私は神様見習いから聞いた話をニール様に伝えていた。


 私がいるから災厄が起きること。

 恋愛と結婚をするために、しつこく15回も転生していること。

 そんな迷惑者の前世の私を災厄前に神様が殺したこと。

 今回の災厄も私のせいで、でもシスネロスのみんなには内緒にして力を受け渡そうとしていること。


 話せば話すほど、あまりにも自分勝手で情けなくなる。

 ニール様は受け止めようとしてくれているけど、やっぱりこんなヤツ嫌だと言われても仕方がない。


 私の話が終わると、ニール様はふぅと息を吐いた。

 それが溜息のように聞こえて、私はうつむいて目をぎゅっとつむる。


「ココ、まずは話していただきありがとうございます。そしてこれは、ココのせいではありません」


 ニール様のハッキリした言葉に、私は顔を上げた。

 ニール様の瞳は私ではなく真っ直ぐ前を見据えている。


「ココは転生する度に前世の記憶が消えていました。大きな力を持っていても、災厄を無視して恋愛と結婚に走っても良かったのに、あなたはそうしませんでした。ココの魂は、誰よりも頑張った魂なのです」


「が、頑張った魂……?」


 迷惑な魂じゃなくて?


 ニール様は視線を私に移して、ほほ笑んだ。

 細くなった緑の瞳が優しく私を見つめる。


「はい。ココが強い力を持っているのが何よりの証拠です。人間は何も努力をしないで力を授かったりはしません」


 た、確かに?

 家でゴロゴロしていて、能力を授かったりはしないかもしれない。


「私はそんな努力をたくさんしたココを誇りに思います」


 ニール様はそう言うと、ズボンのポケットから小さな白い木箱を取り出した。

 私はその小さな木箱をじっと見つめる。


「ココ。私と結婚してください」

「……え?」


 ニール様の長い指がそっと木箱のふたを開けると、そこにはキラキラと光を反射する緑の石がはめ込まれた金色の指輪が入っていた。


 これは、もしかして、プロポーズ、というものだろうか……?

 15回の人生で、初めてのプロポーズ……?


「私で、いいのですか……?」

「はい。ココがいいのです」


 私は震える手で小さな箱を受け取った。

 指輪を左手薬指にはめたいけど、手の震えがおさまらず、上手くいかない。

 ニール様は私の手から指輪をそっと受け取ると、私の左手薬指にスッとはめた。


 私の左手薬指で輝く緑の石はニール様の瞳のようで、金のリングは私の髪と瞳のようで、こうやって一緒にいてもいいんだよ、と指輪が言ってくれているようだった。


「あり、あり、ありがとう、ございます……」

 

 私は何とかお礼を言った。

 再び涙が頬を伝っていた。


「こちらこそ、受けていただきありがとうございます」


 ニール様の表情は涙でよく見えなかったが、ニール様の声はとても優しかった。






 私はニール様に力を渡すため、幽体離脱をしてニール様の中に入っていた。


 ニール様の中に入るなんて恥ずかしすぎて出来ない! と本当に思っていたのだが、全てを話してプロポーズを受けた今、その思いがかなり薄まっていた。


 私はどこか、ニール様を夢の中の王子様のような立ち位置にしていたのかもしれない。

 もしくは、イケメンアイドルを推すファンのような気持ちだったのかもしれない。


 ニール様の性格の悪さや弱さを知っても、私にとってニール様は雲の上の人で、ニール様の内面を知れたことに嬉しさを感じていたのだ。


 でもニール様は私と同じ人間だった。

 私と同じ目線で、私のことを誇りに思うとプロポーズをしてくれた。


 私もそんなニール様を同じ目線で誇りに思いたい。

 隣に立って、ちゃんとニール様を支えたい。

 


「なるほど。かなり力が入ったのが分かります」

 ニール様は自身の手を握ったり開いたりしている。


 私はニール様から出て、幽体のまま少し驚いていた。

 成人男性だからなのかもしれないが、1回であきらかにイライザ様より力を渡せてしまったのだ。


「イライザ様になんて言おう……」

 

 幽体の私がボソッと呟くと、ニール様が幽体の私を真っ直ぐ見て、驚いた表情をした。


「幽体のココの声が聞こえます!」


『ええっ!?』

 幽体の私と、私(ジュリー様)の声が重なった。

 

「あの、それでしたら、ココさんとニールと3人でお話が出来るということでしょうか!?」

 私(ジュリー様)が身を乗り出して言う。


「ああ、そうですね。そういえば3人で話すのは初めてですね」

 ニール様は思い出すように言う。


「わ、私、3人でお話がしたかったんですよ!」

 幽体の私は浮くのをやめて、ニール様のベッドに座った。


「ココは3人で何を話すつもりだったのですか?」

 ニール様がニヤリと笑う。


「え? えーと、ジュリー様も侯爵様もすごく優しいじゃないですか。なのにどうしてニール様は性格悪いのかなぁってずっと思っていて……」


「ココさん、初めて話す内容としてそれはどうなのでしょうか!?」

 私(ジュリー様)が即座に異を唱える。


「あ、や、違います! そう、ニール様の小さい頃のお話を伺いたいんです!」

 

 幽体の私は、焦って首を横に振った。

 ニール様はうつむいて肩を震わせている。


「幼少期のニールですか? ええと、本が好きで勉強家でしたね。物静かでしたが大人に冷静に意見をしていて議論で勝つことも……あら? 何だか性格が悪いですわね?」

 私(ジュリー様)は、ハッとした表情になる。


 ニール様はアハハと声を出して笑い出した。


「ココもお母様も酷い評価ですね!」

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